第46章:人生最後のクラス会(10):結ばれなかった恋人候補(1)・・・小林じん子ちゃん
・・・こんな古い同窓生のエピソードを、
わざわざ、こうしてしたためるのであるから・・・
「色恋抜きの物語」であるはずがない。
まずはここで・・・
少し前の章でも紹介した、
矢板市役所に就職した、「小林じん子ちゃん」と、ぼくとの因縁について、触れておきたい。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「じん子」・・・かなり変わった、珍しいファーストネームだ。
ぼくが聞いた中でも、かなり古風で日本的な、素敵な名前だと思う。
名前だけでなく、
おかっぱ頭が似合う、おしとやかで、物静かで上品な、昔風な顔立ちの日本美人。
じんちゃんとは、中学1年のときに、はじめて同じクラスになった。
当時、ぼくらの間には、それほど、さしたる会話はなかった。
矢板東高校で、2年・3年のときに、
ぼくとじんちゃんは、またも同じクラスになった。
じんちゃんは、成績が下がったぼくを、けっして軽蔑したり、「誰かさんたち」みたいに、
あざわらったりもしなかった。
だからぼくには・・・
じんちゃんに対する、「悪く、不愉快な思い出」というものは、いっさいなかったのだった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
・・・1991年。
ぼくとじんちゃんは、
矢板市泉にあった、「泉診療所」で再会した。
じんちゃんは、市役所職員として、「出向」というカタチで、診療所勤務となっていたのだった。
「・・・しげおくん。」
「あ・・・小林さん。」
「お父さんから聞いた。農業大学校へ行ったのね。」
「え? ああ・・・うん。」
・・・ここでじんちゃんが言った「お父さん」とは、
当時、市役所勤務だった、ぼくの父のことだ。
じんちゃんは、ぼくの父から、ぼくが減量したり、ボディビルを始めたことなどを日頃から聞かされ・・・
ひそかに、ぼくを好きになっていた。
ぼくといつか結婚したいと思っていて、それでそのような呼び方をしていたらしい。
父も、苦笑いしながら、
自分を市役所で「お父さん、お父さん」とよぶ、そんなじんちゃんを、自分の娘のようにかわいがっていたそうだ。
だがこのときのぼくは・・・
読者の皆様もよく知る、ぼくの小学校時代の恋人、「美絵子ちゃん」のことが忘れられず、
「リマッチ」にて、ニ度と来ないでくれと断られてしまっても、
どうしても彼女のことが忘れられなかった。
それでぼくは、
泉診療所での用事が済むと・・・
じんちゃんへのあいさつもそこそこに、
そっけなく、あっさりした態度でサヨナラした。
・・・じんちゃんの「愛の心」を強く感じながらも、
ぼくが、結局、じんちゃんと結ばれることはなかったのである。




