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そんな変な情報をどこから仕入れたのか。いつもこの人達は一体何者なのかと感じながら冗談などを話しているが、今夜は自分の恋話を気にもせずに無口に写真を見入っているので、事務長が変だと気が付いたのかお茶を飲みながら俺の肩を叩くとハッと我に帰ったが知らない振りをした。
「どうした、えらく熱心に見ているが。お前がこんな物に興味があるとは知らなかったな。それとも何か気にかかる事でもあるのか?」
「興味、そんなものないですよ。それでこのティアラは?」と仕事の詳しい話を引き続き聞き出そうとした。
「確か、数ヶ月前にどこかの国のさる王族から盗まれたものらしい。
それが流れ流れてどうやらこちらの世界の者に転売されたみたいだ。
それで受け渡しが今晩だ。買手に渡る前に回収してくれ」
「じゃ、依頼はその盗まれた王族からですかね?」
「お前も知っているように依頼人などの詳しい事は教えられないが、その依頼人に興味でもあるのか?」
「いや、そう言う訳じゃないですけど。でぇ、この仕事はいくらになりますか?」と俺には一番大切な報酬の額を確認すると
「今夜の相手は魔獣ではないし仕事の内容も盗品の回収のみだ。
お前にとっては簡単な仕事だから、そんなに高くにはならないな。
でも数日分の晩飯代と利息分にはなるだろから、しっかりやれ」
「また安い仕事ですか。危険でもいいからもっといい仕事はないですかね。
例えば巨大魔獣とか魔界の大ボスを倒して大きい宝石が10も20も手に入るものとかは・・」と思わず愚痴が出てしまった。
「無駄口を叩くな。今日の仕事は俺が忙しくなければ数分できる仕事だ。
それをわざわざお前に回しているんだ。
それに見習いだったお前にそんな大きな仕事ができるのか。
今のお前は仕事を選べる立場じゃないだろう」と厳しく注意されると
「そうよ、まずは小さい事からこつこつとしないとね。それに事務長も見習君を心配しての事だからね」と事務員もそれに同調した。
「そんな事は分かっていますが、少しは励みがないと。
それに学校が始まるので仕事が多くできなくなるんですよ。
だから、その前に少しでも稼がないと・・」
「あらそうなの、見習君が学校が始まるって、それは大変ね」
「分った、分った。そうか学校が始まるのか。学生の本分は学業だからな。
少し考えてやるから。そうグタグタ言うな。今日の所は時間がないので早く行け」と急かされて俺は渋々事務所を出て行き、盗品の取引場所に急いだ。