竜と龍
ようこそ知恵の塔へ。みんな大好きエールベンだよ。今回は竜と龍について語って行こう。
この二つ、読み方は当然両方とも『りゅう』なんだけど、こっちの世界では全く別の生き物のことを指すんだ。
ではまず竜の方から。
竜は魔獣の一種、というより魔獣の種族名のことだね。所謂、西洋の竜、ドラゴン、そう言ったものを想像して貰えばいいと思う。
かっこいい表現をすれば、最高クラスの硬さを持つ鱗、万物を噛み砕く牙、圧倒的な攻撃力を持つ息、それらを併せ持った世界最高クラスの生物。
ま、端的に言ってしまえば翼の生えたトカゲだね。
あぁ、種族名と言ったからには、勿論、竜にもいくつか種類がある。例えば火を噴く火竜。例えば全体的に能力の低い劣等竜。竜の中で唯一飛ぶことの出来ない地竜。他にも様々だ。
だが竜は一貫してとても強い。竜の中でも最も弱いとされている劣等竜でさえ平均して第五級レベルはあるというのだから、その強さがよく分かることだろう。
あぁ、もっと具体的に言えばベテランの冒険者がパーティーを組んで、初めて倒せる可能性が出てくるくらいの強さってことだよ。
そのうえ竜は知能も高いと来た。劣等竜なんかは知能も低いから本当に翼の生えたトカゲと言った感じだけど、高位の竜であれば人の言語を理解し、魔術を扱う者なんかも存在するね。
更に竜は長寿だからね。その深い知識と圧倒的な力によって神として崇められている所も少なくない。
特に最高位の竜は「真竜」といって三大魔獣の一角に数えられている。
真竜は、とても誇り高く、大きな力を持ち、優れた頭脳を持つ。正に完璧な生き物だ。その種族特性は『竜体』。
文字通り竜の身体、そのものが種族特性だと考えられるほど、その身体は完璧なものだ。
その翼が一度はためけば周囲を吹き飛ばし、その爪が一薙ぎすれば生物はリンチへと変わる。一度、息を吐こうものなら国が亡びると言われているくらいだ。
ただその身体を持つというだけで九尾と同列の三大種族に数えられているんだ。その異常さが分かるものだろう。
そして真竜はその心の気高さもまた有名だ。
「竜は竜であるが為に竜なのだ。」
この世界で有名な諺だ。意味としては、自分は自分なのだから他人を妬まず羨まず、自分らしく生きなさい。という意味だ。
このような諺が出来るほどに竜という生き物はとても気高い。その崇高さはある種人々の憧れにすらなる程だ。
だけど一方で恐怖の象徴でもある。
人間がいくら竜を崇め、憧れた所で竜にとってみれば人間はそこらの魔物、魔獣となんら変わりの無い餌だ。
更に言えば他の魔獣であれば人間を相手にするのは割りに合わないと感じ、避けるものだけど、竜には関係ない。
だから気まぐれに人里に現れては、人を喰っていく竜は、人間にとって最も警戒しなければいけない魔獣とも言える。
また【竜災】は『十の災厄』の中でも最凶の存在だ。
え?『十の災厄』がわからない、って?そうだな。詳しくはまた後日語るけど触りだけ話していこうか。
『十の災厄』って言うのは、世界の十個存在する人間には逆立ちしたって解決出来ない災害のことだよ。
そして【竜災】、個体名称「黒竜 ラーグアンデ」と呼ばれる竜は特に凶悪。この竜に滅ばされた国は数知れないと言われているんだ。
「黒竜 ラーグアンデ」。全身を黒い鱗で覆われた最凶の竜。奴に言葉は通じず、奴に理屈は通じず、遭ったら最後、奴の気まぐれを祈るしかない。
・・・・私から言わせれば彼女ほど哀れな竜はいないがな。
おっとつい愚痴が出てしまったね。話を続けようか。
あぁ、でも竜の中でも力の低い種は人間の役に立っている者もいるよ。そういった種は卵から育てると、人間によく懐いてくれるんだ。
だから多くの国には飛竜騎士団っていう竜に乗って空を駆ける騎士団があるし、地竜は馬なんかよりもよっぽど力があるから竜車としてよく利用されているんだ。
まぁ、竜を育てるのは専門の知識としっかりとした設備と、そして何より運と相性が大事になって来るから飛竜騎士団も竜車もあまり数は多くないけどね。
それに知能が高い竜の中には稀に人間に助言や力を貸してくれる個体もいて、意外に竜には多く助けられている部分もあるんだ。
この世界の英雄譚とかでは主人公の英雄が竜に力と知恵を貰うのは、テンプレのようなものになるくらいだ。
更には、さっき言ったと思うけど辺境の地なんかでは竜を神様として崇めている地域もあるんだけど、そういうところでは魔物や魔獣の被害から竜に守ってもらう代わりに供物を納めるなどして、共存関係が成り立っている場所もあるくらいなんだ。
そもそも竜が悪か善か、なんて語るだけ無駄なことだ。人間のちっぽけな倫理観なんて竜には関係の無いことだから。そこは竜に限らず三大魔獣全てに言えることだけどね。
さて竜について分かって来たところで今度は龍について話していこうか。
竜が空飛ぶ羽根つきトカゲなら、龍は空飛ぶ羽無し蛇だ。地球の中国や日本で言う龍を想像してくれればいいと思う。
・・・残念ながら龍について話せることは多くなさそうだ。そもそもの話が龍が何かなのかは理解している存在はこの世界にもほとんどいない。
当然「知恵の塔」の主である私に知らないことなんて存在しないけど、それを君に伝えることが出来るかは、また別の話だ。一応、この場で私が君に教えられるのは世間一般の理解でしか無いからね。
そもそも私は・・・・いや、これ以上は野暮か。
話を戻そう。
龍についてだったね。龍の正体はともかく、一般的には龍っていうのは幻獣の一体だ。
幻獣っていうのは、発見例の極端に低い存在のことだ。それが魔物なのか魔獣なのかも分からず、そもそも本当に存在するのかも分からない。
地球で言うネッシーやツチノコのようなものだね。ただこの世界は地球と違って、本当の神秘が存在する世界だ。そういう存在が本当にいる可能性は十分にある。
特に龍は幻獣の中でも特別な存在だ。龍の発見例は確かに少ない。しかし、その存在は地域の伝承に多く存在が残されているんだ。
この世界にも原始時代のようなものはある。まだ人が広く繋がっていなかった時代だ。そう繋がっていなかった筈なのだ。なのに龍の伝承と信仰は世界中のあちこちで残っている。
姿形が同じ存在が全く別の場所で発見されたというのは、そんなに珍しい話では無い。不思議なのは「龍」という呼称が全く同じことだ。使用している言語が別の場所になって尚、「龍」という単語だけは何処へ行っても同じなのだ。
だから多くの考古学者は龍というのは太古に存在した生物、当時、自らを「龍」と自称していた。しかし今は絶滅した、または絶滅に瀕している生物なのでは無いかと考えられているんだ。
龍が存在しているという一番の証拠はやはり龍人種だろう。
龍人種は人類種の一つで高い身体能力、莫大な魔力、長大な寿命を持つ。数が少ないことを除けば、人類種の中で最も優れた種族と言っても過言じゃない。
龍人種の特徴は身体の何処かに生える鱗だ。これは逆鱗と言われていて龍人種、唯一の弱点といえる。
その龍人種は昔から龍という存在を信仰していて、龍から賜ったという物品をいくつも持っているらしい。その証拠を他種族に見せることは絶対にしないから結局龍が存在するかどうかは分からないままだけどね。
あと龍と言えば『十の災厄』の一つ【命災】青龍の名前も有名だね。
青龍は鮮やかな青い鱗に覆われた龍で、ありとあらゆる『命』を操る存在だと言われているんだ。
とは言っても、本当かどうかは分からない。【竜災】もそうだけど『十の災厄』に出会って生きている者はほとんどいないからだ。
【竜災】の方はまだ生存者もいるが、【命災】含め他の『災厄』もいくつかは一切、生存者を残さない。だから能力も、外見すら、確かじゃないんだ。
だから青龍が本当に龍なのかも実はよく分かっていないんだ。本当に、一体誰が名前を付けたのだろうね。
龍について今の私が話せるのは・・・・こんな所が限界かな。
竜と龍のことは分かってくれたかな?今日はここまでだ。
では皆さんが真理に至ることを願っているよ。さようなら。
おっと後書きにすまないね。私の話に対する質問、指摘はいくらでも歓迎するよ。正直な話、話忘れや間違いがある可能性は十分にあるからね。
勿論、普通の感想も大歓迎だ。よろしくね。