1-5-2
1-5-2
「待て待て、またこのパターンか。これで大失敗したんだ。
あの晩に彼女に出会わなければ、彼女を好きにさえならなければ、
その顔にキスさえしようとしなければ・・」
自分の犯した過ちを後悔し、少しスケベな自分にイラついてしまった。
「事務長は朝には俺の部屋に来るって分っていたのか。
それで、まだ打つ手があると言っていたんだな。
そうそう、そんな事よりティアラ、ティアラと・・。
おいおい、どこにも無いぞ、どこに持っているのだよ」
ベッドの回りを探してみてもケースは無く、床の上にもそれらしき物は見当たらないので、仕方なく無邪気に寝ている姫の体を探ろうとした。
「いかん、いかん、またこのパターンか。
さすがに寝ている女子の体を触るのは拙かろう。
それも薄着の女性だし胸元もチラチラ見えている。
朝は俺も元気がいいので少しでも触るともう我慢できない。
くっそ、我慢できない。少しなら事故と言う事で・・
でも、もし姫が目を覚ましたら・・
それに、特にあの件から俺には女性に関して信用がまったく無い。
変な事をしなくても誰にも信じてもらえない。
後で事務長達に何を言われるか・・でぇ、どうしようか?
そうだ、別の事を考えよう。真剣な事を考えるんだ」
そして俺は姫の胸を目の当りにしていたが、高鳴る気持ちを抑えるために別の事を考え始めた。
それにしてもあの時、姫の一言で俺はまったく動けなくなった。
こうも呪縛が効くと言う事は、姫はこちらでも強い能力者だと言う事になる。
そうなると姫の影響で俺の異能の力は増し体力の回復力も早くなる。
だが、普段は大人しい姫も月の夜に覚醒すると人格が変わり、
そして満月の夜は誰にも手が付けられなくなる。
そうなるとまた回りの皆に迷惑を掛けてしまう。
いやそれどころか、最悪こちらの世界が終わってしまうかも。
これからどうすればいいのだ。これ俺に何が出来ると言うのだ。
時刻を確認するとまだ朝の6時だった。
「くっそ、こんな時間に起きてしまった。早起きするとお腹が減るんだが。
いつもならまだぐっすり寝ている時間なのに、もう朝飯を食べないと・・。
でも、彼女が寝入ってからそんなには時間が経っていない筈だ。
それに昨夜はどこかで暴れてきて相当疲れている、
上手くすればこのまま夕方近くまで寝ててくれるな」
と明かりを消し光が入らないように雨戸や窓をきちんと閉めて、室温を低めに設定して彼女の寝易い環境にセットして俺は隣の部屋に移り事務長に連絡したが、未だ朝早いので当然彼は電話には出なかった。




