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第八話 ラナとメアリー

少し短めです。あと5話ほどで終わる予定です(終われるかしら…)!

最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

 ラナ・ベルモンド男爵令嬢は驚きを隠せなかった。


 今までルイーゼを目の敵にして、嫌がらせの中心的人物であったマリアがルイーゼを昼食に誘ったのだ。二人が出て行った後、クラスは大いに騒めいた。

 ラナもマリアと一緒になってルイーゼのありもしない噂を吹聴していただけに、そのマリアの行動が理解できなかった。


 疑問を解消する気持ちと、少しの好奇心もあり、マリアの後を追おうとしたラナは廊下で隣のクラスのメアリーと出くわした。ふわふわと柔らかい栗色の髪を揺らすメアリーは、以前は同じ男爵家の令嬢同士懇意にしていたのだが。


「あ、メアリー!久しぶりに一緒にお昼でもどうかしら?」

「…ああ、ラナじゃない。うふふごめんなさい。ロベルト殿下との約束があるから…」


 メアリーはラナを一瞥すると、そそくさと去って行ってしまった。その場に取り残されたラナは大きく肩を落とした。

 幼い頃からの友人であるメアリーとは、今まではよく一緒に昼食を取ったり、休日に二人で買い物に行ったりと共に過ごすことが多かった。少なくともラナはメアリーのことを何でも話せる親友だと思っていた。ロベルトとの仲が深まってからは、メアリーはラナのことはすっかり放ったらかしでロベルトにべったりだ。ラナは最近のメアリーの見下したような態度が気に食わなかった。”自分は王子に気に入られている特別な女の子”で、あんたとは違うのよと態度に滲み出ていた。


「ふん、何よ」


 ラナは小さく鼻を鳴らすと、一人寂しく食堂へと向かった。



◇◇◇


 マリアと昼食を共にした日の夜、アレンは自室でクロードと話し込んでいた。


「私が見る感じ、マリア様にはルイーゼ様への敵意は感じられませんでしたね」

「そうだね。僕もそう感じた。何だかすっかり姉さんの虜って感じだな」


 ま、その気持ちは分かるけど、とアレンはハチミツ入りのホットミルクで口内を潤す。


「それで、クラスの様子はどうだったの?」

「ええ、昼休み以降、休憩時間の度にマリア様がルイーゼ様に声をかけていたので、クラスメイトは皆何事かと騒めいていましたよ」

「そう」

「中でも一番動揺していたのは、彼女ですかね」


 クロードが差し出したのは、先日のルイーゼに関する報告書の一枚だった。


「ラナ・ベルモンド男爵令嬢ね。マリアさんの次に姉さんのことを悪く言っていたご令嬢みたいだね」


 クロードが作成した報告書の内容の要約はこうだ。



【ラナ・ベルモンド】

・男爵家の長女、歳の離れた弟がおり家族思い

・ロベルト殿下のお気に入りであるメアリーとは領地が隣接しており幼馴染

・最近メアリーの態度がそっけなく、彼女とは疎遠になっている

・婚約者はいない



「メアリーとかいうバカ王子のお気に入りと仲が良かったんだね」

「ええ、ロベルト殿下に思いを寄せる彼女の手助けのためにルイーゼ様の悪評を流したのではないかと」

「ふぅん。なのに今ではそのメアリーにおざなりな扱いを受けてるんだね」


 アレンはついでにメアリーに関する報告書にも目を通した。メアリーは進級パーティでロベルトにしなだれかかっていた令嬢だ。この女のせいで姉さんが婚約破棄されたも同然だ。思い返しただけでも腑が煮えくりかえる。



【メアリー・アドニス】

・田舎の男爵家の一人娘

・ロベルト殿下のお気に入り

・庇護欲そそる立ち居振る舞いから男性人気が高い

・ロベルト殿下以外にも数人懇意にしていた令息がいた

・男性を選ぶ際は爵位や権威を重視している模様

・よく街へ出掛けて男性にドレスや宝石をねだる姿が目撃されている



「あれ、このバカ王子のお気に入りがよく行くドレスの専門店って…」


 報告書に記載があった店名を見て、アレンは何か思いついたように口角を歪め、何やら紙にペンを走らせている。クロードはアレンの様子を見て、また何か良からぬことを考えているな…と呆れ顔だ。


「とりあえず、メアリーは後回しにして、まずはラナって女に接触しようか」


 婚約者もおらず、幼馴染のメアリーにも見捨てられた状態だ。付け入る隙はいくらでもありそうだ。

 アレンは二枚の報告書を机の上に置くと、すっかり冷えてしまったミルクをグイッと飲み干した。

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