5.俺の過去
勝手な自分の想像かもしれ中学生の頃はなにかあったら相澤は笑って返してくれた。今は周りから「静かな子」「おとなしい子」と思われていたらしいが「無口な子」「つまらない子」に変わっていった。
そして今はまわりから「どうでもいい子」と思われているらしい。でも話して見ると面白い子だと思う。
最初は嫌いなのかとは思うけど話してみると悪くない。『性格』っていうのは恐ろしいと思う。『印象』っていうのは恐ろしいと思う。
俺はふと自分の過去を思い出した。「性格」というのは本当に恐れていた。ときは遡り俺が小学五年生の頃の話だった。
その頃はおとなしく、本を読むのが好きだった。まわりからはその通り「おとなしい子」と言われていた。
だが、友達がいない訳ではない。発言も良くするほうだったからだ。だからその時は「おとなしい子」と言われても別に悪くは思わなかった
休日は図書館に行ったりなど好きな時間を過ごしていた。そこで会ったクラスメイトがいた木村俊治。彼も同じように本をよく読む人だった。
「あれ? 俊治くん?」
「ああ、悠也くんじゃないか!」
俊治のメガネの奥から見える目は大きくひらいていた。
「あれ、君もよく本を読んでいるの?」
俊治が聞いた。
「そうなんだ」
話しかけるとすぐに仲良くなり一緒に図書館にいくような仲になった。
いい子じゃないか、そう思うようになった。そこで俺は考えた。彼は学校ではどのように思われているのだろう、まわりからどんな印象を与えているのだろうか、と。おそらく俺と同じ「おとなしい子」なのではないかそう考えた。
だが、そんな印象ではなかった。他の友達に「俊治くんってどんな感じ?」と聞いてみると思わぬ発言が返ってきた。
「暗いし……なんだろ、話しづらいっていうかずっと一人でいるから近寄れないかな?」
「私は、つまらない子だと思うなー。話しかけてもそんなに返してくれないから好きじゃない」
俊治は「おとなしい」ではなく「暗い」「つまんない」「よくわかんない」最終的に「好きじゃない」という結論になった。不思議に思った。
彼も俺と同じ「おとなしい子」そう思っていたがそうではなかった。
その瞬間自分が怖くなった。自分もそう思われてしまったらどうしよう。嫌われてしまったらどうしよう、と。その頃の俺は気が弱く、友達がいないとこの先どうしたらいいかわからない人だった。
俊治くん自体はは自分がどう思われているかなんて分からない、いやそもそもそんな事考えたことがないらしい。だけど、俺は変わりたいと思った。
「おとなしい」ではなく「明るい子」に。
すぐに変われた訳ではないが少しずつ、少しずつと気持ちを、そして性格を変えていった。
気づいたら俊治ではなくクラスで目立っているメンバーと話すようになっていた。そして図書館に行くこともなくなり公園や友達の家でゲームをするようになった。
スポーツもするようになった。
女子たちに囲まれるようになった。
よく話すようになった。
目立つことが好きになった。
でも、きっと本当は俊治と話したかったんだ。
また一緒に図書館に行きたかったんだ。
本を読むのが好きな俊治くんと話す時間は楽しかった。趣味があったからいろいろな本をお勧めしてもらった。
だが、跡形もなく終わってしまった。
「最近、話していないよね。僕もう転校するんだ」
移動教室で廊下を歩いているときに不意に俊治に話しかけられた。
「え」
心臓が止まると思った。
転校? 俊治くんが?
「どうし――」
「悠也、行くぞ!」
どうして、転校するの? と聞こうとしたが他の友達に遮られた。「木村と話してんのか」と驚いたように言われた。
「ごめん、俊治くん、また後で」
勘違いをされたくないと思い、相手のところに走っていった。
「悠也、あいつと話してるの?」
「悠也ー。もしかして木村さんに話しかけられた? もしかして仲いいの?」
次々に話しかけられ困った。なんて言ったらいいか分からなかったがその時はとても苦しかった。悔しかった。
五年生の終わり、木村俊治は転校した。
ごめん。俊治くん、ごめんな。