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次の朝、雨戸を閉めた筈なのに少し光が入り込んで眩しい。
それに窓の隙間から風が入ってきてカーテンがカタカタ棚引いている。
「あれ、おかしいな」と目が覚め、寝返りを打とうとして隣に誰かが寝ているに気がついた。
もしやと、薄明かりの中目を凝らすと姫がスヤスヤと横に寝ていた。
寝ぼけた頭で昨夜を思い返してみると、あのキスは、挨拶なんかじゃなかった。
マーキングして追って着たに違いない。あれだけで都内から俺を見つけ出すのか。
それに、どこから部屋に入って来たのだろうか?
確かに寝る前に雨戸と鍵はちゃんと閉めた筈だが。
姫に見つかったのでいつかはこうなる事は分っていたが・・。
さすがに翌朝とは想像以上に月夜の能力は半端じゃない。
もし昨夜が満月だったなら・・殺されていたかもとゾッと背筋が寒くなった。
「甘かった、姫の能力を甘くみすぎていた」と自分を責めたが、
これは夢かもしれないと、部屋の明かりをつけ再度確認した。
やっぱり姫が寝ている。
「これが現実か」
姫をよく見ると何があったのだろうか服は汚れているし汗臭かった。
どこかで暴れてきてエネルギーを発散してきたのだろうか?
昨夜は部屋で大きな音もしなかったので気付かなかったけど、
もしやと見回しても荒らされていなかったし、
窓やドアは壊されてはいなかったので少しホッとした。
「ひょっとして外でやっちまったか?」
嫌な予感がしたので直ぐにスマホでニュースを確認したが大した事件は起きていなかった。
姫が事件を何も起こしてはいなかったし、俺の横にいながら自分がまだ無事に生きている事が信じられなかった。
それにしても覚醒した時に出る膨大なエネルギーをどこで発散したのだろうか?
昨夜は確かに月が小さかったのでその必要が無かったのか。
それとも別の理由で・・その答えは直ぐには出なかった。
仕方がないので直接尋ねてみるしかないけど、姫は顔を近づけると無意識に噛み付く癖があった。それで俺も噛み付かれた経験があった。
「おーい、姫様。お休みのところ失礼ですが・・」と慎重に指でスヤスヤ寝ている顔を突いてみてもやはり反応が薄かった。
「それにしても相変わらず寝てしまうと起きないな。
寝顔はこんなに素直で可愛いのに、
あぁ、バンパイアの姫様で月夜に覚醒さえしなければなぁ・・
そしてよりによって俺に噛み付かなければな・・」と今度は顔を近づけて起してみたが、その寝顔は元々自分の好みなので少しスケベ心が出てしまいそうになった。