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許された殺人者  作者: 黄崎うい
一章 青
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  -6

 灰色の長いローツインテールの髪を揺らして華蓮は青の前まで歩いてきた。


『私は鼓内(こうち) 華蓮。幹人の彼女、よろしくね』


 意外に優しく青に笑顔を向けて華蓮は言った。近くまで来たのに華蓮だけは何故か普通の人のような雰囲気を纏っている。手を出されれば握手もできそうだ。


『そこの男の子は織中 緑。そこのおっさんの息子、死んだときにはもうちょっと小さかったらしいよ』


 華蓮は同級生に話すように軽いノリで青に話しかける。不自然にならないようにゆっくり少しずつ距離を詰めながら話す。


「……」


『それ以上近づくな。青ちゃんが怖がってるだろ』


 かなり近くまで寄ってきた華蓮に青が眉を寄せて遠ざかろうとすると、二人の間に空が入って華蓮の額に自分の額をぶつけ、低く響かない声で言った。


『気持ちもわかるけどさ、上倉くん少し黙っててくれないかなぁ。私は貴方の妹さんが不安にならないように説明してあげて、仲良くしたいだけ。友達がいなくていいの? 』


『……青ちゃん、大丈夫? 』


 華蓮に言っていた時とはだいぶ違うよく響く少し高めの声で優しく空は言った。心配そうに眉を寄せた空の顔を懐かしいと思いながら青は見た。


「大丈夫、だから、私このまま目が覚めるのや出し、兄貴黙ってて」


『わかった。無理しないでね』


 青が平気だと言うと頭を撫でて空は青の後ろの方に消えていった。何故か触れられたところが暖かい気がした。


『私たち存在感がないでしょ? あんまり。私は普通の人っぽいって言われるけどさ。まあ、後半に自己紹介したのは全員死人なの。今私以外は二人一組みたいに近くにいるけど、死んでない方は殺した方。死んだ方は許した方。わかりにくかったら後でカグに聞いて。私こういうの好きじゃないの』


 華蓮は自分を指差したり青を指差したり周りを指して言った。説明しようとした自分でもよくわからなくなってきたのか途中で諦めた顔になりながら説明をやめた。


「華蓮、疲れてるなら休んでください。能力使って大変だったはずです」


『幹人が言うならそうするよ。じゃあまた明日ね、上倉さん』


 幹人にそう言われて華蓮は最初からそこにいなかったように消えた。そして、カグラが青の顔をじっと見ていることに気が付き、青は後ろに跳ね上がった。


「さて、もう遅い。どうせ今日は帰っても一人なんだろ? 夕飯くらい食べていくと良いさ。棧」


 カグラが立ち上がってそう言うと、青から見て右側にある扉が開いて奥からバイキング形式の料理を棧が運んできた。


「俺たち夕飯買ってきたんだけど」


「青がお客様である間に一度くらいパーティーしておきたいだろ? それはお前が明日の朝にでも食え」


 料理を見た陸がカグラに文句を言うつもりで言ったが、それをカグラは予測していたかのように返した。緑が持っていたスケッチブックにクレヨンで『パーティー』と歪んだ線で書いて陸に楽しそうに見せた。それを見て陸もため息をついて諦めた。パーティーは嫌いではないらしい。


「さ、青も好きなのを取って食べなさい。心配しなくても金を要求したりなんかしないさ」


「……は、はぁ……」


 空が後ろで睨んでいる様な気がするが、青はカグラに渡された皿を持って棧の方に向かう。


「自己紹介が遅れました。カグラ様の運転手兼料理人兼家事代行などなどやっております、棧 英と申します。お好きなようにお呼びください、上倉様」


 小柄な青ではかなり見上げなければならないほど大柄で強面の男は自己紹介をした。職業なのかはわからないが、カグラの身の回りのことならば何でも一人でやっている器用なやつだ。


「あ、よろしくお願いします」


 青はまだ夢だと思っているが、目の前に広がる料理はミニハンバーグやペペロンチーノ、いなり寿司など青の好物ばかりでとりあえず食べても良いだろうと手を伸ばさずにはいられなかった。


「カグラ……さんは酢ダコ好きなんですね」


「カグラで構わんよ。それに無理して敬語を使うこともない。酢ダコは好きだが皆そんな目で見られるようなことか? 」


 酢ダコをモニュモニュと噛んでいるカグラに青が少しは話しておいた方がいいかと話しかけると、カグラは飲み込んでから答えた。その青の目が意外なものを見る目で周りにも初めはそんな目をされたなと思い出してカグラは言う。青はただ将来酒飲みになりそうだなと思っただけだったが。


「たこ焼きも好きだぞ」


 タコが好きなだけだ。

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