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EARTH Online  作者: 甘太郎
46/53

第46話:秋葉原での覚醒、そして未完成の翼

第一幕:平心湯、八日目──創造の胎動


時間は、休業休暇の第二週。朝。


縁側の障子から差し込んだ陽光が、畳の上に温かな光の斑を刻む。天神はトトロの毛布にくるまり、最新号の漫画週刊誌に顔を埋め、イヤホンからはアニメのエンディング曲が流れている。つま先がリズムに合わせて軽く揺れる。


「完璧だ……何も考えず、好きなものだけと一緒に過ごせる時間って……」


工房から、規則的な木材を削る音が聞こえてくる。


楽は腰をかがめ、手中の桜の木片を一心に見つめていた。机の上には二枚の手描き設計図が広げられている。


一枚は『多層保温弁当配達箱』。隅々に細かな注記が:「桜材内胆+真空断熱層、55℃以上を4時間維持、グリップ弧度最適化案A/B」。

もう一枚は『折り畳み式軽量児童探検リュック』。精巧なほぞ組み構造が描かれ、端に書き添えられている:「肩紐調節可能、側面ポケットに安全反射板装着、重量≤1.2kg」。


彼は手を止め、指先で木目の感触をそっと確かめた。


「前は壊れたものを直すだけだったのが……今は、新しい『何か』を創り出せる……のかな?」


工房の隅、キキは小さな腰掛けに静かに座っている。


膝の上のデータボードには、淡い青色の画面に『温かさ演算システム』のリアルタイムデータが流れている。数分おきに、彼女は顔を上げて楽を見る。


「先輩」電子音は平静だ。「配達箱のグリップ弧度を5%最適化すれば、手部への負担分散率が向上し、長時間携帯による疲労度を18%低減できます」

「はい。また、リュックの反射板取り付け角度は、児童の下校時間帯の日照角度および車両視野角を参考に提案します」

彼女が指を軽く動かすと、一組の光線シミュレーション図が壁に投影された。


楽はその精緻な計算図を見て、頭をかいた。

「キキ、君って今、俺の『創造的おかみさん』みたいだよ」

キキの目が0.5秒だけわずかに見開かれた。

彼女はうつむき、データボードの光が顔を照らす。「これは私の役目です」

だがそう言い終えても、彼女は動かず、むしろ腰掛けをほんの十センチ、楽の方へと静かに近づけた。


---


大堂のカウンター前で、加美は白い布で木の表面を丁寧に拭いていた。

動作は相変わらず精確で効率的だが、その眼差しは以前と違っていた。

かつてそこにあった「下等生物を観察する」ような冷たい隔たりは薄れ、代わりに……柔らかな漣のようなものが浮かんでいる。彼女は窓の外、庭で山茶花の枯れ枝を手入れする中村婆婆の背中を見つめ、台所から顔を出した山田師傅の声を聞く。

「婆さん!完璧なのを二輪残してくれよ!昼に花漬けご飯を作るから!」


人間たち。

小さく、脆く、寿命の短い生き物。

彼らは、架空の台詞のために涙を流し、会ったこともない英雄に歓声を上げ、売れる見込みもない「贈り物」を作るために何時間も費やすことを厭わない。


加美は手を止めた。

数日前、楽が迷子で泣く子供に、歪な木彫りの子猫を手渡した時、その子が涙を止めて笑った瞬間を思い出す。

天神がアニメの中でキャラクターが犠牲になる場面を見つめ、口では「陳腐だ」と言いながらも、目尻にほんのり浮かんだ潤いを思い出す。

キキ……あの本来、絶対的に理性的であるはずの機械生命が、今ではただ「傍にいる」ために、工房の隅に静かに座っていることを思い出す。


「無償の執着……」加美は呟く。「天国が追い求める『永遠の完璧な秩序』と比べれば、こちらの方が……『生きている』ように思える」


彼女は布を置いた。

心の中で一つの思いが芽生える。


理解したい。

天神がなぜ、あんなにも「架空の物語」を愛するのか。人間の瞳を輝かせるあの「愛」が、いったいどんな形をしているのか。


そして彼女は、一つの場所を知っていた──

そこには最も濃縮された「熱愛」が集まっている。


加美は縁側へ歩み寄った。

天神はアニメのクライマックスシーンを見ており、口にスプーンをくわえて何か呟いている。「死なないで……」


「天神様」加美は努めて平坦な口調で言う。「私……少し買い物に出てきます」

「ああ、いいよ〜」天神は顔も上げず、手を振るだけ。「お菓子買ってきてね〜激辛ポテチとハニーアーモンド!」

「……承知しました」


加美は背を向け、歩幅を普段より3%速めて去っていく。


彼女が見逃したのは──

彼女が縁側を離れた瞬間、天神が漫画誌の陰から目を上げ、口元に、ほとんど見えない狐のような笑みを浮かべたことだった。


---


第二幕:追跡指令!爆笑・秋葉原潜入作戦


加美が去って十五分後。

縁側で歓声が炸裂した!


「ヤッホー!!!!!」天神は毛布から飛び起き、目をキラキラ輝かせている。「チャンス来た!飛雲!」

楽が工房から顔を出す。「え?なにが?」

キキもデータボードから視線を上げる。

天神は腰に手を当て、顔に「悪戯計画中」と書き込んだような表情で宣言する。「加美が一人で行った先は──秋葉原!!」

「秋葉原?!」楽は目を見開く。「何しに行くの?」

「知らん!だが──」天神は二人の前に跳び、声を潜めても興奮が隠せない。「こっそり護衛できる!それに……『首席秘書』がアニメ聖地でどう覚醒するか、見物しよう!」

キキの目にデータストリームが走る。「加美様の移動経路を捕捉。10時24分発JR高山線で名古屋へ向かい、新幹線に乗り換え東京へ。秋葉原到着予定は14時07分」

「よし!!」天神はどこからか三つのキャップと三つの普通の上着を取り出す。「変装!すぐに出発!」


五分後。

平心湯の前に三人の「不審な人物」が現れた。


· 天神:グレーのフード付き上着+濃紺のキャップ、帽子のつばを深く下げ、さらに平光の黒縁メガネをかけている。

· 楽:「普通」の二文字が大きくプリントされたトレーナーを着せられ、呆然としている。「これで……目立たない?」

· キキ:ナノマテリアルが自動的に薄灰のスウェットシャツとダークパンツに変化。彼女は冷静に分析する。「秋葉原の地形と人流量データに基づき、A、B二組に分かれて追跡することを提案します」

「出発!!」天神が手を振ると、三人はこっそりと平心湯を抜け出し、駅へと走りだした。


---


列車上の爆笑序章


14時02分、東京メトロ日比谷線、秋葉原行きの車内。


三号車:加美は窓際の席に座り、事前にダウンロードした『秋葉原攻略:初心者編』を真剣な表情で見つめている。今日はシンプルなベージュのトレンチコートに、ローポニーテールという、ごく普通の観光客風──もしも彼女の瞳が「敵情偵察」のような鋭さを宿していなければ。


五号車:天神、楽、キキがドア付近に詰め合っている。

「見えた?見えた?」天神は車両連結部のガラス越しに覗き込む。

「見えたよ……すごく真面目そう……」楽が小声で言う。

キキが冷静に報告する。「距離23.5メートル、間に乗客87名。秋葉原駅下車後、15~20メートルの追跡距離を保つことを提案します」

その時、車内販売のワゴンが通りかかる。

「すみません!これください!」天神が即座に手を挙げる。「激辛ポテチ!ハニーアーモンド!それと……カルピスキャンディ!」

楽:「……天神様、追跡任務ですよ」

「追跡だってエネルギー補給は必要だよ!」天神は当然といった口調でポテチの袋を開ける。「キキもいる?」

キキは差し出されたお菓子を見つめ、0.3秒間データストリームが走る。「人間が秘密任務中に高糖分菓子を摂取する確率は17%。ただし、任務の特殊性を考慮し……ハニーアーモンドを選択します」

楽は額に手を当てる。「あんたたち……」


---


秋葉原・爆笑追跡実録


14時20分、秋葉原駅電気街口。

加美は駅を出て、喧騒の交差点に立ち、珍しく一瞬「途方に暮れた」表情を見せる。

眼前にはアニメ看板、ゲームセンターの音、押し寄せる人波……情報量が限界を超えている。

彼女は深呼吸を一つし、攻略の第一歩に従う:「模型店から始め、基礎的な認識を構築する」


14時25分、模型店前。

加美はショーウィンドウの前で、等身大のSFメカ模型を、敵に臨むかのような厳しい表情で見つめている。

「分析:機械構造に生物美学的要素を融合。関節設計は機能性と視覚的衝撃性を兼ね備える……」彼女は独り言を呟く。「なぜ人類は、このような架空の『強大な造形物』を崇拝するのだろう?」


暗がり、柱の陰。

天神(小声):「メカを見てる!さすが戦闘本能!」

楽(笑いをこらえて):「でも、その様子はメカと作戦会議を開こうとしてるみたい……」

キキ(平静):「加美様の瞳孔が12%拡大、心拍数微増。『美意識の触発』と推測します」


14時40分、別の模型店。

加美は一箱の「白い羽根の翼を持つクラシックなメカ模型」を手に取り、指先で箱面に広がる羽根の関節をそっと撫でる。

彼女の眼差しが変わった。

もはや「分析」ではなく、何か……より柔らかで、没入するような集中だ。彼女はその羽根の関節を見つめ、指先を翼の曲線の上で止めた。


暗がり、角の新聞売り場の後ろ。

天神(口を押えて笑う):「翼のある機体か……やはり彼女には特別な吸引力があるな」

楽:「ほんとだ……箱を一分以上も撫でてる……」

キキ:「微表情分析によれば、加美様の現在の感情タグは『好奇心』と『惹かれつつある』、比率7対3です」


その時──

「おい、見ろよ!この店、懐かしいアニメのグッズがある!」

天神が突然楽の袖を引っ張り、目を輝かせて向かいの、懐かしのポスターがたくさんかかった専門店を指さす。

「え?どこどこ?」楽はたちまち引き込まれる。

「あっちもあるよ!クラシックなテーマ店!!数量限定の復刻品だ!!」

「本当?!ちょっと見てくる──」

二人は任務を完全に忘れ、手綱を切った馬のようにグッズ店へと突進していった。

キキはその場に立ち、二人が看板の陰に消えるのを見つめ、目のデータストリームが静かに点滅する。

「任務優先度再評価:加美様追跡 → 80%、天神様および楽先輩の迷子防止 → 95%」

彼女は(人間の反応を模して)軽くため息をつき、二人が消えた方向へ歩き出した。


---


15時10分、離脱者救出大作戦


場所:懐古漫画倉庫、三階『クラシックスポーツ漫画コーナー』

天神と楽は書架の前にしゃがみ込み、目を輝かせて一冊のクラシック熱血スポーツ漫画の完全版をめくっていた。

「わあ……この作品はいつ見ても熱くなる……」天神が小声で言う。

「そうだね……でも俺たち、そろそろ──」

「待て!楽、このページ見てみろ!主人公が初めて限界を突破するコマだ!」

「本当?!見せて──」

「お二人様」

キキが音もなく二人の背後に現れ、声は平静無波だ。

「加美様の現在位置:秋葉原中央通り、コスプレスタジオ区域へ移動中。現在地からの距離:420メートル。見失う確率が上昇中です」

天神と楽は同時に凍りつく。

「……すみません」楽は恥じ入ったようにうつむく。

天神は作り笑いを浮かべる。「はは……これは……戦略的情報収集だ!今すぐ追うぞ!」

三人は急いで階下へと向かった。


---


第三幕:コスプレスタジオ──「もっと楽しいことをやろう」


15時25分、「幻装工房」スタジオの外

加美は大きなガラス窓の前に立ち、店内に所狭しと並ぶ衣装を静かに見渡している。

彼女の視線は一つ一つに留まる。


· 色鮮やかな「戦隊スーツ」一式。赤黄青緑黒が並び、胸のバッジがライトに照らされて光る。数人の少年たちが試着し、揃って変身ポーズを取り、彼女には理解できないが活気に満ちた決め台詞を叫んでいる。

· 華麗な「宮廷風プリンセスドレス」。何層ものレースとリボン、小さな模造宝石があしらわれている。一人の少女が鏡の前でそっとくるりと回り、スカートが花のように広がる。彼女の顔には夢のような笑みが浮かんでいる。

· 定番の「メイド服」。白と黒の配色で、エプロンがきちんと整っている。メイド服を着た二人の若者がお茶を運ぶ礼儀作法を練習しており、その姿勢はある種の儀式のように正確だ。

· 他にも、侍の鎧、魔法使いのマント、未来的なタイツ、レトロな探偵のトレンチコート……

加美の視線はスキャナーのようにゆっくりと動く。

彼女はそれらの若者たちを見る──

戦隊スーツを着れば、背筋が伸び、眼差しが毅然と変わる。

プリンセスドレスをまとえば、動きが軽やかになり、笑顔が優しくなる。

メイドのエプロンを締めれば、姿勢は恭しくなるが、不思議な誇りさえ感じられる。


「外見……そんなにも徹底して、人の『在り様』を変えられるものなのか?」

彼女の指が無意識にガラスに触れる。

六千年の間、彼女には「首席秘書」という武装と、「ストーカー気質の女」という仮面しかなかった。

「別の誰かになる」ことが、こんなにも……軽やかで、自発的で、それどころか楽しいことだとは、考えたこともなかった。


その時──

「加美~~~~!」

楽しげな声が背後から響く。

加美は全身を硬直させ、ゆっくりと振り向いた。

天神、楽、キキが、いつの間にか彼女の後ろに立っていた。三人の顔には笑みが浮かんでいる──天神は輝くような、楽は温かな、キキは平静な。

「天、天神様?!どうして──」

「心配だから、ついて来たんだよ」

天神はまばたきを一つし、口調は軽やかで自然だが、純粋な心配が込められていた。尾行が発覚したことへの気まずさは微塵もなく、遠くへ一人で出かける家族を当然のように心配しているかのようだった。


加美は言葉を失った。

心配……彼女のことを?

六千年の間、彼女はずっと「守護者」の役割だった。天神を心配し、任務を実行し、危機を処理する……誰も彼女に「心配だ」と言ったことはなかった。

楽も笑ってうなずく。「そうだよ、一人で遠くまで行くなんて、心配だからね」

キキが平静に補足する。「都市安全データによると、秋葉原地区の迷子発生確率は他の観光地区の1.7倍です。集団行動の方が安全性が高いです」

加美は三人を見つめる──

天神の目には真心からの心配、楽の顔には温かな笑顔、キキの平静だが真剣な表情。

彼女は喉が詰まりそうになり、なんとか言葉を絞り出す。「私……自分でちゃんとできます」

「わかってるよ」天神は微笑んだ。「でも、一緒に見てみたいんだ」

彼は振り返り、スタジオのショーウィンドウ内の華麗な衣装に目を走らせると、目を輝かせた。

「どうだ?ずっと見てたけど、試してみたいのはある?」

加美は思わず躊躇する。「私は単に文化観察を──」

「文化観察の一番の方法は、自分で体験することだよ!」天神はそう言うと、視線はガラスを通して、スタジオの奥の隅にあるハンガーへと向かった。

そこには、一組の赤と白のクラシックなバスケットボールチームのユニフォームが掛かっている。10番の背番号がライトの下でくっきりと見える。隣には同じデザインの7番のユニフォーム、そして優しいブラウスとスカートのセット、それにキビキビとしたマネージャーの制服。

天神は振り返り、加美を見つめ、深い眼差しを向けた。

その眼差しには笑いと理解、そして「君が何を考えているか、わかっているよ」という優しい共感が込められていた。

「戦隊スーツも、プリンセスドレスも、メイド服も……悪くない。でも──」

彼は一呼吸置き、声は導くような柔らかさを帯びた。

「──もっと楽しいことをやろうよ」

「一つのチーム、四人の役割、ちょうどいい」

「熱血も、信頼も、励ましも、守護もある」

「何より……『一緒に』だ」

加美は天神を呆然と見つめた。

彼女は突然理解した──

天神は適当に選んだわけではない。

彼は彼女がショーウィンドウの前で過ごした一秒一秒を見て、「役割転換」への好奇心を見抜き、そしてさらに深層にあるものを見透かしていた。


彼女に必要なのは、単に「別の誰かになる」ことではない。

彼女に必要なのは、「あるチームの一員になる」ことだ。


六千年の間、彼女は孤独な守護者だった。

天国にいても、彼女は「首席秘書」でしかなく、効率的だが孤高の道具に過ぎなかった。

しかしこの赤と白のユニフォームは……

「チーム」を表している。「仲間を信じること」。「同じ目標に向かって一緒に走ること」。


楽も笑いながら近づいてきた。「そうだよ加美!一緒にやろうよ!久しぶりにこういうことしてないし!」

キキが平静に補足する。「衣装構成分析によれば、この役割セットにはフォワード、ガード、マネージャー、精神的サポーターが含まれ、役割間の相互作用データが豊富で、体験の完全性は89%に達します」

加美は三人の期待に満ちた眼差しを見つめ、またショーウィンドウの中の赤白のユニフォームへと目をやる。

彼女の指が、そっとガラスから滑り落ちる。

そして、彼女は自分の口から、ため息のように軽く、しかしある決意を帯びた言葉が洩れるのを聞いた。

「……ええ」


天神は笑顔を大きく広げ、クリスマスプレゼントをもらった子どものようだった。「じゃあ決まりだ!赤白チーム、出陣!」

彼はスタジオのドアを押し開け、風鈴がチリンチリンと鳴った。

入る直前の一瞬、加美は天神がごく小声で彼女の耳元に囁くのを聞いた。

「安心しろ……今回は『別人を演じろ』ってことじゃない」

彼は間を置き、声は羽のように優しかった。

「『私たちの一員になってみろ』ってことだ」


加美の瞳孔が、わずかに見開かれた。

そして彼女は、その赤い姿について行くように、可能性に満ちた小さな世界へと足を踏み入れた。


---


コスプレ変身!


十分後、鏡の前の四人。

加美:


· 茶色のロングストレートのウィッグ、白いブラウスに赤いリボン、薄い色のスカート。

· 彼女は鏡に映る「清楚な気質で、温かな笑みを浮かべる少女」──設定ではチームのセンターの妹で、いつも信頼に満ちた眼差しでチームを応援する──を見つめ、硬直する。

· 「これ……私じゃない」


天神:


· 炎のように赤いトゲトゲヘアのウィッグ(誇張版)、赤い10番のユニフォーム。

· 彼は瞬時に役に入り込み、腰に手を当てて大笑いする。「ワッハッハ!天才、登場だ!」その場で二度ぴょんと跳び、加美の方へ手を振る。「妹さん~~!」


楽:


· 赤い7番のユニフォーム、少し跳ね上げたヘアスタイル。

· 彼は照れくさそうに笑う。「俺、運動神経普通だし……」天神がすぐに彼の肩を抱く。「俺たちはスピードコンビだぜ!」


キキ:


· 黒い大きな巻き毛のロングウィッグ、チームマネージャーの制服、手には記録板。

· 彼女は冷静に立っている。「データ分析によると、このチームの県大会における歴史的勝率は……」


---


爆笑撮影タイム


シーン1:応援の瞬間


· 加美が前に押し出され、「頑張れ」と書かれたプレートを握らされる。

· 彼女は頬を微かに赤らめ、小声で言う。「頑……張って……」

· 天神がそばで感動して拳を握る。「応援が聞こえた!今日は百本シュート決めるぞ!」

· 楽がツッコミを入れる。「お前、まだドリブルも安定してないだろ……」


シーン2:チーム集結


· 四人でクラシックな「前へ突き進む」ポーズを取る。

· キキは「全国制覇」と書かれたプレートを掲げるが、表情は相変わらず平静。

· 加美は次第に打ち解け、役になりきって拳を握る。「みんな、一緒に頑張ろう!」

· 言い終えて、彼女自身が呆然とする──他人を純粋に応援するこの気持ちを、彼女は六千年の間、これほど直接的に感じたことはなかった。


シーン3:即興災難


· 天神が突然閃き、片膝をついて加美に叫ぶ。「妹さん!俺は天才かもしれないが、君への想いは──」

· 加美は瞬時に耳の先まで真っ赤になり、防御姿勢を取る。「待って!それは台本にない!」

· 楽は笑いながらしゃがみ込む。

· キキが冷静に記録する。「ロールプレイ中の即興発揮は、社会的境界感覚を73%低下させます」


---


決定的な覚醒の瞬間


撮影の合間、加美は鏡の前に歩み寄り、鏡の中の「自分」を見つめる。

この少女は純粋で、情熱的で、バスケットボールとチームに対して、一切の保留のない率直な支持を示す。大声で応援し、勝利すれば跳び上がって喜び、率直に「みんなが頑張る姿が一番好き」と言う。


六千年の間、彼女の天神への「愛」は、常に重く、所有欲に満ち、計算づくだった。

しかしこの少女の「好き」は……軽やかで、励ましに満ち、相手がより良くなることを願うものだ。


「なるほど……」加美は呟く。「『好き』って……こんな形でもいいんだ」

天神が彼女のそばに歩み寄る。まだあの赤い10番の姿だが、眼差しはいつもの透徹した優しさに戻っている。

「どうだ?『励まし役』を演じる気分は?」

加美は低い声で言う。「彼女は勇敢です。あんなに直接的に、支持と信頼を表現できるなんて」

「彼女の『好き』は、『信じる』ことに基づいてるからだよ」天神は微笑む。「相手は良くなれる、一緒に頑張れば成し遂げられるって信じる──その『信じる』気持ち自体が、とても強い力なんだ」

その時、楽とキキも近づいてくる。

楽は笑いながら言う。「スピード型のガードを演じるの、結構楽しいな。俺が物を作る時に手先が早いのと、ちょっと似てるかも」

キキが平静に言う。「チームマネージャーの役割と私の職責は、37%一致しています。ただし、彼女の感情表現は私より412%豊かです。学習記録しました」

四人は互いを見つめ、同時に笑い出した。

その瞬間、首席秘書も、天神も、匠も、機械生命もいない。

赤白のユニフォームを着た四人が、秋葉原の小さなスタジオで、一つの共通の「演じる」ことを通じて、結びついていた。


---


第四幕:帰路と昇華


18時30分、帰路の新幹線の中。

四人は普段着に戻っているが、空気は一変していた。

加美は窓にもたれ、窓の外を流れていく東京の夜景を見つめながら、そっと問いかける。

「天神様……あなたがそんなに物語をお好きなのは……架空のキャラクターを通して、この不完全な世界を愛することができるからですか?」

天神はハニーアーモンドをかじりながら、首をかしげて考える。

「半分だな。もう半分は……彼らが教えてくれたんだ。たとえ『演じられた』英雄でも、誰かが信じ、誰かが彼らのおかげで少しでも良くなろうと思うなら──」

彼は加美を見つめ、澄んだ眼差しを向ける。

「──その『守りたい』という心は、もう立派な『本当の力』なんだ。君が今日『頑張って』って言った時の、目の中の輝きと同じくらい、本当なんだ」

加美はしばらく沈黙する。

そして、ごくごく軽く、彼女は言う。

「……ここへ連れてきてくれて、ありがとうございます」


20時00分、平心湯、工房。

楽はその桜の木片を手に取り、指先で木目を触る。

今日の光景が脳裏に蘇る──

加美の厳しい表情が次第にほぐれていく様、天神の誇張された熱血ポーズ、キキが冷静にマネージャーを演じるギャップ、そして最後に四人が一緒に大笑いした瞬間。

彼は彫刻刀を手に取る。

今回は配達箱でも、リュックでもない。

小さなバスケットボール、そしてそれに寄り添うように広がりつつある一対の翼を彫り始める。

ボールには細かな模様が刻まれ、翼は機械の精密さと羽毛の柔らかさを融合している──メカの翼のようでもあり、天使の羽のようでもある。

未完成の「バスケットボールと翼」。

キキはそばに静かに座り、もうデータによる助言はしない。

彼女はただ、楽の手と木が触れ合う軌跡を見つめ、木屑が舞い落ちるのを見つめ、ライトの下でその組み合わさった彫刻が少しずつ形を成していくのを見つめている。

彼女の目には、データストリームがゆっくりと流れ、ある種の無言の「傍にいること」のようだ。


21時30分、加美の部屋。

彼女はあの「センターの妹」のコスチュームを丁寧にクローゼットに掛け、隣にはいつもの黒い執事服。

そしてパソコンを開き、検索を始める。

「ロールプレイの心理学的意義」

「スポーツ漫画におけるチームスピリットの構築」

「観察から参加へ:サブカルチャー体験はいかに認知を変えるか」

モニターの光が彼女の顔を照らす。あの常に鋭かった目は、今では月明かりに照らされた湖のように柔らかい。

彼女は一つのアルバムを開く──今日スタジオで撮影した写真だ。

一枚、彼女(茶色のロングヘア、赤いリボン)がようやく笑顔を解き、「頑張れ」のプレートを掲げている写真がある。

加美はそれを長い間、ただ見つめていた。

そして、ごく軽く、写真の中の「自分」に言う。

「……頑張れ」


---


23時00分、縁側。

天神はいつもの場所に横たわり、イヤホンからはクラシックなスポーツアニメの主題曲が流れている。

彼は星空を見つめ、口元に笑みを浮かべている。

キキが近づき、手にしたデータボードが微かに光る。

「地球愛能指数を更新:65.4%、昨日より0.3%上昇。成長ノード分析:『自己探求の受容』、『集団遊戯の純粋な楽しさ』、『異なる立場を越えた感情的結びつきの体験』」

天神はプリンのスプーンを口にくわえ、さらに深く笑みを広げる。

「どうやら、うちの『首席秘書』も、今日ようやく自分の『人間の遊び場』を見つけたみたいだな」

彼は工房の方を見る──

あそこにはまだ灯りがともり、楽の彫る微かな音が、鼓動のように規則正しく響いてくる。

二階の加美の部屋を見る──

カーテンの隙間から温かいモニターの光が漏れている。

星空は静かに、次の冒険を予約しているかのようだ。

そして平心湯の軒先で、バスケットボールと翼が融合した一つの木彫りが、匠の手の中で、ゆっくりと形を成しつつある。


【第46話・了】

皆さま、いつも応援してくださり本当にありがとうございます。

今回の物語も、楽しんでいただけたら嬉しいです。


もし何かご意見やご感想がありましたら、ぜひ教えてください。


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