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長編集:REAL版人生ゲーム 〜仮想現実の世界へようこそ〜


【Episode 1:ミヨリの大逆転】


ルーレットが「5」に止まった瞬間、ミヨリの目の前に「事業に成功して、100万$獲得」という文字が浮かぶ。


「やった!私、一番乗りで金持ちだよ!」


仮想の札束を抱きかかえて喜ぶミヨリ。だが、まだこのゲームの恐ろしさを彼女は知らなかった。



【Episode 2:コジロの選択】


空白のマス。浮かび上がる文字。


「① 無職で宝くじ1000万$ ② 会社勤めで宝くじ500万$」


「……責任って、重いな。」


迷った末、②を選ぶコジロ。地味な選択だが、彼の目はどこか清々しかった。



【Episode 3:サナミ、白衣の誓い】


「なりたい職業:看護師」


瞬時に制服が白衣に変わり、驚くサナミ。


「似合ってますよ」とミヨリとナナミに言われ、照れるサナミ。


でもこの笑顔の裏に、「このまま現実でも看護師目指してみようかな…」そんな小さな決意が芽生えていた。



【Episode 4:ナナミの夜勤6連勤】


「② 看護師になって夜勤6日、合計700万$」


「働かないって決めてたのに……でもお金には勝てなかったわ」


ナナミもまた白衣姿に。サナミと並び、看護師コンビが誕生した。


「なんか運命共同体って感じだね」とナナミが笑う。



【Episode 5:ミキヤの正義感】


「連続殺人犯を逮捕。懸賞金10万$」


「俺、こういうの向いてんのかな」


警察の制服姿で胸を張るミキヤ。仮想世界とはいえ、人を守る体験は彼に何かを残したようだった。



【Episode 6:ユキヤの冷静さ】


黙々とゲームを進めるユキヤ。周囲が混乱しようと、彼のテンポは崩れない。


「冷静に行こう。これは“リアル”でも、“ゲーム”でもあるんだ」


ユキヤは、この仮想世界が自分の“本当の人生”に影響することをどこかで確信していた。



【Episode 7:勝者、ミヨリ】


最後のマスに到達したミヨリに告げられる勝利の言葉。


「おめでとうございます。あなたが勝者です」


目の前に置かれた300万円の札束。それを見て微笑むミヨリ。


「これ、夢じゃないよね?」


彼女の眼差しの先には、次のゲームへの招待状が光っていた。


【Episode 8:サナミの決意】


ゲームが終わった翌日、サナミは目を覚ました自宅で、無意識にスマホを開いた。検索履歴には「看護専門学校 資格」「夜勤 手当 現実」などの文字が並ぶ。


「たかがゲーム、されど……夢じゃなかった」


あの白衣姿の自分が、どこか誇らしかった。自分の価値を、初めて“自分自身で決められた”体験だったのだ。



【Episode 9:コジロの選択、再び】


「会社勤めなんてダセぇって思ってたけどよ…」


ゲームの中での“普通”の選択が、コジロの心を揺さぶっていた。


それまでは定職にもつかずフラフラしていた彼が、ハローワークに足を運ぶ。


「勝者じゃなかったけど、俺、やり直してみっか」



【Episode 10:ナナミの“もう一つの自分”】


VRの中で看護師になったことで、“人に頼られる”という経験を初めてしたナナミ。


「なんか…こんな自分も悪くないって、思っちゃった」


普段は感情を隠しがちな彼女も、あの仮想世界では自然に笑えていた。


仮想で得た経験が、現実の彼女を少しずつ変えていく。



【Episode 11:ミキヤの違和感】


警察官として人助けをしたミキヤ。だが、同時に思ってしまう。


「……なんで、あの犯人の顔が、現実で見たことある気がしたんやろ」


ゲーム中に見た犯人の顔。現実世界で以前見かけた不審な男と一致する記憶。


「ただのゲーム……じゃないよな」


ミキヤは警察学校のパンフレットを見ながら、深いため息をついた。



【Episode 12:ユキヤの仮説】


「全員が“何かを得た”ゲーム。それってただのエンタメじゃない」


冷静なユキヤは、ミヨリが言っていた「勝者だけが進める戦い」が頭に残っていた。


(あのナツミって女、開発者って言ってたけど、目的は何だ?)


ゲームで得られる仮想通貨、記憶への干渉、人格の変化――すべてをノートに書き起こす。


「これは…社会実験か、洗脳か」


ユキヤは真相にたどり着くため、再び“参加する覚悟”を決めていた。



【Episode 13:ミヨリからの招待】


数週間後、5人の元に“封筒”が届く。


差出人は《MIYORI》

中には、短い手紙と1枚のチケットが同封されていた。


「次は“本当の人生”を選ぶ番だよ。あの時のゴールはただの入口だったから。」


手紙の裏には、「REAL人生GAME《次元突破編》」の文字。


5人は迷う。もう一度行くのか、それとも…?




【Episode 14:再集結】


夜、都内某所。

カフェの一角に、あの6人が一人、また一人と現れた。


ミヨリの招待状に記されていた集合場所。


(ミヨリ) 「来てくれて嬉しい。今日は“あの後”の話をしたくて」


(ナナミ) 「あの後?……この前ので終わりじゃなかったの?」


(コジロ) 「何が始まるんだよ、まさかまた…」


ミヨリは静かに首を振ると、一枚の新たなチラシを取り出す。


【REAL人生GAME《次元突破編》】

「今度は、“他人の人生”をプレイしていただきます。」


(ユキヤ) 「他人の人生って……どういう意味だ?」


(ミキヤ) 「いや、マジで。次元を超えてって、何なんや」


(サナミ) 「これ、またあのVR使うの?」


(ミヨリ) 「いいえ、今度は“記憶と感情”を直接ダウンロードするらしいの」


ざわつく空気。


(ミヨリ) 「私、もう次のフェーズに進むことを決めた。…みんなは?」


(コジロ) 「なんでそんな簡単に決められるんだよ?」


(ミヨリ) 「“ゲーム”だけど、リアルで、リアル以上に自分が見えるの」


その時、店のテレビがノイズを走らせながら切り替わった。


⦅ 皆さん、こんにちは。またお会いできて嬉しいです。私は“開発者”のナツミ。REAL人生GAMEの《次元突破編》への招待を、ここに正式に開始します。⦆


全員のスマホに同時に通知が来た。


【次元突破編へアクセスしますか?】

▶ YES   ▶ NO


(ミヨリ) 「押さなくてもいい。けど――私は押すよ」


彼女の指が“YES”をタップした瞬間、光が彼女の体を包む。


(ナナミ) 「ちょ、ミヨリ!?」


彼女の姿は次の瞬間、カフェから消えていた。



【Episode 15:ナツミの狙い】


同時刻、どこかの地下施設。

ナツミと呼ばれる女性は、ホログラム端末に向かって呟いた。


(ナツミ) 「彼女が突破した……これでフェーズ2に進める」


側に立っていた謎の男が言う。


「彼らは“自分の意思”で進んでいる。倫理的問題はない、と?」


(ナツミ) 「いいえ、“意思”さえもプログラムされているのよ」


ナツミの目が赤く光った。



【Episode 16:他人の人生】


場所は変わり、白く光る部屋。

そこに立っていたミヨリは、目を見開いた。


(ミヨリ) 「……私じゃない……誰かの……?」


そこは戦火の中を逃げ惑う子供たちの村だった。

ミヨリはその中の一人の少女、“リナ”として目を覚ましていた。


「今度のゲーム……本当にゲームなの?」


ゲームであると信じなければ、心が壊れる。


でも、目の前の“現実”は、痛みも涙も、あまりに“本物”だった。




【Episode 17:ナナミ編「少女と最期の手紙」】


気がつくと、ナナミは古びた和室にいた。

ふすまの外から聞こえる風鈴の音、壁には昭和のカレンダー。


鏡を見た瞬間、驚愕する。


(ナナミ) 「……私、おばあちゃんになってる……?」


彼女は“ナツエ”という名前の80代の女性になっていた。

手元には震える手で綴られた一通の手紙。


「ナツエ様、このたびは終末期医療への移行を了承いただきありがとうございました。ご家族の意向も確認済みです」


家族?

彼女は誰も知らない家族の顔を、なぜか“知っている”気がしていた。


(ナナミ) 「これは……ナツエさんの記憶……?」


数日後。

“ナツエ”のもとへ、ひとりの若い女性が見舞いに訪れる。


(女性) 「おばあちゃん……わかる? 私、サクラだよ」


ナナミは咄嗟に「サクラ」と呼びかけた。心に焼き付いていたその名前。


(ナナミ/ナツエ) 「……来てくれたんだね……」


その瞬間、涙があふれる。

それはナナミ自身の感情ではなく、ナツエの“愛”だった。


(サクラ) 「あのね、私、あなたの夢を叶えたの。看護師になったよ」


ナナミの胸に、静かで深い感動が押し寄せた。

誰かの人生を生きるということは、こんなにも重く、尊く、切ない。


サクラが差し出したのは、幼い頃の自分が描いたという絵。


「ずっと、私のヒーローだったよ。ありがとう、おばあちゃん」


ナナミは絞り出すように言った。


(ナナミ) 「こっちこそ……ありがとう……」


そしてその瞬間、世界が白く崩れていく――



【Episode 18:転送完了】


(ナナミ) 「……はっ!」


彼女はVRポッドの中で目覚めた。

汗が額を伝い、息が乱れている。


ドーム上部に表示される文字:


【他人の人生 No.1:ナツエ 完了】

【感情転送率:98.2%】

【帰還条件:他5名の“人生体験”を完了後】


(ナナミ) 「こんなの……もうゲームなんかじゃない……」



次は誰が“他人の人生”を体験するのか――




【Episode 19:ユキヤ編「沈黙の少年兵」】


気づいたとき、ユキヤは乾いた大地の上に立っていた。

見渡す限りの瓦礫、銃声、そして焼けた空。


彼は自分の姿を見下ろす。

ボロボロの軍服、右手には銃、そして左腕には番号が刻まれたバンド。


(ユキヤ) 「……子ども?」


彼の身体は10歳ほどの少年のものになっていた。

記憶が少しずつ流れ込む――この少年の名前はレオン。

彼は生まれてすぐに親を失い、ある組織に拾われて「戦う子ども」として育てられた。


(ユキヤ)「……クソッ、これはただのゲームだろ?」


しかし、目の前にいる小さな女の子――「ティアナ」がユキヤにしがみついた瞬間、心が揺れた。


(ティアナ)「お兄ちゃん……怖いよ……お腹すいたよ……」


彼女はレオンの“妹”だった。

銃声が響くたびに彼女の体が震え、涙を流すたびにユキヤの胸が痛んだ。


(ユキヤ)「……こんな世界で、俺は……お前を守るって決めたんだな……レオン」


数日後、彼らの隠れ家が見つかり、仲間が次々と倒れていく。


そのとき、選択が提示される。


【選択肢】

① 自分だけ逃げて生き延びる(生存確率90%)

② 妹と逃げる(生存確率50%)

③ 妹を逃がし、自分は囮になる(生存確率10%)


ユキヤは迷わなかった。


(ユキヤ)「俺は、お前を生かすためにここにいたんだろ?」


彼は③を選び、銃を手に走り出す。

兵士たちを引きつけ、銃声の中で彼はこう叫んだ。


(ユキヤ)「ティアナ! 走れ! 生きろッ!!」


そして世界は――静かに、白く崩れていく。



【Episode 20:転送完了】


(ユキヤ)「はっ……」


ポッドの中で目を覚ましたユキヤの頬には、涙の跡。


【他人の人生 No.2:レオン 完了】

【感情転送率:94.6%】


(ユキヤ)「“死”って、ただのゲームの設定じゃなかったな……」


彼の目は真っ直ぐ前を見ていた。

これはもう、遊びじゃない。



次は誰が「他人の人生」に転送されるのか――




【Episode 21:コジロ編「消えたピアニスト」】


気がつくと、静寂なホールにひとり座っていた。

赤いカーテン、古びた木の床、そして中央に佇むのは一台のグランドピアノ。


(コジロ)「……ここ、は……音楽ホール?」


手を見れば、白い手袋。黒い燕尾服。

記憶も身体も、彼は既に**“誰か”になっていた**。


ナレーションが響く。


【あなたは“天才ピアニスト・橘コウジ”。しかし4年前、突然姿を消した。】

【このVRステージでは、あなたが“なぜ姿を消したのか”を追体験してもらう。】

【目標:最後の舞台で“本当に弾きたかった音”を奏でよ。】


(コジロ)「俺が……天才ピアニスト?」


舞台裏には、かつての恩師・草壁教授の姿。

そしてマネージャーの女性、そして元恋人のバイオリニスト・ユウナの声も聞こえる。


「コウジ、お願い、もう一度だけ戻ってきて……」

「あなたは音楽に愛された人間だった」


だが――この「橘コウジ」には、秘密があった。

彼の右手は事故で神経を失っており、もう“以前のようには弾けない”。


(コジロ)「つまり……これが、“音楽を捨てた男”の人生か……」


数日が経ち、彼は“最期の舞台”に立つことになる。

ホールには満員の観客。スポットライトが彼を照らす。


【選択肢】

① 右手を使わずに片手で弾ききる(評価は分かれるが本物の音が出る)

② ゴースト演奏を使い、過去の音源を再生(絶賛されるが偽り)

③ 舞台から降りて引退宣言(喝采はなくなるが本人の決断)


舞台袖でコジロは呟いた。


(コジロ)「俺が選ぶべき音は……」


そして彼は――①を選ぶ。


指が奏でる音は完璧ではなかった。

だが、ホールには涙を流す観客の姿があった。


(コジロ)「……これが、あいつが奏でたかった“音”か」


白い光に包まれ、舞台がフェードアウトする。



【Episode 22:転送完了】


(コジロ)「戻ってきた……」


ふと見ると、右手が少し震えていた。

だがそれ以上に、胸の奥に何かが残っていた。


【他人の人生 No.3:橘コウジ 完了】

【感情転送率:98.3%】


(コジロ)「“人生の選択”って、こういうことなんだな……」


誰もが逃げたくなる瞬間に、何を選ぶか。

それが「REAL版人生ゲーム」なのだと彼は知った。



次の人生に転送されるのは――




【Episode 23:ナナミ編『色のない結婚式』】


気がつくと、ナナミは白一色の空間に立っていた。


壁、床、天井……すべてが真っ白。

彼女自身も、真っ白なウエディングドレスを着ている。


(ナナミ)「……なんで私、ドレス?」


そこに響く案内音声。


【あなたは「結婚に向き合えない女性・朝霧ナナミ」】

【このVRでは、“理想と現実”のはざまで迷うあなたの心を再現します】

【目標:真実の「誓いの言葉」を選んでください】


彼女の前に現れたのは、2人の男性。


一人は、黒スーツの高身長なエリート――「瀬戸ハヤト」

もう一人は、地味な眼鏡の幼馴染――「柴田レン」


(ナナミ)「……うわ、なんか乙女ゲームみたい……」


だが2人ともナナミにプロポーズしてくる。


(ハヤト)「君の未来に必要なのは、安定と計画性だ」

(レン)「俺は……笑ってるナナミが、好きなんだ」


その瞬間、部屋の壁に**無数の“選択肢”**が現れた。


【A:年収2000万の男と結婚し専業主婦】

【B:幼馴染と共働きで田舎暮らし】

【C:結婚せず、自由を選ぶ】


(ナナミ)「……ねぇ、選べないよ、こんなの……」


彼女の脳裏に、現実の家族の声が蘇る。


「30超えたら売れ残るわよ」

「女は愛されるより安定よ」


そのたびに、部屋の白がグレーに濁っていく。


(ナナミ)「違う……私は、誰かの言葉で選びたくない……!」


ナナミは迷った末――


【C:結婚せず、自由を選ぶ】を選択した。


すると、部屋に色が戻った。

白ではなく、**ナナミ自身の好きな「藤色」**のカーテン、壁紙、花が咲いていた。


(ナナミ)「……これが、私の選んだ“未来の景色”……」


壁に文字が現れる。


【他人の人生 No.4:朝霧ナナミ 完了】

【感情転送率:91.7%】

【キーワード獲得:「自由」】



【Episode 24:転送完了】


(ナナミ)「……戻ってきた。あたし、ちゃんと断ったのに……こんなに晴れ晴れしてるの、不思議」


ナナミは自分の手のひらを見つめ、ぽつりと呟く。


(ナナミ)「本当に大事なものは、誰かと比べて決めるもんじゃないね」



次の“人生”に呼ばれるのは――




【Episode 25:ユキヤ編「コピー人間の願い」】


―――白い部屋。何もない空間。


そこに立つユキヤは、自分の手を見つめながら静かに言った。


(ユキヤ)

「ここは……また、あのVR世界か。」


足元に広がるのは、まるで紙で作られた街並み。

建物も人も、すべてが“ペーパークラフト”のように軽く、薄い。


(ユキヤ)

「チープだな。全部作り物って感じがする。」


だが、目の前に現れたのは――


自分と瓜二つの“もう一人のユキヤ”。


(コピー・ユキヤ)

「なあ、お前って、何のために生きてると思う?」


(ユキヤ)

「いきなりなんだよ。」


(コピー・ユキヤ)

「お前がここにいるのは、“本物”じゃないって証明するためだよ。」


コピーのユキヤは、顔も声も仕草も、何もかも本物そっくりだった。

しかし、言葉の端々に――どこか痛みのような“違和感”がある。


(コピー・ユキヤ)

「俺たちは誰かの期待通りに動いて、優等生を演じて、生きてきた。

 でも、それって本当に“俺”か?」


(ユキヤ)

「……」


(コピー・ユキヤ)

「お前がやりたいこと、本当にやりたいことって何?

 誰かの“完璧な像”をなぞる人生じゃなくて、自分だけの“願い”って、あるのか?」


ユキヤは言葉に詰まった。


幼少期から「しっかり者」「頼れる人間」と周囲に言われ、

期待に応え続けてきた。

誰にも迷惑をかけず、手堅く、無難に生きてきた。


(ユキヤ)

「……俺がやりたいこと、か……」


すると目の前に「選択のマス」が現れる。


【①:他人の理想を叶える道】

【②:自分の“本音”に従い、夢を追う道】


(ユキヤ)

「夢なんて、ガキくさいって思ってたけど……

 でも、今なら言える気がする。」


彼は迷わず【②】を選んだ。


すると周囲の景色が変わる。

街は立体的になり、色が戻ってくる。

“コピーのユキヤ”も静かに微笑んで――


(コピー・ユキヤ)

「……そっか。なら、お前はもう“本物”だな。」


ユキヤの手元には、小さなギターと「制作中の曲」が書かれたノートが現れた。


(ユキヤ)

「これが、俺のやりたいこと……歌を作ること、だったんだ。」


VRの空間が崩れ、ユキヤは現実へと戻っていった。



【Episode 26:現実世界】


(ユキヤ)

「……夢ってのは、バカにされることもあるけど、

 俺には、ちゃんと意味があったんだ。」


隣で聞いていたナナミが微笑む。


(ナナミ)

「いいじゃないですか。そうやって“自分”で決めた道なら。」


(サナミ)

「うん……コピーじゃない、本物のユキヤさんですね。」


(ユキヤ)

「ありがとう。みんなも、それぞれの“答え”があるんだろうな。」


部屋の照明が、ほんの少し明るくなった気がした。




【Episode 27:ミキヤ編「正義か復讐か」】


仮想空間で目を覚ましたミキヤは、静まり返った廃墟のような都市に立っていた。


ビルは崩れ、路地には瓦礫が散らばっている。

灰色の空に、ぼんやりと赤い月が浮かんでいた。


(ミキヤ)

「……なんだここは」


足元に広がるのは、かつての“正義”の象徴だった警察署。

だが、今はその入り口にも「腐敗」「堕落」と書かれたグラフィティがべったりと貼られている。


(ミキヤ)

「これは……俺の記憶か?」


背後から声がした。


(謎の人物)

「なあ、お前はまだ“正義”を信じてるのか?」


振り返ると、そこに立っていたのは、過去にミキヤが関わった事件で命を落とした親友――アキトの姿だった。


(アキト)

「俺を見殺しにしてまで、守った正義って……何だった?」


(ミキヤ)

「お前……違う。お前はもう……!」


(アキト)

「正義は綺麗ごとだ。正義を語るヤツほど汚れてる。

 今からでも遅くない。“復讐”しよう。俺の分まで……!」


その瞬間、ミキヤの前に選択のマスが現れた。


【①:正義を貫く】

【②:復讐に手を染める】


(ミキヤ)

「……くそ……俺は……!」


ミキヤは、震える手で【①:正義を貫く】を選んだ。


するとアキトの姿が静かに消えていく。


(アキト)

「……そうか。お前は、そういうヤツだもんな。……ありがとな。」


廃墟の街に、かすかに光が差す。


ミキヤの胸ポケットには、警察手帳と共にアキトとの写真が入っていた。

二人で写っている笑顔の中に――確かな想いが残っていた。


(ミキヤ)

「復讐じゃない。俺が貫きたいのは、“守ること”なんだ。」



【Episode 28:現実世界】


(ナナミ)

「ミキヤさん……大丈夫ですか?」


(ミキヤ)

「ああ。あの世界で、あいつにもう一度会えたんだ。

 たぶん、俺はもう迷わないと思う。」


(サナミ)

「……正義って、誰かの痛みの上に成り立つものかもしれない。

 でも、その痛みに向き合う覚悟を持てる人は、強いです。」


(ミキヤ)

「俺が正義を貫けるのは、誰かの命があったからだ。……忘れないよ。」


仮想空間の一角に、“アキト”の名前が静かに刻まれていた。





【Episode 28(最終話):選ばれた者たち】


仮想現実の世界に漂う霧が徐々に晴れていく。


6人のプレイヤーはそれぞれの選択と経験を経て、目の前に巨大な扉が現れた。


⦅ これが最後の試練です。選ばれし者のみが現実へ帰還できます。⦆


ミヨリ、ナナミ、サナミ、ミキヤ、コジロ、ユキヤ。

彼らは互いの視線を交わし、歩みを進めた。


扉を開けると、そこには鮮やかな光の中、ナツミの姿が浮かんだ。


(ナツミ)

「あなたたちは、この試練を乗り越えました。

現実と仮想の境界で、自分の“本当の人生”と向き合う勇気を持ったのです。」


ミヨリが前に出て言った。


(ミヨリ)

「このゲームで得たものは“お金”じゃない。

自分の選択が未来を作ること。

仲間と共に歩むことの大切さです。」


(ナツミ)

「その通りです。これからの人生も、ゲームと同じく選択の連続。

あなたたちは、その意味を学んだのです。」


ナツミは手をかざすと、6人の体を包み込む光がゆっくりと収束し、


⦅ あなたたちは、元の世界へ戻ります。

ただし、現実の世界でもゲームの経験は消えません。

“選択”を恐れず、進み続けてください。⦆


6人は目を閉じ、次に開けた時、見慣れた部屋の中にいた。


(サナミ)

「無事に戻った……けど、なんだか不思議な気持ちだね。」


(ユキヤ)

「これで終わりじゃない。これからが本当の人生だ。」


(コジロ)

「たとえどんな選択でも、後悔しないように生きよう。」


(ナナミ)

「私は、この経験を誰かのために活かしたい。」


(ミキヤ)

「俺は、あの人のために正義を貫く。」


(ミヨリ)

「みんな、これからも一緒に歩もう。」


彼らは互いに頷き合い、新たな一歩を踏み出した。



【終】


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