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第12話 失敗賢者は専用武器を手に入れる

・失敗賢者よもやま話12

 リュリの手作りの武器は――、


※続きはあとがきで!


 ヤベェ。

 四匹目仕留めたら、槍が逝った。


 やり方は一匹目から変えていない。

 だが四匹目の脳みそをブチ貫いたとき、槍が真ん中からくの字に折れ曲がった。


「……あれ、使い方が悪すぎたか?」


 グンニャリ曲がった槍を持ったまま、俺は苦い顔をする。


「いえ、これは単純に、槍の強度が足りていないだけだと思います」


 四匹目のドラゴンを転送しながら、アルカがそう分析する。マジかよ。


「ドラゴンに対してではなく、旦那様に対して槍が脆弱だったのではないかと」

「俺に対して、か……。嬉しいような、でも複雑だな、これは」


 俺は軽く頬を掻く。

 それってつまり、俺が今の自分の力を使いこなせてないってことだよなぁ。

 さて、どうしたもんか。この方法が一番ドラゴンを傷つけずに済むんだけど。


 槍以外の武器も支給してもらっちゃいるが、損傷が大きくなるのは美味くない。

 どうせなら、あのチビ棟梁に最高の状態で素材を届けたいからなぁ。


「う~ん……」

「旦那様、旦那様」


 俺は腕を組んで悩んでいると、アルカが俺の袖をクイクイ引っ張ってくる。


「あの、これは使えませんでしょうか」


 そう言って、彼女が俺に見せてきたのは、鈍い銀色の指輪だった。


「……こいつは?」

「エルシオンの超究極大賢者博物館の収蔵品の一つです」


 ちょう、きゅうきょく……、何?


「大賢者が、自分の作品を見て悦に浸るために建造した、自分自身専用博物館です」

「俺の前世は頭いいはずだけどバカだな」


 どんだけ承認欲求と自己愛を拗らせたら、そんな恥ずかしいモンを建てられるんだ。

 あれ、そういえば――、


「俺の前世のこと、様づけで呼ばないんだな」


 前は、ちゃんと様をつけて呼んでたのに。

 俺がそれを指摘すると、アルカはちょっと頬を赤くして、身を縮こまらせる。


「わ、私の今のマスターは、旦那様だけですから。……ダメ、ですか?」


 ええい、その、ちょっと不安げな上目遣いをやめろ。

 抱きしめたくなるだろ! あと、言ってることは大いに許す!


「ダメじゃない。すげぇ嬉しいよ、アルカ」

「はい! 旦那様に喜んでいただけて、アルカもいっぱい嬉しいです!」


 アルカが、本心から嬉しそうにピョンと跳ねる。

 薄いシャツ一枚でそれをやられると、こう彼女の胸が、上から下にたぷん、とね。


「はい、話戻そう! で、その指輪は?」


 イケナイ気分になる前に俺が力業で話を進めると、アルカもハッとする。


「これは大賢者が創造した魔法道具の一つで『光魔の指輪』といいます」


 俺はアルカから指輪を受け取るが、小さいな。はめられないかも。

 と、思った次の瞬間、指輪の大きさが変わる。サイズ調整機能付きかぁ。


「左手の人差し指にはめてみてください」

「こうか?」


 言われた通り、俺は指輪を左手の人差し指にはめてみた。


「次に、何か武器を一つ、念じてみてください」


 念じる、ね。

 地面に転がした壊れた槍を見下ろして、俺は壊れる前のそれを想像する。

 ヴン、と音がして、俺の目の前に青白い光が瞬いた。


「うぉ!?」


 驚くと、何かの形を取りかけていた光は霧散し、散っていく。


「……な、何だ、今の?」

「今のは、光の武器が発生しかけていたんです」

「光の、武器……? あ、もしかして――」


 半ば察した俺に、アルカもうなずく。


「そうです。その『光魔の指輪』は、使用者の魔力を対価として、念じた通りの形状の光の武器を形成できるのです。例えば今なら、旦那様が念じた武器ですね」

「じゃあ……」


 俺は、改めてイメージを描き、念じてみる。

 するとまたヴヴ、と軽く震えるような音が鳴って、俺の右手に光の剣が発生する。

 光の剣は、次に槍に形を変え、さらに斧に、そこから短剣に変わっていく。


「うわ、便利……」

「威力も、試してみたらいかがでしょうか」

「うん。そうしてみるわ」


 俺は、近くに転がっている黒い大岩に目を付けた。

 この辺りの岩は、ドラゴンのブレスにも耐えるほどの強度を誇っている。

 右手に形成した光の剣を、俺は一気呵成に大岩に叩きつけた。


「てりゃ!」


 叫びののち、激突音くらいはあるかと思ったが、そんなものはなかった。

 少しも抵抗も覚えずに、光の剣は上から下にスルリと振り抜かれる。

 そして、一拍の間を置いて、大岩は剣の軌道の通りに斬り裂かれて転がった。


「御見事です、旦那様!」


 アルカが拍手を送ってくれるが、いや、ちょっと尋常じゃないですよ、こいつは。

 斬った大岩の断面がツルッツルしてる。磨くまでもなく鏡に使えそう。


「『光魔の指輪』が形成する武器の威力は、使用者の魔力の強さに比例します。つまりそれだけ旦那様の魔力が強いということですね。アルカも鼻が高いです!」

「あー、うん。ありがと……」


 驚きすぎて感情がなかなか戻ってこず、反応が淡泊になる俺であった。


「旦那様は複数の武器を扱えるとのことでしたので、これでしたら相性が良いのではないかと思い、選ばせていただきました。お気に召したのでしたら、何よりです」

「ああ。本当に使いやすいよ、ありがとうな。アルカ!」


 俺がアルカを撫でると、彼女ははにかんで「エヘヘ」と笑った。可愛い。

 さて、こうして壊れない武器も手に入れたことだし、張り切っていきますか!


 ――と、そんな感じで、俺はリュリからの依頼を達成したのだった。


 え? 描写がない?

 だって、あとはもうジャンプして槍で脳みそブスーの繰り返しでしかないし……。

 ちょっとやりすぎて、仕留めたドラゴンの数が百を超えてしまった。


 けど、ま、いいでしょ。

・失敗賢者よもやま話12

 ――既製品としては最高級で中堅冒険者には垂涎の的!

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