修学旅行と卒業試験
アカデミーの修学旅行は2泊3日。
観光と歴史のお勉強、それからちょっとしたイベントを楽しむ。
世界の中心街とも言われるここ、コア=ニルを離れてセプテム発祥の地オル=ネストへ向かう。
かつて5人の英雄が邂逅し、大戦を終結させ世界連合を発足させた地。
それがオル=ネストだそうだ。
ビビは修学旅行の全ての計画を練っていた。
班行動から学年全体の動きにいたるまで、彼女のプランに隙がない。
いや、正確には隙間がない。
故に、一人が欠けると大幅な修正を余儀なくされる。
「俺の欠員は全てコ=ラックに任せてください」
「アンタはいつだって、全部コ=ラックに丸投げじゃない!」
それじゃなんの解決にもならないのよ、と。
コ=ラック・オーフェン
学級委員長ほどではないが、我らがセプテム6年生の優等生。
機転が効き、なにかと頭の回る秀才。
今回も、我が班の修学旅行計画の全てを丸投g……お願いしていた。
「……、まあいいわ。ここで私が何を言っても仕方ないし、アンタの卒業試験の概要を教えてくれるかしら」
ビビは呆れた様に俺に言った。
「ヤンヤルヤのラーバーク火山だ」
これだけいえば、ある程度の内容は伝わる。
ヤンヤルヤ王国の北部に位置するラーバーク火山では、過去数回に渡りゲリラ戦が繰り広げられていた。
原因はおよそ十数年前に遡る。
ミオン・フトメールという男が、ヤンヤルヤ国内の政争に敗れて爵位を剥奪された。
ミオンは、ラーバーク火山に籠り支持者と共に蜂起した。
それ以後、定期的にヤンヤルヤ国軍とミオン派ゲリラとの衝突が生じている。
蜂起した当初はセプテムも調停者を派遣していた。
ちょうど5-6年前ほど前には、一度ラーバークを包囲するところまでやってのけた。
だが、当時その包囲作戦を取り仕切っていたセプテム「フーロン・オルガネラ」の戦死を境に形勢が逆転。
結局、包囲網が崩壊し、今日までずるずると引きずっている。
「どのくらいかかりそうなの?」
「詳しくはわからないが、マスターの見立てでは5日ほどってところかな」
どうやら、ヤンヤルヤ国軍がゲリラの拠点を突き止めたらしい。
「ってことは、修学旅行の最終日までには合流できそう?」
「予定通りであれば、2日目の夜には合流できると思う」
事が事だけに、予定通り、が存在するのかどうかはわからないが。
「……なら、 大丈夫ね」
「大丈夫?なにが?」
「卒業記念パーティーと謝恩会やるって言ったじゃない、あれ2日目の夜だから」
「……ああ、それか」
面倒なので忘れていた。
パーティーとか、どうしても好きになれない。
ましてや、正装して参加、とか言われると……ねぇ。
「来れるのに来ないのは、処罰だからね」
チッ……できる事なら欠席しようと。
合流時刻を意図的に遅らせようとした魂胆を見透かされた。
ビビ・ノルテ (18)
クローフィルの同級生で学級委員長。
品行方正、文武両道、成績優秀(学年首席)。
かなりの努力家であり、セプテムの教員陣営の信頼も厚い。
クローフィルが7−8割のカロリーで7−8割の成果を獲得するのに対して、何事にも全力で挑み最大限の成果を獲得する。
そのためか無意識にクローフィルに対して若干の苦手意識を抱いている。
同級生、教員問わず誰からでも頼られる優等生といえば、この人のこと。