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第13話 昔語り3

「シェラ姫、いえ、リン=レーゼターク。

 リン=ガーレンディラは、そなたの年に宮廷に嫁がれ、そして無理矢理、女として開かれておしまいになられた。

 それで、このたびの婚儀について、リン=レーゼタークの身柄を十六才になるまで女子修道院預かりにすることを条件となさった。

 その事と、歴史の改ざんは全く無関係であるわけではない。

 心の傷は一生癒えぬ。

 その事については、妾も深く同情しておる。

 妾ばかりではなく、当時の宮廷にあった者たちの誰もが、まだいたいけな少女であられたリン=ガーレンディラの身の上を不憫に思わなかったものはおらぬ。

 その時にとりわけ深く同情していたダール家の公爵夫人がリン=ガーレンディラの茶席夫人となられてから、必然的にダール家が王妃様を支えるお役目を担うことになった。

 元々、ダール家とルーサザン家は反目する家柄でな、ルーサザン家とて、一時は七歳の当主を戴くに及んで、その宮廷内での権勢は一時は霞んでしまったが、グリーダ陛下のご即位と共に、あの退廃的なご気性の陛下は、絶世の美少年となられたルーサザン公爵に特別のご待遇を。ご即位とともに再びランディラ公となられたグラーノ殿下のご学友として、宮廷に職をお与えになられ、遂には、最愛の妹王女との婚礼までお許しに。

 結果、リン=ガーレンディラはダール公爵とさらに結びつきを強くなさり、フェイレンリーリア様のご婚礼にまつわるファーマムール王家との間に生じた確執の責任をとってルーサザン公爵家が宮廷を去ってしまわれた。

 結果、グリーダ陛下の亡き後のラーフェドラス宮廷は、摂政となられたミスチア様の権勢を背景に、ダール家の独断上に等しき状態となった。

 かろうじて、陛下のご崩御の前に、エイオラ公爵家より次期王妃をとの女子修道会より選定の沙汰が下り、エイオラ公爵家の一族も、一家言を許される立場に残ることがかなったが。

 だが、むろん、政治と個人への同情とは無縁であるな。そう在らねばならぬ。

 だが、それを度し難いのが人の道。

 王妃としてのミスチアに同情した者たちがダール家に組みし、その後も宮廷内での権力の中心にあるとなれば、多少の悪政には目をつぶり、そのまま主流の座に居続けるが宮廷人としての賢い生き方。

 リン=ガーレンディラのもちろん、自分の行状は心得ていよう。だが、あれは毒を喰らい、皿まで嘗め尽くす覚悟でおいでなのだろう。

 ただ一つの事を守りたいがゆえに。

 人の命には限りがあり、まともに時が過ぎゆくのならば、自分の死後までその事実に蓋をしておくことは叶わぬのにな」

 話の間に冷めたお茶を、女官が、新しいセットと取り替えてゆく。

「お母様はお母様なりに、お兄様のことを愛しておいでなのですね。

 お兄様はお優しい。決して暴君となられる方ではありませんのに」

 シェラがそう呟いた。

「陛下は、摂政権の返上をお求めになる所存です。この度の婚礼の式が終わり次第、そのように説得なさる覚悟です。

 王太后陛下は、国王陛下のご説得に応じられると思われますか」

 ロイエンライラの問いに、大公妃は云った。

「国王陛下が真実をお知りになれば、もう守るべきものが無くなりましょうから、宮廷の権勢を握る理由が無くなります」

 それが大公妃がこの席でその話題を取り上げた理由なのだろう。

 ロイエンライラはそう解釈した。

 

 それにしても、とロイエンライラは考える。

 摂政権を取り上げたとして、ダール家がこのまま政治の中核にあれば何も変わりはしないだろう。

 カーレルは王権を回復しつつある、とはいえ、今最も信用して政治力の基盤として頼りにするのが王妃の一族である事は、王太后派と大した違いはない。

 ダール公爵家と対抗してゆくべき、エイオラ公爵家の現状はといえば、当主であるロイエンライラの父は今病床にあり、議席は筆頭従家によって支えられている。

 要は、修道会を味方にし、建立された王国協会との関係を密にして、修道会の権威によって勢力を調えてゆく道が妥当であろうが、それは一朝一夕にして確率できるものではないだろう。

 更迭された貴族の領地が、うまく権勢を誇る貴族の領土に組み入れられたら幸いだが、管理にかかる費用と領地からの収入が見合わぬ星の場合は見捨てられるしかない。本来、各ドーム惑星は領主から生産のための原材料を調達してもらわないと生産ができない。

 そもそも収入のあがる領地は手放されぬし、ファーマムール王国との国境付近の緊張がある限り、現状の最低限の軍事費を削減する事も叶わず、利潤の上がらないドーム惑星に対するメンテナンスの補助金も思うように捻出できない。

 国王カーレルは、その点に対して大きく心を痛めている。

 できるだけ早く国威を回復し、秩序と経済を回復すること。

 焦る気持ちはロイエンライラにも強くのしかかっている。万事、上手く行きますようにと、今はそう祈るしかない。


 そしてロイエンライラは、宮廷の改竄された真実を自分の目で確かめるべく、シェラ王女に助力を申し出るのだった。

【作者コメント】

長らく休止の間に少し、書き方が変わりました。

1ページ分の分量を減らしていきます。

なので、ちょっと話数が増えます。


それから、もう少しネットノベルとして読みやすい形に変化させていきたいと思います。

投下済みの分の修正は当分しないと思いますが、今後とも、どうぞよろしくお願いします。

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