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姫様の守護者は見習い勇者  作者: ゴーヤウリウリ
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夕方遅く俺は昼間の仕事の報告と今夜は割りのいい仕事がないかと尋ねに事務所に行くと

「今日は遅かったな。それで、昼間の仕事は上手くいったのか?」と強面の事務長が俺に声をかけた。

「遅くなってすみません。遅くなったのは、相手の魔獣がすばしっこくて捕まえるのに時間がかかりまして、やっと、さっき昼間の仕事が終わりましたよ。それで昼飯も食わずに急い来たんですが。はい、これがその宝石。今日は少し小さいですよ」とポケットから魔獣から出てきた宝石を取り出しテーブルに置いた。


事務長は仕事の手を休めてその宝石を一目見るなり電卓を叩いて結果が出るとタバコを吸い始め、その煙と共に

「軽犯罪を犯した小物の魔獣が相手だから、まぁ、こんな物だろうね。じゃ利息分の支払いにでも充てておくよ」と俺には厳しいお言葉だった。


昼飯も食わずにあれだけ苦労したのに利息分しかないとは、その言葉に俺は愕然となったが、夜に頑張ろうと気を取り直して

「それで、今夜はいい仕事がありますか?」と少し涙目で尋ねると、事務長は今夜はいつもとは違い機嫌がいいのか

「でも、よく働くね。毎日に毎日。ご苦労さん。お前のように借金をちゃんと返済してくれると俺も取立てをせずに済む。近頃の若い者にしちゃ関心、関心」と珍しく俺を褒めくれた。

「そうね、最近の債務者にしては返済に滞りがないわね。見習君は優秀よ」と事務員も褒めてくれた。


それから事務長は机の上に山と積み上げた書類の一番上からファイルを手に取って

「今夜の仕事は確かこれだったかな。おう、これだこれだ、今夜の仕事は盗品の回収だ」と俺にそのファイルをポンと投げると

「今月の事務所への返済が調子がいいんだ。いつも皆がお前のようにこうだと助かるんだがな。お前は返済頭だ」と、また電卓を叩いて仕事を始めた。


「今月は返済がいいんですか。でも、俺は好きで働いている訳じゃ有りませんよ。借金の返済のために仕方なく」と、そのファイルを受け取り、仕事の詳しい内容を確認しながら資料の写真をパラパラと捲るとか弱そうな男の写真に目が止まった。


「でぇ、仕事はこの男から盗品を回収ばいいんですか?」

「そうだ、この運び屋から回収ばいいんだ。簡単な仕事だろう。それに資料に盗まれた宝石の写真も付いてあるだろう。取引相手が来ると面倒だから早めに回収してくれ」

「どれだどれだ、これが、その宝石か」と少し古いが高級そうなティアラの写真に俺の目が止まった。


美術品には全く興味がなかった俺だが、そのティアラにはなぜか気を引かれていた。

「あら、えらく熱心に見ているわね。それが気に入ったの? もしかして彼女へのプレゼントにでも?」と俺にお茶を運んできてくれた事務員が冗談を言うと

「今のこいつにそんな物を買う余裕はないよ。それにこいつにお茶は勿体無い」と事務長は笑い飛ばしたが

「でも、彼女の一人や二人ぐらいはね。見習君は向こうの世界ではもてもてだったって聞くじゃないですか」と事務員は笑顔で言いながら事務長にもお茶も運ぶと

「そう、そう、もてもてだったんだよ」と事務長が噎せながら俺を見て答えた。


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