第28話 失敗賢者は依頼を賜る
・失敗賢者よもやま話28
ルクレイド王国の王都では――、
※続きはあとがきで!
ゆるいツラして何言ってんだこいつ、と思った。
「ちなみに依頼主は国王陛下ね」
いや、別に依頼主とか今は聞いてな――、国 王 陛 下 ァ !!?
「何でッ!?」
「実は陛下の寵姫が拙者の妹でね? そのルートで手紙送ったのさ~」
国王陛下の愛妾にエルフがいるとは聞いてたけど、まさかの妹!?
「先週出たお話、全部余すところなく陛下にぶっちゃけちゃった♪」
「根拠のない推測だって言っただろうがよォォォォォ!」
テヘペロじゃねぇんだわ、テヘペロじゃ!
「……で?」
俺は、ピエトロに『さっさと全部吐け』という意思表示をする。
「うん、ぶっちゃけたらね、陛下から返信があって『ヤれ』って」
「――――。単刀直入すぎて、一瞬時間が止まったわ」
俺の質問も簡潔だったけど、それに対する答えも簡潔極まってんな……。
「まぁ、どうやら陛下も侯爵を監視してたみたいでね~」
「監視? 何でまた?」
神果の買い漁りが大逆罪に繋がるワケでもなし、何か別の要因がありそうだ。
「簡単に言うと、ゼルバール侯爵、隣国と内通の疑義あり、らしいよ~」
「まだ話デカくなるんですかぁ!?」
もう、ここに来て以来驚きっぱなしなんですけど? おなか一杯なんですけど?
「つまり侯爵は、この国でも屈指の大貴族で、国家の裏切り者で、禁断の黒魔法使いで、大魔王の生まれ変わりの可能性が極めて高いっていう――、超絶危険分子?」
「……生かしておけるワケがない」
こうして羅列されると、陛下が『ヤれ』ってなる理由を魂で理解できる。
「で、それを俺に依頼ってことですか?」
「そう。これもぶっちゃけるけど、君以外に頼める相手がいない」
何か、メチャクチャ評価されているのは感じる。感じるが、
「……本当に、俺以外にいないんすか?」
この国はオルダームを中心として、大陸でも有数の冒険者大国だ。
有能な冒険者なんて、探せば他にいくらでもいるだろうに(俺の実家は除く)。
「いない」
だが、ピエトロはあっさりと断言した。
「有能な冒険者は他にもいる。信用できる冒険者もいる。でも、有能で、信用できて、さらに大魔王を討てそうな冒険者は、君以外にはいないと思ってるよ」
「買いかぶりすぎでしょ。失敗賢者ですよ、俺」
さすがにむずがゆくなって、俺はそんなことを言ってしまう。
「だからだよ」
「だから?」
「前に言ったでしょ、拙者らはひたむきにがんばる冒険者を見守ってる、って。レント君はね、ギリギリ間に合ってくれたんだよ」
「ギリギリ、ですか?」
「そう。ギルドも見放しかけていた瀬戸際のタイミングで、君は花開いてくれた。実力面の不安だけが、君への不信の材料だったんだよ。わかるだろ?」
その言葉に、俺はすぐに反応できなかった。
今になって初めて知った。俺の十数年を、ちゃんと見てくれていた人がいた。
ピエトロに告げられたその事実に、胸の奥がジワリと熱くなる。
俺は、この人とはまだ出会って間もないと思っていた。
でもギルド長は、ずっと前から本当の意味で、俺を見守ってくれていたのだ。
「僕は、君にしか任せられないと思ってる。……受けてくれるかな?」
「旦那様?」
ピエトロとアルカが、俺を見る。
答えなど決まっている。ここまで言われて、断れるはずがない。
「わかりました。やりますよ」
俺が返すと、ピエトロもにっこりと笑ってうなずく。
「でもこれ勅命だから断れないんだけどね~」
「雰囲気作った本人がブチ壊しにするのやめてくれません?」
胸の奥に感じてた感動の熱が一瞬で冷めたわ!
「ちなみに報酬は『陛下が何でも一つ言うことを聞いてくれる権利』だって」
「ん? 今、何でもって……」
「限度、あるからね?」
あ、はい。すいません。
「もちろんお金でもいいけど、冒険者の中にはお金以外を望む人も一定数いるからね、それも含めて考えての報酬、らしいよ。提案者は拙者だけど」
「らしいよ、とは一体……」
金は欲しいけど、エルシオンの神果を一個売ればそれで十分だしなぁ。
元々、断れない依頼だし、それ以前にゴネる必要ないだろ。こんな報酬じゃ。
「で、俺は何をすればいいんですか?」
「かなり大変なこと」
それは知ってる。その大変なことの中身を教えろと言うておるのだ。
「詳細を説明すると、ここから南西にある隣国との国境付近に廃城があって、そこで侯爵が隣国の代表と何某かの交渉をするらしいから、そこに突撃して侯爵をヤッちゃって、ついでに隣国との内通の証拠も見つけてほしいかなって。ちなみに制限時間は今日から二日間ね。三日目の夜明けに、王都の騎士団が踏み込む手はずになってるから、それまでにお願いね。そうしないと最悪の場合、隣国との戦争に突入しちゃうかもだから。あと目的の廃城は馬で向かっても、ここから一日半以上かかるよ~」
「……かなり大変ですね」
俺は真顔になった。とてつもねぇ超絶高難度依頼だ。
制限時間つきで、勝利条件が厳しくて、失敗した場合のペナルティがデカすぎる。
「侯爵が八十超えてるクセに小癪でね~、影武者とか使って、なかなか尻尾を掴ませないんだよ。隙を見せることもほとんどないらしくてさ~」
「この廃城での打ち合わせが、今のところ唯一見せた隙、ですか」
「そう。今日から数日は、その廃城に滞在してるはずだから」
「この機を逃すわけにはいかない、と」
失敗できない依頼なのは知ってたけど、こりゃプレッシャーだわ。
「ふ~……」
俺は一度息をついて、天井を仰ぎ見た。腹、括るか。
「すぐに出発した方がよさそうっすね」
「ああ、そうしてもらえるかな。馬ならこっちですでに用意してるから~」
「それには及びませんよ」
ギルド長に、俺はかぶりを振る。
珍しくピエトロがキョトンとなるが、現地までのアシについてはあてがある。
「馬で一日半かかる場所だよ? そこまで、馬以外で行くっていうのかい?」
「ええ。大丈夫です。もっと早く行ける手段があるんで」
「そうなんだ? ちなみに、どうやって行くんだい?」
問われた俺は、軽く右手で上を指さした。
「空から行きます」
ピエトロの「え!」という驚きが、ちょっとだけ面白かった。
・失敗賢者よもやま話28
――ワーヴェル家が幅を利かせている!
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