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ある日突然ウォーレンという老人に「勇者にならんか?」誘われた主人公、夏希。
「学校が終わったら朝野公園に来い」
と言われたので行くことにしたが今朝のHRはとても予想外のもので...。
-命を賭けてな-
やっぱりこの言葉...ズッシリ来るんだよな。
俺の通っている朝野高校は、東京の1番端にある都会とも田舎とも言えない所に住宅街に並んで建っている。
あの後走って学校に行った俺は5分遅刻する事になったがHRは始まる前でそもそもまだ先生が来てないという奇跡が起きたので逃れる事ことが出来た。...良いのか?
ガラガラッ
「おはよう、今日は転入生紹介するからなー」
「おぉー」と言う声が聞こえてくる。中には「女の子だよな?女の子なんだよな?!」と声を上げるものも。...コイツら...とため息を出しそうになるが堪える。実際俺も気になる。なぜって、小、中学校含め、転入生が自分の学校に来た事なんてただの1度もなかったからである。しかもそれが女の子だったら尚更だ。(まだわかんないけど)
コツ...コツ...
足音...だよな?「コツ」?上履きでも先生が学校で履くようなスニーカーの足音でも...ないよな。一体どんなもの履いたらそんな音出るんだ?
そんな事を考えながら瞬きをする事も忘れ教室の前のドアをじーっと見つめていた。
ガラガラッ
妙に緊張感が高まる。一気にドアの方へ視線が集まる。ついに...!!
...まず視界に現れたのは.........ヒール。次に足。赤いスカートに白いシャツ。その上にグレーのパーカーを羽織ったその服装は制服の「せ」の字も入っていなかった。おまけにローヒールというなんとも言えない姿だ。しかし首から上へと視線を動かした途端、頭がフレーズした。なんと信じられないほどの美貌だったからだ。凄く美人だ。大人っぽいと可愛らしいが程よくミックスされているような顔立ちだ。髪は明るい茶髪のロングを後ろで結んでいた。
ま、まじか...。
「おはようございます皆さん。佐賀県から来ました、海老名 志穂と言います。これからよろしくお願いしますね」
ん?天使か?うん、お花畑が見えたような気がした。
海老名 志穂は小さくお辞儀をすると周りを見回してから笑顔を見せた。
「んー、あ、川城の隣空いてるじゃないか。じゃあ海老名さん、窓側の1番後ろの隣に座ってください」
「はい」
...え?
もちろんこのクラスに川城は俺一人だ。周りから「えぇー」と非難的な声が聞こえてくるがなるべく耳に入らないように心を無にして彼女がこちらに向かってくるのを見ていた。
「迷惑かけるかもしれんけど、これからよろしくね」
うおぉおおおおおぉ!!!な、なんかちょっと訛ってんのがまた...
「よ、よろしく!」
めちゃくちゃ可愛い...
「おぉ、これがラッキースケベってやつか?」
「す、スケベではないだろ、ラッキーかもしれないけど」
クラスのほとんどが転入生に集まる中、俺に話しかけてきたのは数少ない親友の尾崎瑠郁だ。長身にサラサラの髪。しかも顔面はアイドル顔負けのイケメン。...しかしたまに見当違いな事を言ってくるのがかなりのギャップである。
「羨ましいなぁ」
「しょっちゅう告られてるくせに」
イケメンの使命だ。まぁ実際奇跡みたいなもんだな、美人が隣の席なんて。
っていうかこいつが魔法なんか使えたらかなり映えるんだろうな。
しばらく話すと自席へ戻って行った。
鐘がなる途端一斉に家に帰る者もいれば、部活動場所に行く者もいる。しかし、俺は学校の裏の道を少し行った所にある、朝野公園へと向かう。
「おぉ、来たか少年。時間通りだな」
いつの間にか「お主」から「少年」に変わってる事には気づかなかった。
「じ、時間なんて決めましたっけ?」
...と、そこで1つ強烈な違和感に気付く。
「か、川崎くん...?」
そこにいたのは今日転入してきた海老名 志穂がいた。
「え、海老名さん?」
「志穂でいいよ、海老名さんなんか堅苦しいし」
いやいや、そういう問題じゃ...。
「おじ...ウォーレンさん、なんで海老...志穂さんがここに?」
正面で海老名 志穂が「志穂でいいのに...」と口を尖らせてるのはとりあえず無視してウォーレンの答えを待つ。
「そりゃ、魔法使いだからじゃよ。勇者じゃよ、勇者」
え...嘘だろ...。か、彼女も魔法使い?!
「そ、そうなの?」
聞いてみるとちょっと苦笑してから言った。
「実はね、私の家系は先祖代々の魔法使いなんだ」
凄く予想外の答えが返ってきた。先祖代々?ま、魔女って事?おとぎ話の中だけでしかその存在を知らなかった俺は自分も魔法使いという事も忘れてフレーズしていた。
「さて、本題に入る」
公園には3人しかいないのにものすごい緊張感だ。
「この世界にはな...7人の勇者がいるという」
「7人?」
俺と志穂は同時に聞く。
「その勇者というのは魔法使いだけではない。素手だけで戦う闘士や剣で戦う剣士、その中にも細剣や片手剣、斧、両手剣等がある。後ろでサポートする魔法の1つヒールをするヒーラーもいる。」
な、なんかドラクエみたいだな。RPG要素入ってないか?...でもそしたら俺は剣士がいいな。
「私はヒーラーかな」
いつの間にか隣で話を聞いていた志穂が言った。それにつられるようにして俺も続く。
「俺は剣士になりたい」
「そうか、話が早いな。状況を理解出来ん者がたまにおるが、お主らは違うそうじゃな」
「そうと決まれば...」とウォーレンが言った時、隣で志穂が震えているのに気付く。
「ま、魔界獣が...」
魔界獣?化け物の事か?
「んな!この気配は...お主、行くぞ!」
「へ?」
「勇者なんじゃろ、剣士になりたいなら来い!」
そう言って走り出す。
勇者という単語に反応して、俺も志穂も老人の後を追う。
うおぉおおおぉおおおおおおお!!!!!
遥か彼方で響き渡る獣の雄叫びが俺の耳に入って来たのは走り出して数秒もかからなかった。