表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

クリーンエネルギー

作者: 水木 誠治

 二十世紀の終わり頃から叫ばれ始め、それから一世紀近くたってもなお、人類の抱える由々しき問題は、エネルギー資源の枯渇だった。

 石油・石炭といった旧エネルギーが枯渇してしまったのは無論であり、前々から新時代のクリーンエネルギーと目されていた太陽エネルギーも、種々の問題から結局は実用化には至らなかった。現代の主要エネルギーは核融合によるものだが、過去に一度、高濃度の放射能を漏らすという致命的な不祥事をおこしてから、核融合発電に反対する声が日増しに高まり、いま以上に核融合発電を増大させるわけにはいかなかった。

 しかし、人類の困窮の日々も、偉大なる科学者の発明で終わりを告げることになる。

「――この装置が新しい発電機というのかね?」

 国務大臣は、かねがね新エネルギー開発に携わっていた有能な科学者に訊いた。

「そうです。これがクリーンで無限のエネルギーを生み出すのです」

「ほほう、さてどのように使うのだろう?」

「まず、その椅子にお掛けになって、これを頭に被ってください」

 と、科学者は国務大臣にヘルメットのようなものを渡した。

「ふむ、これでいいのか。でもどういうことだ。こんなことをして電気が得られるのか?」

「ええ、すでにもうかなりの電気エネルギーが得られていますよ」

「まさか体内の静電気を集めて――」

 続けようとする国務大臣を遮り、科学者は首を振った。

「これは、人間の邪な欲望を電気エネルギーに換える画期的な装置なのです」

「失敬な。それでは私が欲望の塊だと言っているようなものだ!」

「誰でも、たとえ聖人であっても欲望や邪心はもっているのです。百億を超える人間の欲望は無限といってよいでしょうし、欲望をエネルギーに換えるのですから、まさにこれは、二重の意味でクリーンと呼ぶにふさわしいエネルギーでしょう」


 しかし、その無限と思われていたエネルギーも、やがて枯渇する時代がくる。


 大きな風車が建ち並ぶ、のどやかで広大な草原。そこに小さな集落をつくって、邪心をもたない人類が自然との調和を保ち暮らしていた。

 もう莫大なエネルギーはいらない。

 風車の生み出すエネルギーで十分なのだ。



〈了〉


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ