第102章:総括(20):神経痛との闘い(その3):菅谷病(その2)
「・・・あぁ、ソレ、『菅谷病』だわ。」
「えっ? すっ・・・『菅谷病』・・・ですか??」
「そう。笑っちまうような病名だけどな。」
ぼくといま話しているのは、
前々章で、
菅谷監督にツッコミを入れていた同僚で、菅谷氏と比較的、仲がいい・・・
と「思われていた」、ぼくと同年代の作業員だ。
「実はな、ここだけのハナシだけどよ、あの監督のせいで、いままでにも、ひでえ便秘で辞めてった作業員のおっちゃんがいたんさ。」
「・・・そうなんですか?」
「ああ。オレも本当は、あいつが大嫌いだからさ。ワンマンでわがままでよぉ・・・。」
(・・・そうだったのか。この人も、ぼくらとおんなじように、たーだ、カレに『合わせていただけ』だったんだな・・・。)
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
・・・やがて、解体工事が完全終了し、
長いようで短かった工事も、
ようやく終わりの日を迎えた。
菅谷監督はご機嫌で、
みんなにラーメンをおごると言い出した。
「・・・オレからのねぎらいだ。みんなで、オレのいきつけの、うめぇラーメン屋いこうぜ。なっ?」
「いや、菅谷さん。俺は、アニキを迎えにいかないと・・・。」
「そういえば、オレも今日は歯医者の予約入れてたんだった。悪いけど、コレで・・・。」
(やっぱりな。みんなして、この監督さんが嫌で嫌で仕方なかったんだ。もっとも、菅谷さんと食ったところで、逆に緊張しちまって、そんなラーメン・・・うまくなんかないもんなぁ・・・。)
「監督さん・・・ぼくも、糖尿の検診がありますから、その『お気持ち』だけ、ありがたくちょうだいします。お疲れ様でした・・・さようなら。」
「そうかよ・・・。」
ぼくも含めて、監督を除く全員が・・・
早々に、逃げるように現場を退散した。
でも菅谷さん・・・
ちょっぴり、さびしそうだったな。