1-6-5
1-6-5
「そこでだ、今すぐ彼女を無理やりそこに閉じ込める訳にもいかないので、
お前が上手く言い包めて彼女をそこに住まわせる。
今直ぐ住まわせるのが無理なら、先ずは今晩だけでもそこに泊めてみるのはどうだろうか。そして、お前が彼女を監視する。いや、見守ってやるのはどうか?
ただし、絶対にこの部屋が監禁部屋だった事なんかは言うなよ、もし知れたら後々大変だ」
「俺が姫を見守るんですか、その部屋に姫と一緒に住んで?」
「一緒に住むかどうかは別だが、お前はこの件が片付くまで自分の部屋には余り戻らない方がいいし、彼女の居場所も確保できる。一石二鳥だ。
それが嫌ならお前のお姫様は野宿だ。そうと決まれば、彼女が目を覚ます前に地下の部屋を少し片付けて置け」と命じられて、事務員から詳しく部屋の説明を受けて鍵を受け取ると急いでマンションに戻った。
見習が急いで出て行くと、事務員は何か話したそうにお茶を事務長に運んできた。
「上手く丸め込みましたね。見習君が急いで出て行きましたよ。
でも、事務長は分っていたんでしょ。彼女がこちらの世界に来るってこの依頼があった時から」
「あぁ、あの写真をみて直ぐに気が付いたよ。あの王族の大切な物だとね。
だからいつかは誰かが取り返しに来るだろうとは思ってはいたんだが、
彼女がこんなにも早く直々に来るとはね」
「それにしても、あの部屋をこんなに早く使うとは思っていませんでしたよ。
でも準備をしていて良かったですね。地下ですし多少の不便はあるとは思いますが、1時間ほど換気をして空気を入れ替えれば直ぐに使えると思います」
「そうか、直ぐに使えるか。色々とありがとう。それにしても、予想以上に奴が見つかるのが早かったな。1年間このままだとは思わなかったけど、数ヶ月で見つかるとは。その間奴にしっかり働いて貰った分はあの部屋に使ちゃったけどな」
「でも、事務長の話を聞いていて思わず笑いが出そうになりましたよ。
本当に嘘が上手ですね。あの部屋を監禁部屋なんてどっから思い付いたんですか。
それに、彼女を見て驚きましたよ。本当にそっくりで・・」
「あぁ、俺も最初奴が連れて来た時驚いたよ。生き写しだって。あぁ、いかんいかん、こんな所でこんな話をしちゃ、寝ている彼女に聞かれると拙いな」と事務長達は雑談を止めてお茶を飲み干すと仕事に戻った。




