選挙区ごとの一票の格差と死票による格差
一票の格差を問題にする人たちは、選挙区ごとの議席数と有権者数しか問題にしていません。しかし、それだけで良いのでしょうか? つまり、選挙区ごとの議席数と有権者数(または人口)の比がだいたい同じであれば、公平と言えるのかということです。
こんな例を考えてみましょう。ある市にあ、い、う、え、お の五つ選挙区があり、それぞれの人数(*1)が以下の通りで、議会の議席数が15であるとしましょう。
*1:議席を割り当てる基礎となる人数を、(赤ちゃんまで含んだ)人口にするか(ある年齢以上などの条件を満たした)有権者数にするかは、どちらにも一理あると思いますので、ここでは触れません。
人数 議席数
選挙区あ 1万人 5
選挙区い 2万人 4
選挙区う 3万人 3
選挙区え 4万人 2
選挙区お 5万人 1
現代日本ではこれは確かに不公平でしょう。(もちろん、中世ファンタジー世界などではあり得る分配法ではあります。)では、選挙区ごとの議席数と人数の比がだいたい同じになるようにしてみましょう。
人数 議席数
選挙区あ 1万人 1
選挙区い 2万人 2
選挙区う 3万人 3
選挙区え 4万人 4
選挙区お 5万人 5
これで公平に見えるでしょう。しかし死票と、政党ごとの得票数に対して獲得した議席数という不公平が残っていると思うのです。
ひとまず、このような状況を考えて見ましょう。
選挙区、人数、議席数、獲得票数(A党、B党、C党)、獲得議席数(A党、B党、C党)
あ 100 1 50 30 20 1 0 0
い 200 2 100 60 40 1 1 0
う 300 3 150 90 60 2 1 0
え 400 4 200 120 80 2 1 1
お 500 5 250 150 100 3 1 1
合計--- -- 750 450 300 9 4 2
A党は83.3人で1議席獲得したのに対し、B党は112.5人で1議席を、C党は150人で1議席を獲得しました。これはあきらかにA党が有利です。
少数政党が乱立してしまうともっと不公平になりそうですね。
選挙区、人数、議席数、獲得票数(A、B、C、D、E党)、獲得議席数(A、B、C、D、E党)
あ 100 1 33, 27, 20, 13, 7 1,0,0,0,0
い 200 2 67, 53, 40, 27, 13 1,1,0,0,0
う 300 3 100, 80, 60, 40, 20 1,1,1,0,0
え 400 4 133,107, 80, 53, 27 2,1,1,0,0
お 500 5 167,133,100, 67, 33 2,1,1,1,0
合計--- - 500,400,300,200,100 7,4,3,1,0
A党は71.4人で1議席獲得したのに対し、B党とC党は100人で1議席を、D党は200人で1議席を獲得しました。A党(支持率の高い方)がもっと有利になりました。
さて 解決案というか、すこしでも不公平さをなくす方法を模索してみましょう。
方法その1:議会で議員が投票できる数を「一人複数票」にする
議員が獲得した票数をそのまま議会で投票できるようにしてしまいましょう。
選挙区、人数、議席数、獲得票数(A、B、C、D、E党)、議会での投票数(A、B、C、D、E党)
あ 100 1 33, 27, 20, 13, 7 33, 0, 0, 0,0
い 200 2 67, 53, 40, 27, 13 67, 53, 0, 0,0
う 300 3 100, 80, 60, 40, 20 100, 80, 60, 0,0
え 400 4 133,107, 80, 53, 27 133,107, 80, 0,0
お 500 5 167,133,100, 67, 33 167,133,100,67,0
合計--- - 500,400,300,200,100 500,373,240,67,0
多少はマシになりました。
方法その2:一定数の得票を得られなかった議員は全員落選にして、余った議席は選挙区全体の死票に応じて割りふる
100票未満は落選の場合
選挙区、人数、議席数、獲得票数(A、B、C、D、E党)、獲得議席数(A、B、C、D、E党)
あ 100 1 33, 27, 20, 13, 7 0,0,0,0,0余1
い 200 2 67, 53, 40, 27, 13 0,0,0,0,0余2
う 300 3 100, 80, 60, 40, 20 1,0,0,0,0余2
え 400 4 133,107, 80, 53, 27 1,1,0,0,0余2
お 500 5 167,133,100, 67, 33 1,1,1,0,0余2
小計--- - 500,400,300,200,100 3,2,1,0,0余9
死票--- - 200,200,200,200,100 2,2,2,2,1余0
合計--- - 500,400,300,200,100 5,4,3,2,1余0
80票未満は落選の場合
選挙区、人数、議席数、獲得票数(A、B、C、D、E党)、獲得議席数(A、B、C、D、E党)
あ 100 1 33, 27, 20, 13, 7 0,0,0,0,0余1
い 200 2 67, 53, 40, 27, 13 0,0,0,0,0余2
う 300 3 100, 80, 60, 40, 20 1,1,0,0,0余1
え 400 4 133,107, 80, 53, 27 1,1,1,0,0余1
お 500 5 167,133,100, 67, 33 2,1,1,0,0余1
小計--- - 500,400,300,200,100 4,3,2,0,0余6
死票--- - 100,160,140,200,100 1,1,1,2,1余0
合計--- - 500,400,300,200,100 5,4,3,2,1余0
偶然結果は同じになりましたが、かなり公平になった気がします。ただ、議員には「地域代表」という面もありますので、自分の選挙区から当選者を出せなかったという不満が増えますが…。
おまけ
投票する有権者側も一人複数票にするのも面白いかもしれませんね。
若い人は経験が無いので良い判断が出来ないかもしれないが、今決まったことには長い時間影響を受ける。
年老いると経験で良い判断が出来るようになるかもしれないが、今決まったことにはそんなに影響を受けない。
よって初めて投票する人は一票、何度か投票するとレベルアップして二票、三票と増えていくけれども、年齢に応じて投票できる最大数が減っていく、というシステムです。