第104章:総括(23):神経痛との闘い(その6)
・・・皆さんは、
あの「レディ・ガガさん」を、よくご存じのことと思う。
圧倒的存在感を誇る、『世界の歌姫』だ。
ガガさんも、
ちょうどぼくと同じ時期に、
神経関連の病気に罹患されていた。
それが、
『線維筋痛症』。
患者の多くは30代後半から40代前半の女性で、日本では約200万人が発症している。
しかし、線維筋痛症はあまり知られていない病気のため、周囲から、なかなか理解を得られない方もいるようである。
「サボリ」「仮病」「詐病」とね。
ガガさんは、いまも完治されてはおらず、苦しんでおられるらしい。
一時期は、
本当に、「寝たきり」のようなひどい状態だったそうだ。
ガガさんは、
「わたしと同じ痛み、苦しみの真っ只中におられる方・・・わたしと悩みを共有しませんか・・・? お話も聞かせてほしいです。」
と、しきりに訴えておられた。
ぼくは、この『線維筋痛症』ではなかったが、
同タイプの激痛に、ガガさんが苦しめられていることは、マジで、「カラダで」理解できた。
でも、彼女の場合、
ぼくよりも深刻な状態だった。
・・・歩くこともできないんだから。
ぼくのケースもそうだったが、
外見的には、何の異常も認められないために、
周囲の健康な人間からすると、
「ぜったいウソだね。ただ単に、なまけたいだけだよ、コイツは。」
と判定してしまいがちだ。
・・・ぼくがそうだった。
宇都宮市の真冬の、野球スタジアムの解体工事の現場では、
病気のために現場を外されるのが嫌で、
会社には、病気のことを公表せずに、内緒で、
激痛に耐えながら、現場に出ていた。
・・・雪が舞う寒さの中、
痛みのために、歩くのがやっとのぼくを見た副監督が、
容赦なく、ぼくに罵声を浴びせる。
「動きが悪い!!」
「もっと、シャキシャキ歩け!!」
「たーだ、門につっ立って、ボケーッと工事車両だけ見てんじゃねえ! あそこで横断歩道を渡ってる小学生の警備も、ついでにダッシュでしてこいや!! 近隣住民の印象がよくなるんだからよ!!」
「この自転車で、毎日、現場周辺のアキカン拾いや、タバコの吸殻拾い、ゴミ拾いも、仕事前にやっとけ!!」
この現場には、
正式なヘッド・・・アタマとしての、
正規の監督もいたが、
童顔の若くておとなしい性格の、物静かなタイプの青年だったので、
実際にこの現場を仕切っていたのは、
歳くった副監督だったのだ。
・・・事実上の、この解体現場の「ボス」である。
青年監督は、
つらそうなぼくを見ても、救ってはくれなかった。
「大丈夫ですか、歩くのもキツそうですけど・・・」と、声かけは毎日してくださってはいたが。
(ううっ・・・いてぇ。毎朝の日課の「ラジオ体操」もキツイぜ、マジで・・・。腕もロクに上げられねえし、回転もできん。だけどよ、副監督さん。それは、警備員の仕事じゃねぇべって。完全に契約外の仕事でしょ、そんなのは・・・。)
(それに、なんだい、その「物言い」は。自分だって、たいしたことねぇくせに。オレを見下しやがって、何だと思ってやがんだ、この野郎。)
・・・納得いかぬぼくは、ひどい扱いと暴言・契約外業務の強要に抗議する形で、
やっと会社に「コトの真相」を打ち明け・・・
激痛の中・・・「選手交代」ということで、
その現場から正式に身を引いた。
「悔し涙」とともに・・・。