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少女漫画のその後

作者: 環 九

※少女漫画を自己解釈でかなりひねくれて書いてます

※2000文字の超短編です


朝日を浴びながら私は眠気覚ましにインスタントコーヒーを飲んでいた。


今住んでいるこの部屋は駅から30分もかかり、築50年のうえラップ音やいろんな心霊現象が起こるという事故物件で誰も借りたがらない家賃1万円のアパートの一室。

怖いのは最初の数日だけで、今となっては子守唄にすら感じているくらい


大学生3年の私は授業料と日々の生活費を稼ぐために学校以外のほとんどの時間をバイトに費やしていた。

朝起きて、大学に行ってバイトで汗を流して家に帰ってシャワー浴びて寝る、それを繰り返す毎日で疲れるということすら忘れている気がする

睡眠時間は平均3時間未満

当然お金もなくて付き合いもないのだから友達もいない


そんな私の将来の夢は高校教師です



私の青春に注ぐべきエネルギーは

高校時代ですべて使い果たした

そうしみじみと感じる


大学に行く準備を終わらせ、ほどほどにメイクをした顔を鏡で見るが、メイクをしていなかった高校生の自分よりも暗くよどんでいるように見えた。


少しだけ背伸びをしたい自分の心理なのかちょっと高めのヒールをはいて、重々しい金属製の冷たい扉を開ける。


夏から秋への移り変わり、まだ残暑があってもいいはずなのに、なぜか冷え切った風が肌を刺す。

薄い雲の向こうにはぼんやりと太陽が見える

本来ならもっと暑く照りつける太陽も、何かで覆ってしまえば、途端にその光はか弱いものになってしまう



…まるで私の高校時代のように。


中学校でいじめを受けていた私は、逃げるように一人暮らしを始めて、今のアパートに住んでいる。

近くにあった可もなく不可もなくといった平凡な高校に進学し、とにかく目立たないようにするのに必死だった。



それなのに、私を気にかけてくる同じクラスのの男子がいた。

どうしてこんな辺鄙(へんぴ)な高校にいるのかわからないくらいキラキラとした美青年

少女漫画で言う”王子様”だった。


太陽のように眩しくて

いつも爽やかでイケメンオーラをまとっていて

いつも女子生徒に囲まれ黄色い声援を浴びていた


太陽に近づけば、自らの身を焼いてしまう


少しは興味あったけど自分にそう言い聞かせ、私はその男子生徒の気遣いを払いのけていた。


…ただクラスが一緒だからだよ。


きっと王子様には初めてのことだったんだと思う。

無視されたり、避けられたりすることって

だから私のことが気になり始めてしまったんだと思う。


常識というものに疎いのか、王子様は私が拒んでいるのにもかかわらず、ずかずかと私のテリトリーに入ってくる。

そうなれば必然と目立ってしまい

王子様のファンクラブ的な奴らからは冷たい目で見られていた。



またいじめが始まると思った

いや

正確に言えば、いじめは始まっていたのだ


根も葉もないうわさが流され、生徒の財布が盗まれたとなっては、私が容疑者となったりして

直接的ではなく間接的に、じわじわと私の精神を攻めているようだった。


それでも私は、中学時代のさらに陰湿だったいじめよりは数倍マシと考え、適当に流していた。

あの頃の私の精神力は本当にどうかしてたと思う


しかしいつの間にか

いじめはなくなっていた

最初は飽きたのだろうと思った


でも、違った。

あの王子様が私をかばったからだ

いつも一人だった私の空間に入り込んできたあの王子様が


勝手に近づいてきて

勝手にいじめが始まって

勝手に解決されてしまった


中学校の3年間で絶対にいじめはなくならないって結論に至ったのに

彼はこともなさげにそれを解決してしまった


この時初めて私はそんな不可能を可能にしてしまう王子様の姿に恋をしてしまったと気づいた


毎日が張り裂けそうなくらいドキドキの連続で

トキメキに満ち溢れ

周囲の見慣れたものさえキラキラと宝石ように輝いていた


周りからの非難の目は変わらないが、王子様がいればどうだってよかった。

このまま、こんな完璧な彼と結ばれて、幸せに生きていくんだと思ってた。


でも人生って

現実って


残酷


私の夢のような時間は

本当に夢のように儚く消えてしまった


卒業式の日

卒業証書を受け取った直後


恥ずかしさなんて少しも見せず

でも私の返答を心配そうに眉を下げながら

手を震わせ、膝をついて私に指輪を渡してきた


私は王子様かプロポーズを受けた


全校生徒の目の前で


悲鳴混じりの声が体育館に響き渡る

でも私の耳には、そしてきっと王子様の耳にも聞こえない


私の王子様、そんな不安そうな顔をしないで?


そう思いながら私は



「はい」


と返事をした




そのあとのことは、あまりにも急すぎて何が起こったのかその時はわからなかった。


ただ、一つ分かったのは

一人の女子生徒が握っていた包丁が王子様の胸に突き刺さり

私の膝の上で止まることのない赤い液体を流しながらどんどんと冷たくなっていくことだった



私はずっと助けられてばかりだった


王子様は自らの命を投げ捨て、私をかばったのだ

こんな、生きている理由も見いだせなかった私を

王子様を失ったら何も残らない私を


自ら死んで後を追いかけたかった


でも、助けてくれた命を捨てることなんてできずに

あの時の王子様のようにどんどんと冷たくなっていく思い出を胸に私は今日も満員電車に揺られていく。


もしかしたら、あの高校に戻ればまたあの時に戻れるんじゃないかって

そんな淡い期待を込めて

読んでくれてありがとうございます。

このその後的な短編をほかにもいくつかアイディアあるので、

これの評価とかPVとかいい感じだったら味をしめてどんどんあげていきます。


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