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「確かお前はあのマンションの3階に住んでいた?」
「そうです、事務長に世話して頂いたあのマンションです。少し古いけど家賃が安くて助かりました。それに壁が厚くて頑丈だし、近所はなぜか静だし・・。
それにしてもマンションには俺の他に誰か住ん居るんですかね。
学校に行く時なんて誰も会いませんよ。いい物件なのに不思議ですね」
「確か多くの部屋が倉庫になっているので住人は少ない筈だ。
そうそう、お前には今まで黙っていたが、あのマンションは元々はある組織の本部だったんだ。それもいわく付きのな。
その組織が潰れて今はある貸金業者の所有になっているが、俺が頼まれてこうして管理している。確か住人は何人か居る筈だがな。
まぁ、途中でいなくなる奴もいるので今何人住んでいるかは、ここの事務員しか把握していない、そうだろう?」
「そうですね。急に住人がいなくなるので正確に把握しているのは私ぐらいかな」と事務員が笑って答えた。
「でも途中で住人がいなくなるって物騒なマンションですね。
でもどうしていなくなるんですかね、家賃も安いあんな良いマンションから?」
「そこは余り訊くな。お前も借金を完済しないとそのうち消えた連中のお仲間になるぞ」と俺を脅して事務長はお茶を濁し話題を変えた。
俺を見る目が余りにも怖かったのでこれ以上疑問を訊くのは止めようと思った。
「それで、お前はあのマンションに地下があるのは知っているか?」
「地下ですか、確かエレベーターにはG3まであったかと。
こんなマンションにしては地下3階まであるとは珍しいなとは思っていましたが」
「G3かぁ・・。そこが気になっていたか、さすがにお前だな。
確かに地下には部屋がある。だがもうだいぶ使っていないがな・・。
おーい、すまんが、今でも地下の部屋は使えそうか?」と事務員に確認した。
「そうですね。今はその必要が無いので使ってはいませんが、少し手をかければ使えると思います」
「今は使っていない部屋ですか。どうしてそんな地下に部屋があるんですか?」
「聞きたいか? 聞きたいなら教えてやるが、人には絶対に言うなよ。
その部屋は昔は監禁部屋だったんだ」と事務長は俺の耳に近づいてそっと話した。
「監禁部屋って!」と声を大きくして俺が驚くと
「しー、声がでかい。地下3階だし、壁は防音壁でできている。
昼間は太陽の光は一切入らず。監禁し拷問しても叫び声は一切外には漏れない。
そして逃げ出せない。最強の完全密閉部屋だ」と事務長は小声で答えた。




