能力と固有能力
ようこそ知恵の塔へ。みんな大好きエールベンだよ。今回は能力と固有能力について語って行こうと思う。
まず、能力についてから語ろうか。この世界においては単純に能力と呼称される力は地球風に言い直せば超能力に当たる。まぁ、これに関しては固有能力も同じだね。
さて、ではその超能力、もとい能力はこの世界の人間が大体5歳になった時点で使えるようになるんだ。とは言っても誰も彼もが能力を得られるわけじゃない。せいぜい全人口の60%程度が能力を習得するんだ。
この60%という確率がなかなか絶妙でね。全員が使えないわけじゃない、だからといって使える人が特別多いわけでもない。さらにいえば能力の発症は現在、完全にランダムとされていてね。親が強力な能力を持っているからと言って子供も能力を持つわけじゃないし、逆になんの力も持たない親から強い能力を持った子供が生まれることもある。おかげで能力を持つ人が能力を持たない人を差別したりと言ったことは、少なくとも社会的には起こってないんだ。ま、個人間のことは別の問題だけどね。
また、さっきは能力のことを超能力と言ったりもしたけど実際、実用に耐えるほどの強力な能力はほとんどないんだ。たとえば「足が速くなる能力」を持つ人がいたとしよう。ただこの「足が速くなる」というのは、本人の筋力に対して足を速くするという能力であって、音より早くなる走るなんて当然出来ないし、もっと言えば足を鍛えることをしなければ、何の能力も持たない普通に足が速いだけの人より遅いなんてこともある。
さらに残念なことに、この世界には魔術という技術がある。能力のほとんどは魔術による模倣、または超越することは割と簡単だったりしてしまうんだ。魔術の原理については別の機会に語ろうと思うが、先に少しだけ言ってしまうと魔術は、極めようとするのならばともかく、一般に出回っている魔術を使用するだけなら素人でも簡単だ。まぁ何が言いたいかと言うと・・・基本的に能力を持っているからと言って得に凄いといったことは無いということだ。
この世界の歴史では、能力も固有能力も持たない人間が魔術を極めることで英雄になったという話もある。他にも使い道がないような雑魚能力を上手く使いこなすことで名をあげたものもいる。結局何の努力もしない人間はダメといういい例だね。
さて、では今度は固有能力について語ろうか。固有能力と能力は似ているが全く違うものなんだ。
まず固有能力と能力の一番の違いは、その能力の特異性があげられる。先ほど語った通り能力の多くは魔術による再現が可能だ。ただこれが固有能力になると、魔術による再現はほとんど不可能と言ってもいい。ただ勘違いしてはいけないのは固有能力だからと言って能力よりも強力という訳じゃないという点だ。
例えば能力の中に「自分の姿を透明にする」というものがある。これは能力の中でも相当強力な力と言ってもいいが、光の屈折を利用することで実は簡単に魔術で再現可能だ。
さて固有能力の中に「影人」という「影が薄くなる」という能力が存在する。これは文字通り影が薄くなるだけの能力なのだが、予め注意してみておけば簡単に見破れるうえに、人が少ない所にいれば何の効力もないんだよね。じゃあ、魔術で再現可能かと言えば・・・残念ながら完全な再現は難しいと言わざるおえない。
自分という認識をそらす精神魔術で似たような効果は作ることは可能だが、周囲の人間全てに精神魔術をかけるのなんて相当上位の魔術師にしか出来ないし、それはどちらかと言うと「影が薄い」というよりは「他人に自分を無視させる」というだけだろう。完全再現とは言いずらい。
さて、ここまでの説明で違和感を感じた者もいるのでは無いだろうか?先ほど私は、能力を「自分の姿を透明にする」と言ったのに対して、固有能力を「影人」という「影が薄くなる」という能力、と言った。これが固有能力の2つ目の特異性だ。固有能力には名前が存在しており、これは固有能力を習得した際自然と頭に思い浮かぶんだそうだ。
一体何故力の名前など分かるのか、いや、そもそも誰が名前を付けているのか。多くの人間が、この謎について調べようとしたが残念ながら答えに辿りついた人間はいない。
え?「知恵の塔」の司書のくせに知らないのかって?ふふふっどうかな?まぁヒントを出すなら私は辿りついた「人間」はいないと言っただけだよ。
まぁ、その話の続きは、君が「知恵の塔」に来れたらにしようか。
話を戻そう。固有能力の特異性はまだあるからね。あぁそうだ。言うのを忘れてたね。固有能力は全人口のたった0.1%だけが得ることしか出来ない。とはいえ大体一つの都市には少なくても1万人近い人間が住んでいるからね。100人は固有能力持ちがいる考えれば思ったよりより少なくないのかな?
大国の王都に行けば固有能力持ちなんて珍しくもなんともないらしいよ。固有能力が強力とは限らないとは言え、中にはありえない程強力なものもあるからね。才能とは残酷だ。
「お前さっき努力が大事だって言ってた」って?あぁ、実はそれも固有能力と能力の違いの一つなんだ。
固有能力はね、能力と違って使えるようになるタイミングが分からないんだ。5歳どころか生まれた時から有してる者もいえば、死ぬ直前になって急に使えるようになる者もいるんだ。有名なのはピンチの時、新たな力に目覚めてピンチを脱した英雄なんかだね。正直あれはズルいんじゃないかと個人的には思うんだが・・・。まぁ今も昔も人間はそういう話が大好きだからね。
話がずれたね。確かに固有能力を得るタイミングは分からない。でもひどく曖昧な統計からだけれども保有者には共通点があることが分かっているんだ。固有能力の所有者には、その能力に見合う何かがある。という事だ。
ごめん。ごめん。確かにこれじゃあよく分からないね。でもやっぱりこう表現するのが適切なんだ。
ある英雄になる能力を持った少年は人一倍正義感に溢れていたし、人殺しに向いた能力を持った男は人を殺すことが大好きだった、人を癒す能力を持った少女は慈しみ深かったし、先ほどの「影人」なら、やっぱり保有者は、能力抜きにしても地味な人間だった。
そう!こう言えば分かりやすいかな?固有能力の保有者は、それぞれの物語における登場人物に成り得る人間だ。それが誰にとっての物語かは知らないけどね。
さて、固有能力の説明は次で最後だ。ここまで聞いてくださった人は、ぜひ後少しだけ付き合ってくれ。
最後の説明は「シリーズ」と呼ばれるものだ。ここまで聞いてくれた人はご存じの通り固有能力の名前は能力保有者が決めてるのではなく頭に自然と浮かんでくるものだ。実は固有能力の中には能力名が似ているものがいくつかある。それらの法則性があてはまるものを「シリーズ」と呼ばれているんだ。
ユキ君の固有能力である「白く凍える孤独の王」。これも実は「王シリーズ」と呼ばれる「シリーズ」の一つなんだ。まぁ彼の場合は能力取得の流れといい、いろいろ普通じゃないからあんまり参考にならないんだけどね。
また、同じ「シリーズ」は能力の効果など、どっかで共通点を持っていることも知られているよ。一応有名所は下にまとめておいたよ。固有能力は、いろんなことに関して例外ばっかだから、絶対じゃないけど参考ほどに見ておくれよ。(ちなみに少しネタバレ気味なため本編を新鮮な気持ちを楽しみたい人は飛ばしたほうがいいかもしれない。注意してね。)
「王シリーズ」 固有能力名「~~の王」
固有能力の中でも選ばれた者だけが得ることが出来る最高位の能力。「~~」の部分に入る言葉に関して何らかの絶対的な力を持つことが多い。有名なのは「正義の王」。自分の思う正義を執行する際絶大な力を得ることが出来る。かつて勇者が持っていたらしい。
「巫女シリーズ」 固有能力名「~~神の巫女」
女性だけが得る能力。何らかの神の巫女としての力を得る。能力の特徴として能力を得た際、神器も得ることができる。ただ代わりに意識の何割かを担当している神様に奪われるらしい。有名なのは「戦神の巫女」。能力は戦いに関している行動をしている時強い力を手に入れる。この力を持った女性は生涯戦い続けたという。
「神体シリーズ」 固有能力名「神の~~」(~~には身体の名称が入る。)
身体の一部に何らかの力を得る能力。多くは凄い能力だが、何故か直接の戦闘能力は無いことが多い。また、能力で強化された部位は力を使い続けると壊れることがある。有名なのは「神の瞳」。世界の全てを見通し過去と未来すら見たという。かつてこの力を使ってあるかないかもわからない「神の世界」とやらを覗こうとした人間は目から血を噴き出して数日後死んだという。
有名なのはこんなところかな。もちろん他にもいろいろあるが世間一般で有名なのはこの3つだ。「シリーズ」以外にも多くの固有能力があるからね。是非今後を楽しみにしといてくれ。
さて今回はこんな所かな。能力と固有能力のことは、みんなよく分かってくれたかな?
では皆さんが真理に至ることを願っているよ。さようなら。