1-5-5
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「もうお昼か、俺もだいぶ腹が減ってきたな。
くっそ、あのおやじ、お昼なのに返事もせずにいつまで寝ているんだ。
そうだった、目覚めた時の姫はお腹を減らせて機嫌が悪かった。
もしも途中で目覚めて意味無く暴れ出していたら大変だな。
確か未だ残りのお金はあった筈だ。念のため一度部屋に戻って確認しよう。
途中で食い物でも買うか、事務所はそれから後にでも行くか」
食べ物を買って部屋に戻るとドアのカギは閉まっていたので安心した。
部屋に入っても雨戸や窓は閉まっており真っ暗だったが、なぜか足元は何かかガサガサしていた。
この様子だと姫はまだ寝ているなと明かりをつけたが、床には押入れていた箱や服が出してあり、おまけに何かの食べかすが袋が散乱しベッドには誰もいなかった。
こりゃ、午前中に目覚めてご機嫌斜めかな、お腹を空かして押入れや冷蔵庫でも漁ったかなと
「姫様、どこにいますか? もう、お目覚めですか? ご気分はいかがですか?」と優しく呼んでみても返事が無い。
誰もいない筈の押入れからガサガサ物音が・・。
静にドアを開けてみると見覚えのある俺の服を着て姫が寝ていたが、ただ驚いた事にシャーワーでも使ったのか身奇麗になり汗臭さは無かった。
助かった。外には出て行っていなかった。お腹を空かして途中で目覚めて飯でも食って二度寝でもしているのか。
するとスマホが鳴った。
姫が起きないように直ぐに俺は隣の部屋に移って電話に出ると事務長からだった。
「どうだ、彼女は今部屋にいるのか?」
「はい、隣の部屋の押入れで寝ています」
「えっ、押入れだって? お前、彼女をそこに押し込めたのか?
酷い奴だな。お前のご主人様だろうに」
「そんなんじゃないですよ。姫が自分で・・」と弁解したが無理だったようだ。
「それより、ブツは持っていたか?」
「すみません、それはまだ確認していません」
「何しているんだ。早くブツを見つけて持って来い、今すぐにだ」
「そう言われても、姫がまだ寝ているので、どうしようもなくて」
「バカ野郎、とっとと起して、持って来い」と電話を切られた。
「仕方ない、急いでこのまま事務所まで運ぶか」
俺はそっと姫を抱えると押入れから出し、人に見られたら拙いのでエントランスからではなく3階の部屋の窓から飛び出し、ビルの影に隠れながら事務所に急いだ。