4.性格
(二)
* * *
〈カラオケ〉
「ねぇ、みんなでくるの久しぶりだね!」
友花が弾んだ声で言った。
「本当だよなー。俺最近忙しかったからなー」
「えー。忙しい!? なにそれ、めずらしく勉強してたのー?」
ありさが笑いを取るように言った。
「あ、いや、ゲームでいそがしかったんだよ!」
男子は吐き捨てるように言った。そう言うとみんなが笑い出した。
「なぁ、悠也」
ひかるが話しかけてきた。ひかるは仲良くなった友達だ。
「ん?」
「あのさ、相澤さんと仲いいけど、もしかして知り合い?」
「別に?」
五十嵐悠也はさらっと答えた。
「俺、思うにはさ、相澤さんすごく可愛いのになんか静かじゃない?」
ひかるが言った。
「確かに! 俺も思ってた」
もう一人の男子が突っ込んできた。
「性格さえ良ければモテるのになー」
「もったいない」
そうかもしれない。
別に性格が悪いなんて思っているわけではないけど、俺は心のそこから思った。
「なになに〜? 男子たちで何話してんのー?」
ありさが言い出した。
「好きな人の話?」
「え! 悠也くん、好きな人いるの?」
「誰々〜?」
友花に続いて女子たちが言い出す。
「そんなんじゃないって」
俺は笑って返した。
カラオケが終わり空を見上げた。空は青く鮮やかだった。
帰り道、小さな公園を通って 家に帰ろうとした。
「や、やめてください!」
突然の聞き慣れた声にはっとした。
あ、相澤さん!?
声の聞こえた方向を見ると相澤さんと知らない男の人が話していた。俺は目を見張った。
「せっかくだしな、どっか行こうぜ!」
男が相澤の腕を掴む。
「お願いだからやめっ……」
「おい! 何するんだよ!」
「ゆ、悠也……!」
不意に足が動き、気づいたら俺は相澤を掴んだ男の腕を引き離していた。
「は? なんだ、お前?」
ギロッと男の人が見てくる。
「け、警察に連絡しますよ!?」
俺は叫んだ。
「あ? どうやって?」
その瞬間、相澤がベンチから立ち上がり、警察の電話を押す前のスマホの画面を男に見せた。
「ボタン、押しますよ!」
相澤は強い口調で言い、すっと指を出し、押そうとした。
「す、すいませんでしたっ!」
男は跳ね上がるように急いで逃げていった。
へな〜と相澤はベンチに座り込む。
「怖かったー。悠也さん、ありがとう」
「ってか強いな。相澤さんって」
俺は笑った。それに連れて相澤も笑った。
「相澤さん。スマホ持っているんだ」
「え、うん」
相澤はスマホを操作しホーム画面に戻した。
「ねぇ、連絡先教えて? 俺もスマホ持っているから」
俺は鞄の中をあさり、スマホをを探した。
「別にいいけど」
相澤はスマホを渡し、俺はスマホを操作した。
「よし、これで相澤と連絡できる」
相澤にグットマークをした。
「もし見れなかったらごめん」
「全然いいよ」
「後、なにかあったらすぐに連絡して」
俺は相澤を見つめながら言った。
「うん。悠也、ありがと」
相澤は優しく微笑んだ。
『性格さえ良ければモテるのになー』
帰り道、ひかるが言っていた言葉を思い出す。
中学生の頃はなにかあったら相澤は笑って返してくれた。今は周りから「静かな子」「おとなしい子」と思われていたらしいが「無口な子」「つまらない子」に変わっていった。
そして今はまわりから「どうでもいい子」と思われているらしい。でも話して見ると面白い子だと思う。
最初は嫌いなのかとは思うけど話してみると悪くない。『性格』っていうのは恐ろしいと思う。『印象』っていうのは恐ろしいと思う。
俺はふと自分の過去を思い出した。