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夢の国から  作者: λ
2/12

2

 帰らなければいけない場所があるわけではない。帰りを待つ家族はいないし、行方を心配されるような友達もいない。


というより、思い出せない。月並みな言い方をすれば、頭に靄がかかったように何も思い出せない。いや、靄というより雪だろうか。記憶の引き出しが降り積もった雪に覆い隠されて引き出そうにも引き出せない。引き出しがどこにあるのか、そもそもそんな引き出しがあるのか、ということすら定かではない。


知識としては、家族がいて、友達がいて、幼少期は保育園へ通い、成長して小学校に上がり、勉強して遊んで暮らすことは知っている。自分にもきっとそれがあったはずなのだ。


しかし自分の過去がまるで思い出せない。この施設に来たのはさして昔ではないはずだが、なぜかずっと前からここにいる気がするのだ。幼少期からここで暮らし、ここで成長して時を刻んできた気がするのだ。


なのに丁寧に記憶を辿ろうとすると、ここで過ごした記憶もない。この施設の外での生活も思い出せない。いつ、どんな経緯でここに連れてこられたのかということも分からない。


いや、誰かに連れてこられたのかどうかさえ、正確には分からないのだ。強いて言うのなら、今ここで、この状態でこの世界に生まれ落ちたかのようだ。

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