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第17章:「夢の力をナメるな!!」 

 ・・・これも、ぜひとも皆様に知ってほしいエピソードである。


 この話も、「東大挑戦記」には欠かすことのできない、とっても大切な要素なのだ。


 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


 ・・・2011年10月終盤。


 この日からぼくは・・・


 1987年の高校2年の夏以来、実に22年ぶりに、大学入試のための勉強を、正式に再開した。 


 ぼくはこのとき、栃木県那須塩原市にいまもある、某工場で、派遣社員として働いていた。


 落ち着いたら、あとであらためて、この当時のことを、連載型エッセイにまとめあげて、


 皆様にお届けしたいと予定している。


 ご案内のように、ぼくは「多言語学習者」である。


 250を超える数の世界の言語を学び、日々、文法学習と語彙暗記・文章の音読・暗唱などに、楽しく追われる毎日。


 そんなぼくが、周りの「場の空気」を読むことを極端に嫌い、さらに、自分のポリシーやペースや信条にチャチャを入れられたり干渉されることも嫌う、「奇人変人」「勝手気まま」「ゴーイング・マイウェイ」だということも、愛する皆様には、とうの昔に、ご理解いただいておることだろう♪


 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


 ・・・上記の工場での、社員食堂にて過ごす昼休み。


 多くの工員や工場関係の上役社員などがTVを観ながら談笑し、ランチタイムを楽しむかたわらで、ぼくは、


 ひたすら「外国語の音読」を、小声ながら、ひとり黙々と実施していた。


 もちろん、周りの反応は冷ややかで、そればかりか、敵意むきだしでにらみつける者も。


 ・・・当然のごとく、ぼくは「四面楚歌しめんそか」の状態で、味方なんぞ、ほとんどいなかった。


 なぜ、そんな流れになってしまったのか・・・これについては、のちに執筆予定のエッセイにて、またいずれあらためて、詳しく皆様へ紹介します。


 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


 ・・・ぼくが、社員食堂での「外国語音読」の日課を始めたのが、2009年2月。


 そして、ぼくは大震災があった年の秋に、


 東大受験のための学習を、この社員食堂でも開始した。


 「東京大学・理科」などとでっかくタイトルが書かれた、ぶ厚い「赤本あかほん」なんかを、これみよがしに堂々とここへ持ち込み、


 冷たい視線を肌で感じながら、


 毎日、再受験のための学習に、多言語学習と並行して、没頭していた。


 ただでさえ、2年余りも、聞きたくもない「外国語の朗読」に付き合わされてきた彼らが・・・


 いつまでも、おとなしく黙って控えて見過ごすはずがない。


 「ははは。(こんなところで東大の受験勉強なんかするとは)とうとう、間に合わなくなっちまったのか。」


 あからさまに、わざとぼくに聞こえるように、そう言い放ってきたご婦人もいたな。


 ・・・だから、ひとりの味方・理解者もいないものと、ぼくは思い込んでいた。


 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


 ぼくは、資材・材料の半製品の「運搬係」だった。


 その半製品の印刷を行なう女子工員のいるエリアに出向き、運搬のための「手押し車」のようなもので、ひたすら半製品を載せてまわり、


 それを、自分の同僚が働く部屋に持ち帰り、半製品置き場にセットする・・・これがぼくの仕事内容だった。


 あとに作成予定のエッセイでも述べていくが、


 ぼくは、過去に自分が起こした「ハレンチ事件」のため、ここでも、若い工員から白い目で見られ・・・


 ましてや「尊敬」されることなんて、まったくなかったし、ぼく自身も「期待」もしていなかった。


 ところが、外国語を音読し、英文を流暢にしゃべってみせると、だんだんとぼくを見る目が変わってきた。


 受け入れてはいないけど、ぼくに「一目いちもく」置いてくれているのだけは、ハッキリと感じた。


 ・・・もちろん、それと同時に、むきだしの「敵意」や「嫌悪感」もね(苦笑)。


 意外だったのは、ぼくが東大再受験しようとするのを、じっと見守ってくれている女子工員が、何人かいたことだったろうか。


 ぼくが接近すると、こんなことをぼそっとつぶやきながら、ぼくの目を見て言ってきた女の子がいた。


 「あたしも(東大に)入りたい・・・。」


 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


 ・・・この生産エリアで印刷機を動かしていた女子工員は、すべて若い方。


 当時、20代前半といったところか。


 みんな、「いまどきの女子」って感じで、茶髪の子も普通にいた。


 ・・・当然、こんなオッサンとかみ合うわけがない。


 ただでさえ、外国語の音読や、東大の受験勉強なんかをやっていて、気に喰わない中年男。


 でも、本心・・・内心では、ぼくに大いに興味・関心を持ってくれているのは、数々の彼女たちの「反応」や「表情」「動き」「言葉のはしばし」から、じゅうぶん読み取れ、また感じられたものだ。


 そんな状況の中。


 これを、この章の最後に、皆様に紹介させていただきたい。


 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆


 「憎しみ」と「軽蔑」と「敬意」と「あこがれ」。


 ・・・それらの感情が複雑に入り混じった視線を浴びるぼくに、エールを送ってくれた女の子が、ひとりいた。


 このさい、もう本名で紹介してしまおう。


 『後藤梨沙ごとうりさちゃん』。


 ぼくは、その日、彼女がいる印刷機のそばを通過しようとしていた。


 すると、彼女の足元あたりに、


 ダンボールの板に、プラカードのような形で大きく、赤と黒のマジックで手書きで書かれた、ひとつのメッセージが。


 『夢の力をナメるな!!』


 ぼくは、帰宅してから、ずっと泣いていた。


 (梨沙ちゃん、本当にありがとう。こんな、いい歳こいた中年オヤジを、ひそかに応援して、エールを送ってくれて。そんなことを書けば、君だって、ここの友達にいい顔されないだろうに。)


 (ぼくの生き方に共感し、人生の再挑戦を、こうして後押ししてくれた君の真心や優しさを、ぼくはいつまでも忘れない。ぼくは今日でこの工場を去っていくけど・・・幸せになってね、梨沙ちゃん。ぼくも、君のこれからの人生を、心から応援するよ。ありがとう・・・。)

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