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外道ゴブリンは邪神の下で  作者: 飛坂航
ゴブリンの集落
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勧誘

 足どり軽く集落を出た僕は、一旦引き返す事にしていた。


 理由は簡単!怖いからである。怖い普通に怖い。

 という訳で同行者 肉壁とも言う を探そうとしている。  

 壁役を期待してでもあるが、今から教育すればいつかは普通に話せる様になるかな、なんて可愛い打算もあったりする。

 そこ、キモいとか言わない。


 対象は、まだ狩りを済ませていない同年代のゴブリンだ。

 もっと強い方がいいのでは?とか、そんなんじゃ捨て駒も無理だ、などの意見もあるだろう。

 だがそれらを踏まえても僕は敢えて同年代を選んだ。

 なぜか、それはそっちの方がまだ便利だからである。

 なぜ便利かと言うと、囮なんて考えは、小学生でも思いつく、すなわち、同程度の知能を持つゴブリンでも思いつくのだ。

 つまり、成体となったとはいえ、未だに経験のあるゴブリンには肉体能力で負けるだろう、そのため狩で危ない場面になれば、確実に囮にされる。

 ゴブリンの中でも幼い僕はゴブリンにすら負けるのだ!



 ちなみにゴブリンには子供は宝なんて暖かい考え方はない。


 むしろ、ぽこぽこ生まれてはバンバン死ぬのが当たり前のゴブリンの中では、生き残った個体の方が遥かに重要とされる。


 ふぅ、種の繁栄のために仕方ないとはいえ、弱者が軽く扱われるのは悲しいことだ。まあ、弱者からすればだが。


 おっと話が脱線してしまった。

 えー同年代を選ぶ理由だったかな。

 その中で最も重要なのは僕の指示に従うことだ。

 僕は自分が特別頭がいいとは思はないが、流石にゴブリンよりは賢いと自認している。

 よって、僕に従うのがシャクだという理由で僕に従わない諸先輩方よりも、接し方次第では僕に忠実になりうる同年代を選ぶ。(q.e.d)

 そんなことを考えている間に、僕ら世代の家が見えてきた。


 自己主張が激しくなさそうな同年代に目星はつかているが、候補の中なら正直、どれでもよかった。

 というより、選ぶのに迷う。

 どれにしようか…よし、ここは伝統的な決め方で行こう。


 どれにしようかな 天の神様(邪神)の言う通り


 よしっ、あれだな。

 声をかける奴を決めた僕は、誘い文句を考えながらゴブリンに近づいづいて行った。 


「グギャグギャギーギャギャギャ(なあなあ君、特別な割のいいお得な仕事が有るんだけど、興味ない?)」


 現代日本でこんな明からさまな言葉に引っかかる人がいるとは思えないが、相手はゴブリン。それもほとんど子供と変わらない、騙すことは造作もないだろう。


 多少悪いとは思う。具体的に言うと交差点を車でちょっと強引に右折した時ぐらいには。


「ギギャ?(自分か?)」


 フハハッ引っ掛かったな!この場面での最適解は無視なんだよ!

 僕は下衆な事を考えながら、言葉を発する。


「そうそう君だよ君。やっぱり賢そうだと思ったよ流石だね。」


 悪い事にはならないだろうと思い、僕はそのゴブリンを持ち上げておいた。なんで持ち上げるか?高みから一気に落とすためだよ。


「で、仕事の内容は?」


 あれ、効かない。いい気になると思ったのに。まあいいさ。


「まあまあ、そんなに焦らずに、ゆっくり話し合いましょうよ。取り敢えず、こんな所で話すのもなんだ。

 ちょっと外に出よう。」


 僕の提案をゴブリンは素直に受け入れる。


「分かった、どこだ?」


 体感で一分と言った所か、準備段階から用意してきた人目に付きにくい、静かな木陰に到着した。ポン引きと違い警官を恐れる必要はないが念のためだ。

 適当に座ってくれよ、と僕が言うと、では、と言いながらゴブリンは木の根に腰掛ける。


「で、仕事とは?」


 おもむろに話しを始め、会話の主導権を握ったゴブリンに瞠目しつつ返答する。


「簡単だよぼ  いや俺と一緒に狩に行かないか?」


 ゴブリン相手に僕では舐められるかと思って一人称を変えてみた。 


「なぜ一人で行かない?」


 予想通りの質問。答えも決まりきっている。


「闘いに自信がなくてね。ああ勿論道具は俺が作るし解体もする。獲物の分け前は3:7でどうだ?」


 無論そのまま渡すつもりはない。解体中にちょろまかす。


 ハハハッ騙された方が悪いのさと、誰にともなく言い訳をしつつ、僕は慎重に言葉を重ねる。


「ギギャギギャ(どうかな?悪くないと思うんだけど?)」


 クイズ大会レベルで返事は速かった。


「ギギャ(悪いな、断る)」


 チッ騙されなかったか。僕は内心舌打ちしつつも、それを表に出さず、驚いた振りをして問いかける。


「ギギャギギャ(なんで?かなりの好条件だと思うけど?)」 


「ギギャギギャギギャ(信用出来ん」


「ガーギギャギ(いや、なんで?)」


 そこからそのゴブリンから聞いた話は驚くべきものだった。マイルドに訳すと、どうやら初対面の人間  ゴブリンだが かなり一方的な美味い話を持ってくるなど怪しい!と思ったらしい。

 ちなみに彼女は雌だそうだ。まあ、生憎僕はゴブリンにときめくほど曲がった性癖は持ち合わせていないので関係ないが。

 閑話休題

 どちらが怪しいかと言えば、僕の話よりもゴブリンの身でそれを見抜く彼女の方が怪しい。勘のいいガキは嫌いだよ。 

 

 あと、並のゴブリンよりよっぽどうまく罵倒してきたことも書いておく。


 それに、誘った時から思っていたが話し方が、知的過ぎる。観察していた時は、喋らなかったので、わからなかったことが惜しい、どれくらい優れているかと言うと、基本的に下級ゴブリンの話し方は単語主体だが、それに比べ彼女はかなり流暢に話したのだ。まるで最初から知恵を持っていたかの様に。


 ちなみに、この世界に来てから僕たちが話しているのはゴブリン語だ。  なんとなく喋れているのは、邪神の加護が何かのおかげだろうか?

 

 だからまあ、転生者で邪神の使徒らしい僕が、人を怪しいとは言えないが。

 じゃ、仕方ないプランBだ! 考えてないけど!


「ギャギーキギギャグギャギーギャギ」


 取り敢えず笑ってみた。

 余裕を見せる事は大切なのだ。魔王っぽい笑い方をしてみたかったからじゃない。ないったらない。


「ギギャギャギギャ(なんだ、いきなり)」


 何気に辛口な言い方である。若干引かれてる気がするが、日本人特有のスルー能力で流す。


「ギャギ(今回は諦めよう。次の機会が、有れば頼む。)」

「グキャ(ああ」


気のない返事でも、僕の心は折れない。


目的に突き進むのは実に簡単だ。目的を探すよりかわね。


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