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笑いにおいで

作者: マスタリン

勝村という男は常に陰湿だ。なぜかというと陰湿な内容の作品集を作り上げるくらいだからだ。この前も陰湿な事を平気な顔で行っていた。作るどころか行動にまでうつしていたのた。その勝村という男は昨年結婚したようだ。噂では非常に気のきく可愛らしい奥さんらしい。勝村のどこに惚れたかを尋ねると、「あのたまに見せる素直さがかわいいの」との事。なんとも理解しがたい事である。


正直な話、勝村は見た目は男前で身長も高い。細身でスラッとした容姿で女にもモテる。髪型は立てられるくらいの短髪で軽く6対4でわけて後ろに流すように立てている。

色白で鼻筋も通っていてモデルのような容姿だ。ただ陰湿なのだ。それさえなければ。

しかし世の女性はそんな彼に対してちやほやしている。結婚しててもいい。むしろ結婚してる方がいい。三番目、四番目でもいい。抱かれたい。それほど勝村は美形なのである。陰湿さを除けば本当に完璧なのだ。いや、まだあった。勝村は実は動物、特に小型犬が大嫌いなのだ。小型犬を見ると虫酸が走ると同僚に呟いている時もある。もしも密室のなかで勝村と小型犬が居て誰も他に居なくて目の前にナイフがあったとしたら、勝村は有無を言わさず刺し殺すだろう。

そして彼は陰湿なのだ。何回もナイフを突き立てるだろう。

犬が完全に死んでも何回も何回もその毛むくじゃらの亡骸にナイフを突き立てるだろう。

ナイフが無かったらどうか?無論、無かったら蹴り殺すだろう。何度も何度も爪先で犬が血ヘドを吐こうとも蹴り殺すだろう。気がすむまで何度も。それくらい陰湿そして残酷な人間性を持っている。

さらに発想も狂っている。目の前で人が倒れてもなに食わぬ顔で素通りするだろうし、その倒れた相手が勝村の体に少しでも触れようものならば、おそらくそのまま掴みできるだけ硬い地面を選び引きずりながらも連れていき頭から叩き落とすだろう。そんな俺はどうなんだろうな。と同僚に呟いていたらしい。

それくらい陰湿で残酷な人間性なのだ。加えて用心深くズル賢い一面もあり他人を信用しない。そして他人を蹴落とす事も日常的だ。彼の口癖は「毎日がエイプリルフールさ。利益にならん他人などどうでもいい」

岩谷という勝村が唯一信用している人間がいる。友人とでも言おうか。岩谷は勝村とは違い、髪は常にぐしゃぐしゃで無精髭を生やし目は二重でパッチリだが眉毛も生やしっぱなしで、ゲジゲジ眉毛。おまけに角ばった輪郭をしていてお世辞にも男前だとは言えないタイプだ。しかし人間味あり部下の面倒見もよく優しく明るいさらに社交的な性格だからか、これがなかなか女にモテる。無論男にもモテる。そこは勝村とは違う。もう少し清潔感ある身なりにすれば勝村よりもモテるだろう。

岩谷は勝村の陰湿な所を更正させたいと思ってはいるが、なんせあのプライド高い勝村の事だ。指摘しようものなら真っ先に牙を剥いてくるだろう。いくら唯一の友人の助言だとしても、プライド高く他人に自身の事を微塵も言われたくない絵に書いたような自己中心的かつファシストな勝村だ。それを十分認識している為、岩谷は長年言い出せずにいる。しかし今日こそは言わねばなるまい。実は岩谷は今日で退職する。一月ほど前から退職届けを提出し丁度今日が最終日だ。自分で事業を起こす為の退職だ。その為に付き合ってた彼女との結婚を先伸ばしにしてほしいと懇願したが彼女は先が見えない不安にかられ岩谷との別れを選択した。頭ではわかっていたがどうしても成功するという保証がないからだ。悩んだ挙げ句の選択だった。岩谷もそれは理解していた。しかし岩谷は自分の力を試したいのと同時に雇われではなく自分の力で仕事を取り生活したかった。自分という人間がどれほどのものか?そうした中で死に物狂いで働き、遊ぶことなく出費も抑え徐々に資産を増やしついに目標額に達成した。それが一ヶ月ほど前だ。今日言わねばもう社内で言える人はいなくなる。上下関係などは関係なく、心を動かすという意味での言える人だ。唯一の友人であるからこそ彼もきっと今日こそは聞き入れてくれるはずだと半ば強引に自分に言い聞かせていた。そして岩谷はいつも通り淡々と仕事をこなしている勝村に声をかけた。

「今日仕事終わりに一杯やらないか?」

「いいよ。どこいく?いつもの駅前の飲み屋かい?」と岩谷の顔を見ず勝村は返した。

岩谷は軽い表情で答える。

「そうだね。」

そう言うと岩谷は胸の奥から噴き出しそうになる感情を抑えつつ慎重に続けた。今この場で言うべきではない。飲み屋でお互い気持ちも解れた時に言おう。この勝村のそっけない返事を聞くと毎回言いたくなっていた。

「今日は大事な話もしようと思う。大した話ではないが君の為でもあるんだ。だから真剣に聞いてほしい。」岩谷の声は多少震え気味であった。今にも出そうな感情をこらえていた。すると勝村は変わらず岩谷の方は見ないで仕事しながら返した。

「ふーん。そうかい。」

岩谷はその返事を最後まで聞いてないくらいのタイミングで勝村のデスクから離れ自分のデスクに戻った。第三者目線で見ると仲が良いとはとても思えないくらいのやり取りだが、これは日常的で十分仲が良いのだ。仲が良くない者に対する勝村は返事すらしない。上司に対してさえも半分無視しているような態度だからだ。それくらい勝村という人間は変わり者なのだ。

「あ、ちょっと待って!」

岩谷に甲高い声で呼び止めたのは上司の高橋だった。

「岩谷君、先月の会議の報告書まだ提出してもらってないけどできてる?」

岩谷は爽やかに答えた。

「知らねぇーッス!」

あまりにも爽やかかつ元気の良い返事だったので高橋は何も言い返せなかった。

「き、今日で退職なんだから。こ、困るなあ、、、」

とうつむき加減で呟き自分のデスクに戻った。そこに勝村が割って入った。

「高橋さん!そういうあなたも先月の決算書未提出ですが!?」

勝村の鋭い一言が高橋の心をえぐった。

「も、もうすぐ完成するからちょっとだけ待ってね」

クソがッ!

ついつい大声で罵声を浴びせてしまったが勝村に何も悪びれた様子はなくまた淡々と仕事を続けた。その後すぐ岩谷がさらに高橋に続けた。

「自分ができてねーのに人に言ってんじゃねーよ!」

高橋は涙を流し答えた。

「俺、上司だよ?」さらに勝村が言う。

「だったら上司らしい振る舞いを見せな!」その瞬間に岩谷は

「だからいつまでも係長なんだよ!」

高橋はおもむろに窓を開けて下を覗きこみ言った。

「さようなら、、自分、、、」

すると高橋は窓から飛び降りた。岩谷は毎度の事だと思い呆れていた。

「一階から飛び降りて自殺できるとしたら頭から思い切りいかないとな」

「ほっとけ奴は病気だ」と勝村

またあの日のように、あの切ない日々をこれを読んでる人へ



笑いましょう

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