第32話 失敗賢者は押し潰される
・失敗賢者よもやま話32
霊峰フロスランデルには――、
※続きはあとがきで!
ヤベェじゃん。勝てねぇじゃん。
「ちなみに能力詳細はこうなります」
アルカが、ステータス画面に似たものを空中に投影する。
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大魔王バァル・ゼブル
レベル:5178
ランク:-
クラス:デビルロード
HP 145637
MP 230877
筋力 13001
耐久 15330
敏捷 18885
知性 27098
器用 17115
[ ― ]
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「ありえねぇだろ……」
俺は我が目を疑った。
もうなんか、強いとか弱いとか以前に、数遊びみたいに思えて実感が湧かない。
「どうした。余の偉大さの一端に触れ、ひれ伏したくなったか、大賢者よ」
当の大魔王は余裕綽々の様子で、俺に追撃をかけることもしない。
自分が優っていると確信している。つまり俺は、明らかにナメられていた。
「旦那様……」
「大丈夫だ、アルカ。俺から離れるなよ」
俺はアルカを後ろに従えて、廃城のエントランスに戻る。
そこでは、大魔王がニヤニヤしながら仰々しく腕を組んで、俺を待っていた。
「壮健で何よりだ、大賢者よ」
「うるせぇよ……」
笑う大魔王に舌を打ち、俺は前置きなしに尋ねた。
「おまえ、何した?」
「頭の悪い問い方だな、大賢者よ。全く要領を得んぞ、そのきき方では」
悪かったな、頭が悪くて!
湧き上がる怒りを何とか堪えて、俺は大魔王に率直に尋ねた。
「神果とドレインだけで、おまえのその強さは説明できねぇ。転生が失敗したなら、戻った能力も大したモンじゃないはずだ。だから、神果を買い漁ったりしたんだろ?」
俺が指さすと、大魔王は腕組みを解いて笑みを深めた。
「前言を訂正しよう。そこに気がつくとは、存外聡いではないか」
「どうせ、ロクでもねぇことしてんだろ?」
俺は尋ねる。
こいつが何をしたのか、一つだけ心当たりがあった。当たってれば最悪だ。
「貴様がここに来るときに、山を越えたであろう?」
「山? ……霊峰フロスランデルか」
ラズブラスタが超えた、この国で一番高い山だ。
「そう、この国の最高峰。そして――、氷のエルダードラゴンの棲み処でもある!」
大魔王が高らかに告げる。クソ、やっぱりか!
「おまえ、エルダードラゴンの卵を喰いやがったな!」
「喰ったさ、喰ったとも! 最高の味だったぞ!」
全身から闇を噴き上げ、大魔王がその目を見開く。
別のエルダードラゴンの卵。ラズブラスタの一件から推測できることだ。
「だが、どうやった!? 相手はエルダードラゴンだぞ!」
「異界に落としてやったのよ。卵を得る前の余では、さすがに分が悪いのでな」
異界。
エルシオンと同じようなモン、か。
「氷皇竜フロスランデル。その卵が宿す力はまさに別格。余の腹の中で、未だに力を発し続けておるわ。余の力はさらに高まるぞ、大賢者よ!」
次の瞬間、ただでさえ薄暗い空が、真っ暗闇に染め上げられた。
「……冗談じゃねぇぞ」
俺の頬を汗が伝う。闇は、大魔王の体から漏れ出たものではなかった。
「これなるは『暗輝の指輪』。無詠唱にて黒魔法を発動する、至高の魔道具よ」
闇色に輝く右手の指輪を高く掲げて、大魔王が朗々と語る。
その背後、その頭上、その左右、その全周囲に無数の闇の武器を展開しながら。
「跡形もなく消し飛ぶがいい、大賢者。我が忌まわしき過去の古傷よ!」
大魔王が俺に向かって右手をかざす。
そして、数えきれないほどの闇の武器が、俺めがけて一斉に降り注いできた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!?」
俺は、俺とアルカを包むようにマントを翻して結界を展開。
さらには、前後上下左右斜めと、とにかく全方位に何重にも光の盾を形成する。
全力で念を込め、全霊で盾を作る。
しかし、盾は作ったそばから闇の武器に貫かれ、破壊され、消えていく。
闇の武器の威力が、さっきよりも断然高い。
武器一つを相殺するまでに、こっちが作る盾が三つは壊されていく。クソ!
「ぐ、っおッ……!?」
まずい、圧し込まれる。
多面から絶え間なく降り注ぐ闇の武器と、俺が必死に作り続ける光の盾。
かろうじて保たれている均衡が、急激に崩れかけてきている。
「ハァッハハハハハハハハハハハハ!」
楽しそうに笑いやがって、失敗魔王がよ。
クソ、遠くに爆音が聞こえた。
ラズブラスタはまだ魔像の群れと戦闘中みたいだ。救援は、期待できない。
「逃げ場はないぞ大賢者。さぁ、千々に裂かれて血肉を散らせ!」
「俺は、大賢者じゃ……、ねぇ!」
俺は苦しげに言い返すが、ダメだ。潰れる。潰される……!
「クソ、俺は……、俺は!」
絶望感が加速する中、俺はきつく歯噛みした。
これだけやってもダメなのか。楽園を手に入れても、俺はやっぱり俺のままなのか。
やりたいこともできないまま終わる、ただの失敗賢者なのか。
――いいや、まだだ!
「……まだだ、まだだ。まだだ!」
俺は、終われない。
こんなところじゃ終われない。こんなままじゃ終われない。
俺はアルカと一緒に、やりたいことをやるんだ。
極限まで追い詰められた俺の中に残ったのは、その一念だった。
「旦那様……」
アルカが、俺の服の裾をギュッと握ってくる。
こいつを守る。そして大魔王に勝つ。それを叶える手段を、俺は必死に考え続ける。
「死ねェい、大賢者!」
数千数万の闇の武器が、俺を引き裂くべく殺到する。
「旦那様ァ――――ッ!」
押し寄せる闇の波濤が、廃城のエントランスを爆砕した。
・失敗賢者よもやま話32
――山エルフと呼ばれる人々が住んでいるらしい!
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