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魔道士少女の憂鬱な悩み

作者: 堀島成理也
掲載日:2025/10/24

未完成版(ある少女の一幕)を見比べていただけると幸いです。

ご覧いただいた通り、改題しております。

主人公の名前と一部のキャラの口調が変わっておりますが、本編制作の都合で変更しておりますので、御理解の程お願いいたします。

 また、やってしまった。

 どうして私はこうなんだろう。


 私は同じ歳の子達と遊びたいだけなのに、生まれついて魔力の高さが、仲良くなりかけていた子に怪我をさせてしまった。


「大丈夫。大きくなったら自然と身についてくるからのう、魔法の勉強に励むんじゃよ」


 お婆様は私にそう言い聞かせてくれている。

 魔導士学院を運営しているおばあ様は私に期待してくれている。


 お父様とお母様は、おばあ様とは考えが違っていた、二人とも魔法とは無縁の将来を見出す事が両親の願いだった。


 私達姉弟の両親は、ファルトが産まれてしばらくして居なくなってしまった。


「儂等を守る為、お星様になったのじゃよ」


 お婆様に尋ねたら、悲しそうな顔を浮かべながら教えてくれた。


 私は魔力の素質に期待はしてくれているけれど、未だ使いこなせていない生まれついての力に嫌気が刺しまう。


 両親を早くに亡くした私は魔法の訓練が上手くいかない時や失敗した時、気晴らしついでに弟を連れて生家の魔導学院を出て、商業区域や港区域まで遊びに出ている。


 弟は会話ができるような歳になるとすぐに魔法防御の手段を覚えてくれた。


 簡単に言えばマジックシールドと言うやつだ、あげればキリがない程に多い魔法防御の手段だけど、初歩的なマジックシールドを早々に覚えてくれたお陰でファルトとの生活だけは、自分の魔力に対して気を使う事がなく過ごせていた。


「おねえちゃん。またやっちゃったの?」

「へへっ。またやっちゃった」


 遊びに連れてきた弟は心配そうに私の顔を覗き込んできた。

 仲良くなった友達と離れた場所で遊んでいた弟は、いつの間にか友人達と別れていた。


 私は蒼い髪をファルトが良く見えるように髪を整えながら幼い彼を心配かける事なく微妙な笑みをこぼしながら舌をペロッと見せたが、弟の顔は晴れやかにはならなかった。


「がんばってよ、おねえちゃん! ひとりにはゼッタイしないから大きくなったらボクがケッコンしてあげるからダイジョーブだよ」


「ふふっ、ファルトったらドコでそんなことおぼえたの……そうね。イイ男がいなかったらファルトにお願いしちゃおうかな」


 オマセな弟のセリフに私も少し背伸びした言葉で返しながら彼の黒い髪を端によせ、自分のヒタイを彼のオデコにコツンと音が出そうな強さで重ねる。


 例え弟でも、ファーストキッスはあげられない。

 まだ会った事もない、白馬の王子様にお渡しするんだから大事に取っておかないとね。


「なにをみてるんだ、オマエ」


 微笑ましい言動をした弟をあやしていると、非常に耳障りの悪いセリフが聞こえてきた。


 声のする方へ顔を向けると、腕組みをしながらこちらを見下している茶色い髪の少年が立っている。 


「なによ、あなた! たびの人みたいだけど、よそモノに弟との時間をじゃまされたくないわね、あっちいきなさいよ」


 歳の頃は私と同じ八歳くらいなのだろう、私のおでこ一つ分くらい背が高かった。

 男の子に小動物を払うかのように手をひらつかせて、ならずものから顔を逸らす。


「ほんとうになにも見てないんだな、だいじな弟がケガをしててもかまわないってのか」


「なにを言ってるのよ! こんなにキレイな顔してるのに……あら?」


 私は不届きモノを睨みつけ、弟の姿を確認を始めた。

 いつも転んだ時は顔から地面に激突して泥だらけになるのだけど、その様子は微塵も見られず、ファルトを頭の上から膝まで視線が下がった時に見慣れない布切れが弟の右足に巻かれている事に気がついた。


「ファルト、どうしたのコレ……って血が出てるじゃないの」


 痛みを我慢した笑顔を浮かべる弟の脚に巻かれた布切れから、血が滲み出ているのを私は見逃さなかった。


「さっきね、あっちでコロんじゃってさっ、ナいてたら、このおにいちゃんがたすけてくれたんだよ」


「おいおい。ギャー、ギャー泣いてないからセーフだろう。ちょっと、あぶなかったけどなっ」


 ファルトに向けて親指を立て、ニカッと笑いながら私の弟に「良く泣かなかったな」と言わんばかりの訂正と援護を送ってくれている。


 この時の私は弟が怪我をした事に気がつかずに落ち込んでいた。


 よくよく恩人の彼を見ると旅装束の代名詞とも言える外套マントの裾部分が破り取られていて、ちょうどファルトの右足に巻かれている布切れと同じ色彩と形をしている。


「ごっ、ごめんなさい! 弟をたすけてくれた人にしつれいなコトを……」


「へぇー、ちゃんとあやまれるんだな。カワイイトコあるじゃん」


 などと言いながら少年は握手を求めてくるように手を差し出してきた。

 そんな上から目線で対応してくる男の子に対して「なんなのコイツ、こんなヤツ強風に吹き飛ばされちゃえばイイのよ!」と心の中で強く思いながら手を差し出そうとしたその瞬間、風魔法のエアスラスターが発動してしまった。


 風魔法の中級クラスに位置するエアスラスター。彼のような魔道士教育を受けていない者が多少のケガでは済まないのは明白だった。

 私はギュッと目を閉じて「また、やってしまった」と心の中で思い、大惨事を予見していたが、予想を大きくハズれて信じられない光景が起きていた。


 彼にとって脅威と思われていたエアスラスターは、まるでそよ風が吹いているかのようで何事も起きてないかのように立ち尽くしていた。


 エアスラスターではなく別の小規模の魔法が作動したのかと推察してみるも、周囲の人達は突然起きた強い風魔法の被害を受けないよう必死に堪えている。


「どうしてヘイキなの? 強いまほうをつかっちゃったのに」


 中級魔法の影響がなくなると同時に私は彼に問いかける。


「僕は生まれつきまほうにつよくてね、この街をまきこむくらい大きいまほうじゃないならヘッチャラだよ」


 生まれついての特化しすぎた能力は自分だけと思っていた。    

 私に対抗できるような強い魔法耐性のある人が同世代にいると言う事が、その時は衝撃的だった。


「ちょっ……。なんでなきだすんだよ! 僕、キミにひどい事されたおぼえはあっても、ひどい事したおぼえはないよ……」


 この少年は何を言っているのだろうと思うよりも先に私の目からは涙が溢れ出していた。


「あなたみたいな人もいるのね。よかったら、わたしの……いいえ、わたしたちのおともだちになってくれませんか」


 私は涙をながれている事も忘れて、自分と弟の友情関係の契約を見知らぬ少年に求めていた。


 彼のような友人が居れば、年齢に相応しくない程に恵まれている自分の魔法力に悩まなくて済むし、ずっと一緒に過ごして貰えるような存在になってもらえるならば、夢みがちな少女のお決まりな幻想に憧れ続ける事をやめ、自分たち姉弟にとって楽しい事ばかりを思い描いていた。


「手をにぎってくれてるんだから、もうともだちにキマってるだろう」


 私は無意識のうちに彼の差し出していた手を両手で握っていた。

 それはまるで一番のたからものを見つけたように満面の笑みを浮かべながら。


「そうだ。キミ、なまえなんていうの? ファルトくんのおねえさん」

「私はレミア・ウォレアスっていうの。人になまえをきくときはジブンからいうモノじゃないのかしら?」


 上から目線が混じったように彼の名を尋ねる、いつの間にか人見知りの弟が私よりも先に自己紹介していたようで、少しの悔しさもも入った心情で質問を投げかけいたのかもしれない。


「ごめん。そうだよね、いつもコレでおばあ様におこられるちゃうんだよね、ぼくは……」

「トレアス! 船の時間ですよ! どこに行ったのかと思えばこんな所で遊んでいたのですね」


 彼が名乗ろうとした瞬間、少し離れた場所から旅装束を身に纏った老女が男の子を呼んでいた。


「いけねっ! もう時間なんだ。レミアちゃんゴメン、またね! ファルトもつぎは、すごいまほうをおしえてくれよな」


「トレアスくん。せっかくおともだちになれたのに、もうおわかれなの?」


 私はまるで聞き分けのない子供が言いそうな事を言って彼に笑いかけた。


「だいじょうだよ。ぼく、ここの学院に入学するよていだから、また会えるよ」


 私の両肩に優しく手をのせて彼は笑いかけてくれた。


「やくそくだよ。私もいろいろなまほうをおしえてあげるから、ぜったいにまた来てね」


 胸の高さで手を祈るように組みながら懇願した私の目には再び涙が浮かんできていた。


 彼は優しく微笑むと右手の人差し指を軽く曲げ、涙を拭うと顔を寄せてきて、ファルトとは比べ物にならない大胆な行動に出てきた。

 私の憧れていた事、一生に一度の楽しみにしていた事は思わぬ形で奪われてしまった。


 行為を終えたトレアスは再び微笑み、サッと走り出した。


「こらぁー! このヘンタイ! また来てくれなかったら、ゆるさないんだからねっ」


「つぎはキミからしてくれたら、うれしいなっ! まったね」


 イタズラっぽい笑顔を浮かべながら手をふる彼に、再会を願い微笑みながら手をふりかえした。


「おねえちゃん、トレアスくんとケッコンしちゃうの?」


 ファルトが涙混じりの顔で尋ねてくる。


「そうね、ファルトがトレアスくんをなぐってくれたら、かんがえなおしてもイイかな」


 私は弟に目線の高さを合わせて笑いながら答えた。


「ホント? じゃあボク、おおきくなったらマトウカになるね。それでトレアスくんをなぐるね」


 燥ぎながら自分の将来を公言する弟に私はトレアスのいない時に恐ろしいアドバイスをした事に気がついてしまった。

 

 でも、その心配は杞憂に終わる。

 なぜなら、その後三、四年経っても彼は入学してくる事はなかったのだ。


 だが、彼とのひと時を忘れかけていた頃に、私は思いもしない場所でトレアスと再会するのだけど、それはまた別のお話ということで……。


『ある少女の一幕』改めまして『魔道士少女の憂鬱な悩み』読了ありがとうございました。

 前作の後書きにも明言いたしましたように、この作品は現在制作中の長編の過去の物語となっております。

 進行状況は半分くらいしか進んでおりませんが、必ず完成させるつもりです。

 長編の方も楽しみにしていただければ幸いです。


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