第27話 失敗賢者は仮説を立てる
・失敗賢者よもやま話27
この世界での賢者の称号は――、
※続きはあとがきで!
部屋の中が、一気に静まり返った。
「間違いありません。術者は大魔王です」
アルカがそれを繰り返す。
俺も、そしてピエトロギルド長も、揃って何も言えずにいる。
ギルド長などは、ゆらゆらするのをやめて真顔になってるくらいだ。
それだけ、アルカの言葉が衝撃的だったんだろうが――、
「間違い、ないんだね?」
「はい。間違いありません。アルカの機能は正常です」
ピエトロの念押しに、アルカはみたび断言するのだった。
「大魔王は生きてるってことかな?」
「アルカは、魔力波形を照合しただけですので、わかりかねます」
さすがに大魔王が生きてるかは不明、か。そりゃそうだろう。
ピエトロがテーブルに肘をついて、苦笑しながら息をつく。
「参ったね。話の規模が、一気に大きくなっちゃったよ……」
まぁ、苦笑するのもわかる。
さっきまででさえ国家規模の話だったのが、今や世界規模にまで膨れ上がった。
そりゃあ参るよ。苦笑もするよ。どうすればいいかわからんモン。
「ちょいと落ち着きましょう、ギルド長」
「そうだね。今のところ、証拠と呼べるものは何もないしね」
とは言うが、侯爵と大魔王が繋がっているのは確実だろう。
あの魔像とガルトの間にある因果を、俺はしっかり認識していた。
そこからも、侯爵と大魔王の繋がりを見てとることができる。
ただし、今のところ両者の因果について『因果鑑定』は機能していない。
「大魔王……、大魔王か」
俺は腕を組んで、大魔王の伝承について考え込む。
大魔王は魔族の王で、無尽蔵な魔力と大賢者に比肩する魔法技術を持つとされ――、
「……んん?」
何だ。
今、何か妙な引っかかりを覚えたぞ。
「どうかなさいましたか、旦那様?」
「いや、ちょっと……」
俺は再び思索を始める。何だ、俺は何に引っかかっている。
今考えたことのどこかに、確かに違和感があったんだ。それはどこだ。思い出せ。
ゼルバール侯爵は神果を買い漁り、エルダードラゴンの卵に手を出した。
一方で『巨神魔像』を造り出した術者は、大賢者の宿敵とされる大魔王で……。
「…………そう、か」
俺は、違和感の正体に行き着いた。
そしてそこから、一つの可能性が浮かび上がり、一つの推論が組み立てられる。
「ギルド長、こいつは根拠のない推論ですが……」
そう前置きすると、ピエトロは「いいよ」とうなずき、先を促してくる。
俺は、それに従って思いついた推測を口にする。
「多分、ゼルバール侯爵は大魔王の生まれ変わりです」
アルカもピエトロが、揃って目を見開いた。
「そうか、転生魔法!」
「大魔王は、大賢者に匹敵する魔法技術を持つという話、アルカも知っています!」
本当に大賢者に比肩するというなら、転生魔法の構築も可能だろう。
そしておそらく、その転生魔法は――、
「大賢者同様、転生は失敗したんだと思います。それでもっと早く戻るはずだった記憶と能力は八十歳を超えてようやく戻り、しかもそれも不完全だった、と、すれば――」
「急に神果を買い漁り始めたのも、失った分の能力を補うため、か~」
ピエトロも納得してうなずく。おそらくは卵の強奪も同じ理由だろう。
エルダードラゴンの卵なんて神果より強力な魔力リソースだからな。
しかし、これはあくまで推論。
現状、確かな根拠といえるものは何一つとしてない。
「でも、諸々の状況考えると、納得しかないんだよね~」
「俺もそう思いますけど。どうすりゃいいんですかね、これ?」
実は大魔王は復活していた。しかも、この国屈指の大貴族として。
とんでもねぇ話だ。が、俺にできることがあるかと問われれば、何もない。
大貴族とか、相手が悪すぎる。
俺は所詮、一介の冒険者に過ぎないのだ。
「う~ん、そうだねぇ~」
ピエトロは腕を組んだまま、深く考え続けた。
相手が相手だから慎重にならざるを得ないが、あまり時間もない気がする。
やがて、ずっと考え続けていたピエトロが顔をあげた。
「レント君、一週間後にまたここに来てくれないかな。同じ時間に」
「はぁ……。別にいいっすけど、何か思いついたんですか?」
「それは内緒。一週間後に改めてお話しするよ。どちらになるにせよ、ね」
どちらにって、何だ。
絶対何か思いついてるだろ、このギルド長。
「あ、それとここでの話は――」
「わかってますよ。誰に言えるってんですか、こんな話」
他言無用に決まってんだろ! 下手に話せば頭おかしい子扱いされるわ!
今日の話し合いは、これで終わり。
俺とアルカは宿に戻った。
それからの一週間は、特に何事もなく過ぎ去っていった。
いや、あった。一つだけ。
ゴルデンがオルダームから姿を消した。
リーダーがいなくなった『金色』は、ギルドによって解散の決定が下された。
それを聞いたときは、さすがに何とも言えない気持ちになったな。
ま、だからって『金色』を引き継ごうなんて、俺は微塵も思わなかったけどな。
で、一週間後。
前回と同じギルド内の個室にて。
「…………は?」
部屋を訪れた俺とアルカに、ピエトロが言ってきたこと。
その内容があんまりにもあんまりで、俺は口をあんぐり開けて聞き返してしまった。
「だからね、レント君に特別指名依頼をお願いしたいっていうお話」
「いや、そりゃわかりましたけど……。その依頼ってのが?」
「うん」
ピエトロが朗らかな笑みのまま、もう一度それを繰り返した。
「侯爵、暗殺してきて」
・失敗賢者よもやま話27
――黒魔法以外の五系統のうち三系統以上を習得すると得られる!
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