生徒日誌 頁壱 せんせい
――これは、良正が授業を受け始めて一日が経った日の話
✣
私、桜羽アスカはある日、異世界に召喚された――私、これからどうすればいいの〜!?
こっちに来てそう考えたのは、一秒にも満たない時間だったと思う。
だって〜、ここは元いた世界よりもなんぼも楽しいんだも〜ん。
うざった〜い大人はいないし〜、というか嫌に感じる人がまずいない。
まだそうなだけ、なのかもしれないけど……
だとしても、私が置かれている環境は、とてもいいものなんだろう。
私の周りの人たちと言えば〜、おもしろ〜い召喚士の人たちがいる。
特に、召喚士長のミスリルは目がこれっぽ〜っちも開いていないところとか〜独特の話口調の「ですねぇ」がと〜ってもおもしろいんだよね〜。
あと、宰相のシェイルベルはず〜っと堅い、かっちこちの堅物ってやつ〜。
いくら私がいじってもぶれないように、ぶれてないようにする。
そこがかわいいんだよね〜。暇さえあれば、ついついなんて言いながらず〜っといじってるんだ〜。
最後に、王宮騎士団長のフェルナンドはとにかく暑苦しい感じのオーラが常に漂ってる。
だけど、私の暇つぶしの稽古の時は、雰囲気ががらっと変わって凛としたカッコイイ表情を浮かべるの〜。
そのギャップったらも〜……きゅんきゅんしちゃう、よね〜? あと、王宮近くをよく行き来する街の人たちがいるみたいだから、その人たちとも仲良くなっておかなきゃだね!
……って、大事な人を忘れてたよ! ぐっちゃんだよ、ぐっちゃん! この私が直々に教師として任命したのに、
「俺はまだ、この国やこの世界のあれこれを根本的に全然理解出来てない。だから、俺がお前にものを教えられるようになるにはどうしても時間がいるんだ。すまないがそれまで我慢してててくれ」
なんて言うから、私は今もこうして言霊を使って、暇を持て余した勇者の遊び“言霊テニス”なるものを考案して召喚士のみんなと遊んでるしかないんだ〜。
でも、私は待つって、いくらでもあの人を待つって決めたんだ。
だって、ぐっちゃんは、優しくて正義感のある人だと思うから。
この前、私の天然で出ちゃった発言を気にしてすごく怒ってたけど〜、なだめた後に説明したらよく解ってくれた。めんどくさいなんていいながら、結局、私の教師って役柄も引き受けてくれたし……参ったな〜、いいとこ挙げたら思いのほかキリがあっちゃったよ〜。
でも、言った通り、どんなことがあっても根は優しいからちゃ〜んと認めてあげよ〜、な〜んてねっ!
おおっと、みんなとの約束の時間だ〜。
じゃ、この辺で試合再開と行こうかな〜!
パコッ!!
軽やかな春風の中、ラケットから奏でられる音が心地よくきこえる。