第108章:総括(27):最初で最後の「センター試験」(その2):魔性の女(その2)
・・・センター試験は、
過酷をきわめた。
問題用紙の文字を読む、その大切な眼もかすんできた。
(・・・ダメだ、チカラが入らねぇ。あちこち痛えし、目もよく見えん・・・まいったぜ。)
目の前の、
例の「なまいきで挑発的な目つきのレディ」は、
そんなぼくとは関係なく、
順調に解答しているご様子。
・・・ぼくは、
そんな彼女に、
休憩時間を使って、
「逆挑発」のつもりでもって、
精神科医の和田秀樹先生の書いた、
『2018年度版 新・受験技法: 東大合格の極意』を、しきりに見せつけてみた。
いうなればこれは、
ぼくの「最後の抵抗」「ムダなあがき」「悲しき意地」といったところか。
でも、カノジョは・・・
「フン!」といった表情で、意にも介することもなく、
その後は、ぼくを無視し続ける。
でも、
ときおり自分のバッグから、参考書や、手作りの「受験ノート」をとりだす際・・・
いちいちぼくを、
腕と脇の合間から、妙な角度でにらみつけてきた。
(なんなんだ、この女。気にいらねぇな・・・。)
(最後の「記念受験」だっていうのに、コレじゃあ、「いい思い出」は作れそうもないや。とうとう、ヤキが回ったようだね、このしげちゃんも・・・。)
解答用紙をうしろから回収して、前の席の受験生に渡していく作業の中・・・
ぼくは、自分の、
「穴だらけのマークシート」と裏腹に、
例のレディの・・・
びっしりと黒鉛筆で埋められた、
「リッパなマークシート答案」を、試験が終わるごとに、
見せつけられる結果となったのであった。
そう。
自信満々の表情の、
鋭い目つきのカノジョの解答用紙をね・・・。
(・・・オタクとちがってあたしは、この試験に人生かけてますから。おあいにくさま。せいぜい、がんばって、東大でもどこでも、入ったらいかが? そんな「穴だらけのマークシート」で、入れるものならね。)