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VRoadway!!  作者: 藤川ジョン
第一章
23/26

023-葛城省吾/いつか帰る場所

葛城(かつらぎ)省吾(しょうご)


 結局、VRoadway(ブロードウェイ)のシステム復旧は、翌日の今日になっても終わらなかった。運営からtwitwi(ツイツイ)やホームページ経由でアナウンスがあり、予選結果については、今日中にメッセージが届くという形になった。


 ネットニュースによると、サーバーが落ちた原因は、やはりアクセス過多だったらしい。予選参加者はもちろん、VRoadway用のエリアにいた他のユーザーにも、接続障害といった影響が出たようだ。


 VRoadway運営には問い合わせが殺到、今朝にはSNSやネットニュースに限らず、テレビでも報道されていた。こんな騒ぎに発展するほど、VRoadwayへの期待度と注目度は高い。俺は立った舞台の大きさを改めて感じた。


 予選の結果発表と共に、今日は唯の手術日だ。仕事も早めに切り上げさせてもらい、俺は病院の待合室に来ていた。唯は今まさに手術中とのことだった。


 俺は、祈るように手を合わせながら、スマホの画面をじっと見ていた。

 もうすぐ、メッセージが来るはずだ。運営の案内では、15時から一斉に結果を送信される。あと数分。


 泣いても笑っても、やれることはやった。どうやら、すどーPは裏で広報活動もしてくれていたらしい。俺だけではなく、彼の努力も背負っている。ここで終わる訳にはいかない。


 その時、スマホのバイブレーションが作動した。思わず、背筋がピンとなってしまう。

 おそらく、結果の通知だ。心臓の鼓動が速くなる。


 唯は今、手術室で頑張っている。その唯の頑張りに、俺も応えなければならない。どうか良い結果を――


 俺は覚悟を決め、スマホに手を伸ばした。


 メッセージアプリには、新着メッセージ1件の表示がある。アプリを起動すると、最上部に【VRoadway予選結果】というタイトルが見えた。


 震える指で、そのタイトルをタップした。


 画面いっぱいにメールの文面が表示される。その文頭に、一際目立つように太文字で強調された文章があった。それを恐る恐る読む。


【予選の結果、藤多柚衣様は1stステージへの進出が決定しました】


「進、出……」


 声にならない息が口から漏れ、それまでの緊張が一気に解けた反動で、その場にへなへなと崩れ落ちてしまう。


 藤多柚衣が予選突破をした。まずは、スタートラインに立てたのだ。

 俺はすぐにこの旨を、今頃肝を冷やしているであろうすどーPへと送信した。


 その後で、俺は大きく息を吐いた。


「ユイ。俺、お前の夢をなんとか繋ぎとめられたぞ」


 妹の夢は、世界の人々を笑顔にすること。その大きな夢の達成にとって、俺が藤多柚衣としてできた事はほんの少しなのかもしれない。


「だから、早く元気になってくれよ」


 それでも、俺の心は熱く、興奮に満ちていた。

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