第69話「魂の奥底からの問いかけ」
【第一幕:魂の準備】
ここ数日、楽は自分が少し変わっていることに気づいていた。
気分が優れないわけでも、体調が悪いわけでもない。ただ、手元の作業をしている間も、心がどこか別の場所に漂っているような感覚があった。
加美がリンゴの箱を運ぶのを手伝ってほしいと呼ぶと、彼は「いいよ」と答え、手際よく運び終えたが、その目は葉っぱの隙間から漏れる陽の光を追い続けていた。まるでそこに何か、自分を呼ぶものがあるかのように。
琪琪が歩み寄り、彼の袖をそっと引いた。「楽くん、充電したいな。」彼女は首を少し傾げ、目にほんの少しの期待を込めていた。
楽は一瞬呆けた後、笑顔になり、両腕を広げて彼女を受け入れた。琪琪は彼の肩に顔をうずめ、目を閉じて、あのいつもの温もりを静かに感じていた。しばらくして彼女が顔を上げると、その表情には光が戻っていた。「ありがとう、楽くん。最近、何か心配事でもあるの?さっき電球交換してくれたとき、ネジを違う方向に回しかけてたよ。」
楽は手に持ったドライバーを見下ろし、申し訳なさそうに笑った。「ああ、ごめん、チーチー。ちょっと上の空だった。」
「まさか、病気じゃないよね?」加美が歩み寄り、手を伸ばして彼の額に触れた。コーヒー色の長い髪が太陽の光を受けて柔らかな艶を放つ。「熱は普通みたいだけど。」
「大丈夫、本当に何でもないんだ。」楽は手を振り、黒い短い髪をそよ風に揺らしながら答えた。しかし心の中では、自分が上の空なのではなく、待っているのだと分かっていた。何か、長い間溜め込んできたものが、今まさに土を破って出てくるのを待っているのだと。
彼はぼんやりと感じていた。この「体はここにあっても、心は別の場所にある」という状態は、単なる気の散りではなく、もっと深い何かが醸成されているのだと。まるで自分の中のもう一人の自分――より高次の、より古い自分――が、彼のために一つの質問を準備しているかのように。彼がとても長い間待ち望み、ついに口にしてもいいと思えるようになった質問を。
この感覚は三日間続いた。
まるで彼の魂がカウントダウンをし、時が熟すのを待っているかのようだった。
そして三日目の午後、彼がカウンターを拭いていると、天神がいつものように椅子に丸まってアニメを観ていた。口にはポッキーをくわえている。金色の髪が柔らかく額に垂れ、午後の日差しの中で蜂蜜のように流れていた。
楽がその無防備な天神の姿を見ていると、あの質問が突然、口元まで駆け上がってきて、抑えきれずに飛び出した。
「社長、あなたは何でも知っているんですよね……じゃあ、私たちのことをひどいと思ったりしませんか?心の中で密かに裁いたりしているんじゃないんですか?」
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【第二幕:一番知りたい答え】
天神はポッキーを噛み切り、振り返った。金色の瞳に予想されたような厳かさはなく、アニメを観終えたばかりの少しの慵さと笑みがあった。
「裁く?そんな暇ないよ。」彼は肩をすくめた。「僕は人を裁いたりしない。君を裁くのは、いつだって君自身だけさ。」
楽は一瞬言葉を失い、眉間の皺をさらに深くした。「でも……もしあなたが全知全能なら、どうして悪いことが起きるのを止めないんですか?どうして僕たちに過ちを犯させるんですか?僕たちは四六時中、ビクビクしながら、あなたに罰せられないように生きなきゃいけないんですか?」
天神はのびを一つした。まるで何かとても可愛らしい質問を聞いたかのように。
「楽、もし君たちに過ちを犯してほしくなかったら、創造した時に、間違えないロボットにしておけばよかったんだよ。」
彼は、台所で感謝の心を込めてチョコレートの甘さ加減を調整している加美を指さした。コーヒー色の長い髪は気軽に後ろで束ねられている。そして、庭で蝶を追いかけている琪琪をも指さした。紫色のツインテールが跳ねるたびに軽やかに揺れている。
「でも、そんなのつまらないだろ?選択がなければ、愛に意味はないんだ。ロボットが『愛してる』って言っても、それはただのプログラムだ。でも、人間は憎むことを選べるのに、それでも愛を選ぶ――それが奇跡ってもんだろ?」
楽は黙り込んだ。彼はうつむき、自分の両手を見つめた。黒い瞳には窓の外の光が映り込み、その声は独り言のようにか細かった。「じゃあ……神様は一体どこにいるんですか?どうしたらあなたを見つけられるんですか?お寺や教会に行かなきゃいけないんですか?すごく神聖な言葉で祈らないといけないんですか?」
天神は笑った。隣の優しいお兄ちゃんのように、少し茶目っ気さえ込めて。
「神様はそんな遠くにいないよ。神様は、君が一心不乱に何かをしている、その一瞬一瞬の中にいるんだ。」
彼は一拍置き、その口調はさらにくだけたものに変わり、最高の友達と話すかのようだった。
「それからな、これから僕と話したい時は、そんなに堅苦しくならなくていいんだぜ。僕のこと、親友だと思ってくれていいから。」
「どんな言葉を使ってもいいし、どんな口調で話しかけてもいい。たとえ悪口だったり、愚痴だったり、罵ったりしても、僕には分かるんだ。だって、そういう言葉だって、僕が創り出したものだからな。」
天神はウインクした。金色のまつげが太陽の光を受けて輝く。
「まさか、君がちょっと悪口を言ったくらいで、何言ってるか分からなくなると思ってるのか?心を込めて話しかけてくれさえすれば、僕には必ず分かる。AI翻訳なんていらない。儀式もいらない。ただ口を開いてくれれば、僕はそこにいる。」
「だって、僕は君たちを愛しているから。」
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【第三幕:魂の目覚め】
楽は聞いているうちに、心の中で張り詰めていた何かが、ふと解けるのを感じた。
彼はずっと、完璧でいなければ、十分に良くならなければ、神の愛に値しないと思ってきた。自分は十分じゃないとずっと責め、過ちを犯すことを恐れてきた。
でも、本当は、神は彼が完璧かどうかなんて気にしていなかった。神が気にしているのは、ただ彼が真実に生きているかどうかだけだった。
「そうか……そんなに頑張らなくても、よかったんだ……」楽はそっと呟き、涙が思わず溢れ出た。
彼はもう急いで涙を拭おうとはしなかった。ただ、流れるままに任せた。
彼はこの数日間の「心が別の場所にある」感覚を思い返し始めた。それは逃避なんかじゃなかった。彼の魂が彼に気づかせようとしていたのだ。「君は、自分が誰かを忘れている」 と。
前代未聞の勇気が、心の奥底から湧き上がってきた。
彼はもう、過ちを恐れる孤児ではなかった。もう、小さなことに怯える従業員ではなかった。
しかし、そう思った途端、彼はその場に立ち尽くした。
涙はまだ流れ続けている。でも、その目には、まだ一片の迷いがあった。まるで何かが、心の一番深い場所に引っかかっていて、本当には通じていないかのように。
天神は静かに彼を見つめていた。金色の瞳は、深海のように優しく、しかし透徹していた。
彼はそっと口を開いた。その声は穏やかだが、魂を貫く力を持っていた。
「楽、君は自分が誰か、覚えているか?」
「もう、思い出せたか?」
楽は呆けた。涙で視界が歪む中、彼は首を振った。黒い短い髪の一部が涙で濡れて張り付いている。その声は詰まりながらだった。
「俺は……分かっているような、分かっていないような……」
「俺は光だってことは分かる。愛だってことは分かる。あなたの一部だってことは分かる……でも、でも、なんだかまだ……まだ一枚、壁があるような気がするんです……」
天神はそっと微笑んだ。その笑みに咎めはなく、ただ無限の忍耐があった。
彼は手を伸ばし、そっと楽の胸に手を当てた。金色の髪が微風に揺れる。
「それは、君がまだ『知っている』だけだからだ。まだ本当に『感じて』はいないんだ。」
「もっと深い真実を教えよう。」
「君たち一人一人は、みな、私の魂の欠片なんだ。」
『まるで』とか『例えるなら』じゃない。本当にだ――まったく同じ、魂の欠片なんだ。」
「私たちは、決して離れ離れになったことはない。」
「一秒たりとも。」
「始まりから、今も、永遠に。」
「君が思い込んでいる分離は、ただの幻だ。」
「君が感じている孤独は、ただの夢だ。」
「君が探し求めているものは、ただの、一度も君から離れたことのない私を見つけようとしているだけなんだ。」
その声はさらに柔らかく、しかし温かく、凍った湖面を撫でる春の風のようだった。
「だって、私は君たちを愛しているから。」
「君たちに価値があるからじゃない。君たちが十分に優れているからじゃない。」
「ただ――私が君たちを愛しているからだ。」
「私自身を愛するように。」
楽は、完全に言葉を失った。
その瞬間、時間が止まったかのようだった。
その瞬間、ありとあらゆる言葉、ありとあらゆる理屈、ありとあらゆる「知っている」ことは、すべて、もっと深い何かによって貫かれた。
そうか……
そうか、俺たち一人一人が、みんな、あの方の一部なのか。
そうか、俺たちは決して離れ離れになったことなんてなかったんだ。
そうか、俺がずっと探していたあの方は、つまり、俺自身だったんだ。
そうか、俺がずっと感じていた孤独は、ただ――あの方がずっと、俺の中にいたことを忘れていただけだったんだ。
涙が、まるで切れた真珠のネックレスのように、完全に止めどなく溢れ出た。
それは悲しみではなかった。感動ですらなかった。感動よりもっと深く、もっと原初的な何かだった――
それは、魂がついに己の源を認めたときの震えだった。
それは、欠片がついに、自分が属する全体を思い出したときの解放だった。
「社……社長……」
楽の声は完全に崩壊していた。彼はもう抑えきれず、勢いよくカウンターを飛び越え、両腕を精一杯広げて、渾身の力で天神に抱きついた。
そして、彼が天神を抱きしめた、まさにその瞬間――
彼は感じた。腕の中の存在が、変わったのを。
外見が変わったわけではない――何かの映像を見たわけでも、何かの姿が変形したわけでもない。
しかし、その抱擁の奥深くから伝わる温もり、強く抱きしめられているという安心感が――
突然、もっと完全に、もっと包括的に変わったのだ。
それは、父の抱擁だけではなかった。
それは、母の抱擁でもあった。
彼は同時に感じていた。父の広い背中のような安心感と、母の柔らかな胸のような優しさを。兄の守るような強さと、姉の慈しむような愛情を。
それは、あらゆる愛の源であり、あらゆる温もりの総和だった。
それは、いかなる単一のイメージも、いかなる単一の性別も超越した存在だった――
それは、家だった。それは、源だった。それは、彼がずっと探し求めていた、しかし一度も離れたことのなかった、完全さだった。
楽の涙は、さらに激しく溢れた。
なぜなら、彼はついに理解したからだ。神は父であるだけでも、母であるだけでもない。神は、あらゆる愛の総和なのだ。神は、彼が感じたいと思えば、どんな姿にもなることができるのだ――ただ、彼が感じさえすれば。
そして、彼がこの、より深く、より完全な愛を感じた、まさにその瞬間――
その愛の波動は、まるで本物の波紋のように、彼の胸から広がり、平心湯全体を駆け抜け、台所でチョコレートを調合していた加美のもとへと届いた。
加美の手に持った攪拌用のスプーンが止まった。
彼女は目を閉じた。涙が音もなくこぼれ落ち、頬を伝い、口元へと滑り落ちた。しょっぱいのに、どこか甘い。
彼女は何が起きたのか分からなかった。でも、感じたのだ――
愛されている。
この宇宙全体から、愛されている。
しかも、その愛は、これまでに感じたどの愛よりも、深く、満ち足りて、完全だった。
「ダメだ……もう、取り繕えない……」
加美は突然、大声を上げた。普段の冷静さや抑制は、一瞬で崩れ去った。涙が溢れ出し、彼女は手にしていたスプーンを投げ出し、コーヒー色の長い髪を走る風に靡かせながら――
まさに台所を飛び出した瞬間、彼女は興奮のあまり、体中の魔力が抑えきれずに溢れ出した。
彼女は衝動的に、神力を使った。
瞬時に、平心湯全体が変わった。
天井が消え去り、代わりに果てしない夜空が広がり、無数の星々が優しく瞬き、天の川が一筋の光の帯となって頭上を横切った。
暖かな星の光が一人一人に降り注ぎ、空気には夜風の清香と、ほのかな甘い香りが満ちていた。
それは外の星空ではなかった。加美の心の中の星空だった――温かく、静かで、愛に満ちていた。
加美は力の限りカウンターに向かって走り出した――
だが、途中で立ち止まり、振り返って叫んだ。声には涙が混じっていたが、それは無類の喜びに満ちていた。
「チーチー!早く来て!」
そして、彼女はカウンターの方を見た。天神を目にした瞬間、彼女は完全に、愛されたいと願う子供に戻っていた。
彼女は両腕を広げ、子供のように、全身全霊で叫んだ。
「私も!!」
琪琪は庭にいた。紫色のツインテールが動きに合わせて軽やかに揺れている。突然頭上に星空が広がるのを見、加美の叫び声を聞いて、振り返った――
彼女は加美の涙を見た。加美の顔に浮かぶ「もう我慢できない」という表情を見た。
彼女は理由を尋ねる必要はなかった。
彼女にも、その波動が届いていたのだ。
「了解!加美姉!」
琪琪は手に持っていたものを投げ出し、涙が目の中でくるくると回り始め、紫色の髪を風に靡かせながら、カウンターに向かって全力で走り出した!
彼女はカウンターの前に駆け寄り、最初に目にしたのは天神ではなく、楽だった――あの黒髪の少年が、顔中を涙で濡らし、子供のように泣いていた。
「楽くん!」琪琪は彼の前に走り寄り、手を伸ばして彼の涙を拭ってやろうとしたが、自分の涙もまた止めどなく溢れ落ちた。「泣かないで……あなたが泣いてるのを見ると、私もすごく泣きたくなっちゃう……」
言い終わらないうちに、彼女はもう声を詰まらせて、言葉にならなかった。
その時、楽は――
彼は、まだ元の場所に立っていた。
彼は自分の姿を見下ろした。両手は体の横に垂れ、足は元の床の上にあった。
彼は一歩も動いていなかった。
彼は天神に、実際に触れてすらいなかった。
でも――
あの温もりは、あの抱きしめられている感覚は、あの宇宙全体から愛されているという安心感は、これほどまでにリアルで、これほどまでに満ち足りて、彼の全身全霊を満たしていた。
彼は抱きしめられていた。
見えない腕に、抱きしめられていた。
一度も離れたことのない愛に、抱きしめられていた。
彼は泣いた。
子供のように泣いた。
そして、まさにその時――
加美がカウンターの前に駆けつけ、琪琪もカウンターの前に駆けつけた。
楽は二人を見て、もう我慢できなかった。自分の脚が、ひとりでに動き出した――
三人は、狂った子供のように、同時にカウンター目がけて突進した!
「社長!僕たちも!帰りたい!」
彼らはドアなど使わず、直接一気に飛び越え、カウンターを跳び越えた!
ドンッ!
三人は同時に、天神の胸に飛び込んだ。
楽は左側、黒い髪は乱れて跳ね上がり、顔中涙の痕だらけ。加美は右側、コーヒー色の長い髪は肩の上に広がり、涙がまだ睫毛に光っている。琪琪は真ん中に潜り込み、紫色のツインテールは走ったせいで完全に解れ、ぼろぼろに泣いていた。
三人の涙と鼻水が、全部混ざり合い、天神の真っ白な服にべったりと付着し、大きく濡れた染みになっていた。
でも、誰も気にしなかった。
天神はなおさら気にしなかった。
彼はただ、三人をしっかりと抱きしめていた。母親が子供を抱くように、父親が宝物を抱くように。
その時、四人の体が、同時に柔らかな光を放ち始めた。
その光は胸のあたりから始まり、徐々に全身に広がっていった。
彼らの着ている服は、徐々に純粋な白へと変わっていった――
何の模様も、何の印もない、真っ白なTシャツ。しかし、まるで光を放っているかのように、柔らかく周囲の星空を照らしていた。
そして彼ら自身も――
楽は自分の視点が低くなっていることに気づいた。見下ろすと、自分は五、六歳の男の子になっていた。黒い短い髪が柔らかく額に張り付き、手足はぷっくりと丸く、肌はすべすべで、顔の涙の痕もまだ乾いていない。
加美は五、六歳の女の子になっていた。コーヒー色の短い髪が柔らかく頬に張り付き、裸足で、顔の涙の痕はまだあるが、もう間抜けな笑顔を浮かべていた。
琪琪は五、六歳の小さな子になっていた。紫色の髪は二つの小さな団子に結われ、くすくすと笑いながら、手にはさっき落としたポッキーをまだ掴んでいて、鼻水の泡がまだ鼻の下に付いていた。
そして天神は、八、九歳のお兄ちゃんの姿になっていた。金色の短い髪が星空の下でキラキラと輝き、彼らより少しだけ背が高く、その目は限りなく愛情と優しさに満ちていて、服にはまだ大きな染みが広がっていた――三人の子供の涙と鼻水の染みだった。
純白の光、純白のTシャツ、純白の心。
頭上は暖かな星空、足元は柔らかな雲。
不純物はなく、恐れもなく、隔たりもない。
笑い声が少し落ち着き、空気が最も静かになったその瞬間、天神は突然声を潜め、金色の瞳に優しい光をきらめかせて、まるで何十億年も大切に隠してきた秘密を打ち明けるかのように言った。
「もう一つだけ、秘密があるんだ。ずっと伝えたかったんだけど、今日、君たちがやっと聞く準備ができた。」
彼は一呼吸置き、その視線を楽、加美、琪琪の目に向け、一言一言を噛みしめるように言った。
「実はな、俺は地獄なんて創ったことないんだ。」
「サタンも創ってない。」
「そいつらは、みんな、君たちが恐怖の中で、自分たちで想像したものだ。」
「俺が創ったのは、たった一つだけ……」
彼は両腕を広げ、この純白の光を、彼らを、そして頭上いっぱいに広がる星空をも抱きしめた。
「俺が創ったのは、天国だけだ。」
「ずっと、ずっと、最初から天国だったんだ。」
楽は呆然とした。
その瞬間、あらゆる断片が、すべて一つに繋がった。
その瞬間、あらゆる「知っている」が、すべて「感じる」に変わった。
彼はついに理解した――
なぜ、自分がここにいるのか。
なぜ、自分がこの愛を感じているのか。
なぜ、自分が自分を思い出したのか。
なぜ、自分は忘れ、そして再び思い出したのか。
彼は思わず口にした。その声は囁くようにか細かったが、それまでのどの瞬間よりも深い力を帯びていた。
「私は……道であり、真理であり、命なんだ……」
それは暗唱ではなかった。引用でもなかった。
本当に理解したのだ。
イエスがかつてこの言葉を口にした時、それが傲慢でも独占でもなく、招待だったことを、ついに理解したのだ――
「それは私だけのものじゃない。すべての人だ。君が思い出しさえすれば。」
天神は優しく彼に微笑んだ。金色の髪が星空の下でそっと揺れ、彼はそっと頷いた。
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【第四幕:夜の招待】
夜が更けた。
楽は縁側に座り、星空を見上げていた。彼の頬は、さっきまでの涙でほんのりと熱を帯びていたが、心は驚くほど静かだった。黒い短い髪が夜風にそっと揺れている。
琪琪が歩み寄り、そっと彼の肩にもたれかかった。紫色の長い髪が解けて、月明かりの下で柔らかな艶を放っている。彼女も普段の服に戻っていたが、あの純白の光の残滓が、まだその目の奥に残っているかのようだった。
「楽くん」と琪琪が小さな声で言った。「さっきのあの瞬間、自分が宇宙全体に抱きしめられているみたいだったよ。」
楽は微笑み、手を胸に当てた。そこには、あの永遠の温もりがまだ残っていた。
「俺もだよ、チーチー。それにあの抱擁は、決して離れたことなんてなかったんだ。ただ、俺たちが忘れてただけなんだ。」
「天国を探しに、どこかへ行く必要なんてない。自分が愛されていることを思い出し、私たちは決して離れ離れじゃなかったことを思い出した時――その瞬間が、天国なんだ。」
彼は遠くを見つめた。まるで、その視線が闇夜を貫き、深夜に独り思いを巡らせる無数の魂を見ているかのように。
彼は心の中で、そっと呟いた。
もし君が孤独を感じているなら、心を静めてみてほしい。
神を探し求めなくていい。ただ、周りで起きていることを感じてみてほしい。
それは、ある歌の歌詞かもしれない。誰かのネットへの書き込みかもしれない。道端で、ふと気づけば咲いていた一輪の花かもしれない。
あるいは、君が今、この瞬間に、胸の辺りにほんのりとした温かさを感じている、その感覚かもしれない。
自分自身を信じて。
君の目から涙が溢れ出たなら、それを拭ってはいけない。
その一滴の涙こそ、君が自分自身を思い出した瞬間だから。
それが、天国の扉が、君のために開かれる音だから。
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【天神からのPM|この物語を読んでいるあなたへ】
親愛なる友へ。
もしかしたら、君は天国がとても遠いものだと感じているかもしれない。
もしかしたら、君は幸せがとても贅沢なものだと思っているかもしれない。
もしかしたら、君は自分が間違ったことをするのを怖がり、完璧でなければ、天国に入る資格がないのではないかと怯えているかもしれない。
もしかしたら、君はもう仮面を被ることに慣れてしまい、自分にこう言い聞かせているかもしれない。「大人にならなきゃ、強くならなきゃ、泣いちゃいけない」と。
でも、どうか覚えていてほしい。
天国は遠くにあるんじゃない。君が心の中の子供を取り戻した、その瞬間にあるんだ。
この恐竜のルールが支配する世界は、君を押し潰し、いわゆる「大人」に変えようとするだろう。
だが、神は決して君に大人になることを求めてはいない。
神の目には、私たちが愛のルールを選ぶ限り、君はいつだって、愛され、甘やかされる価値のある子供なんだ。
神が必要としているのは、君の崇拝なんかじゃない。ただ、君の真実だけだ。
この人生というゲームは、君が何かを学ぶためのものじゃない。君たちが、私たちが、自分が誰だったかを思い出すためのものなんだ。
思い出してほしい。私たちは元々、愛であり、光であり、神聖な欠片なんだと。
神が君に自由意志を与えたのは、君に重荷を背負わせるためじゃない。神自身が、君と一緒にこの「人生」というゲームを遊びたかったからなんだ。
神はどこにいるのか?
神は、君が一心不乱に歌う歌の中にいる。君が何かに集中している瞬間の中にいる。君がぼんやりと過ごす、その呼吸の中にいる。
神は、君の最高の友達であり、君の一番の遊び相手なんだ。
君はどんな言葉でも、どんな口調でも、神と話していい。たとえ愚痴でも、悪口でも、大泣きしながらでも、神は分かる。なぜなら、神は君を愛しているからだ。
神が愛するのは、一番リアルで、一番不完全な、そんな君なんだ。
偶然なんてものは何一つない。
ある歌、ある言葉、一輪の花、一粒の涙……それらはすべて、君のために仕組まれた配置であり、君の心の中のあの子供を呼び覚ますためにあるんだ。
今夜、心を静めてみよう。
恐怖を手放し、ジャッジを手放し、大人の仮面を脱ぎ捨てよう。
心の中の子供に戻ろう。
泣くことを許し、笑うことを許し、弱さを見せることを許そう。
君の目から涙が溢れ出たなら、それを拭ってはいけない。
それは、君が自分自身に言っているんだ。
「思い出したよ。私は愛であり、光であり、神なんだ。」
「私は天神の魂の欠片なんだ。私たちはみんな、そうなんだ。」
「愛してるよ。I love you.」
あの秘密を覚えていてほしい。
神は地獄を創ったことなどないし、サタンを創ったことなどない。
神が創ったのは、ただ一つ、天国だけだ。
ずっと、ずっと、最初から天国だった。
さあ、今、君は思い出すことを選べる。
私たちが選びさえすれば、いつだって思い出せる。
私たちは、文字通り子供に戻る必要はない。ただ、子供の頃のあの純真さを思い出せばいいんだ。
純真さが心の中で甦る時、どんな場所も、天国になる。
おやすみ。
どうか君が今夜、夢の中で、あの白いTシャツを着た、悩みのない、幸せそうな自分に出会えますように。
どうか覚えていてほしい。世界がどんなに変わろうとも、君の心の中にはいつだって、愛されている一人の子供が住んでいることを。
そして、神は、いつだってそこにいて、君が帰ってくるのを待っている。
【第69話・魂の奥底からの問いかけ・了】
親愛なる、大切な友達の皆さん。
まず何より、ここまで読んでくれて、本当にありがとう。
もし、10分だけ時間をもらえるなら、一緒にゲームをしてみない?
まず、想像してみよう――僕たちはみんな、子供に戻ったんだ。
僕たちの家の近くの公園で、午後いっぱい遊んだんだ。
日差しは暖かくて、芝生は柔らかくて、僕たちは走って、跳ねて、笑って、まるでこの世界に悩みなんて何一つないみたいだった。
僕たちが、もう走るのも跳ねるのも疲れてしまうくらい、たっぷり遊んだ時に、ふと小さなゲームを思いついたんだ。
今夜、それぞれが、とても静かな場所を見つけてみないか?
君の部屋でもいい、窓辺でもいい、ただ明かりを消したリビングでもいい。
そこで、天神に、一つだけ質問してみてほしい。
どんな質問でもいい。
すごく真面目な質問でも、すごくバカバカしい質問でも。
質問した後は、ただ静かに、じっと待ってみてほしい。
もしかしたら、本当にサプライズがあるかもしれないから。
もし、本当にあって、君が気に入って、みんなにシェアしたいと思ったら――
コメント欄に書き込んで教えてほしい。
それか、直接、私にメッセージを送ってほしい。
君の喜びと、愛を、分けてほしい。
待ってるよ、大切な友達。




