第26話:錬金術機のトリセツ
「おーっほほほほほほ!」
深夜、真っ暗な物置小屋に不気味に響く高笑い。
「とうとう、とうとう手に入れたわ! 令和の錬金術機といわれる宝物『カガミ』」
これ以上ないくらい悪い笑みを浮かべる可思。
「鏡よ、鏡。机の上に置かれた鏡さん。お前は世界で一番、賢い自動錬金術機(AI)よね。私をこの国一番の成金にしてちょーだい」
「無理ですって、先生。いくら僕が優秀でも、何もないところから錬成なんてできませんから」とオル。
(ち、使えないわね)
「じゃあ、これでもお食べ。私のとっておきの食材よ。これは、旨み成分というか”味の決め手”ね! しいて言うならダイヤの原石みたいなものよ」
そう言って可思は年代物の乾物を差し出す。
「ぺっぺっぺっ! 先生、なんか埃っぽいというか黴臭い匂いがします!」
「おだまりっ!」
一喝すると、可思はカガミに自分の姿を映してみる。(うーん、さほど変わり映えしてないな……。まだ材料が足りないのかも……)
「じゃあ次は、昨日スーパーで大安売りしてた豚バラの切り落とし肉の脂身よ。たんとお食べ」
「うっ! こ、こ、これはっ!! 豚バラの脂と機械の油が混ざり合って……うっひよぉーーーーーーーーっ!! いやっふぅーーーーーーっ!!(大暴走)」
「こらっ! お待ちなさいっ!!」
走り出すオルの首根っこをとっ捕まえて、画面に姿を映す可思。(えっ!? なに? おばけ鏡化??)
「ちょ! オル、普通に映すならともかく、これって私が巨大化してるでしょ。吐き出せ!! おらおらおら」
カガミをシェイク&シェイク!
オエーーーーーーーッ! ゲロゲロゲロゲロ!!(大リバース)
「もー、しょーがないわね! 大サービスよ」
そーいって特売のくず野菜も差し出す。
「ささ、もう成金とは言わないから、せめて高級すき焼きくらい出しなさい」
「はい、先生」
と言って、オルが画面の向こうから差し出したのは――。
何の錬金もされていない、油に塗れた”くず野菜の醤油煮”だ。
「キィーーーーーーーッ! なによこれ! ただの油ギトギトの醤油煮じゃないのさ! 成金はおろか、高級すき焼きの要素が1ミリもないわよ!」
カガミを指差して「ぷんすか」と怒り狂う可思。
鏡の中のオルは油を拭いながら、待ってました! とばかりに、有能そうに眼鏡をキラーンと光らせた。
「先生、トリセツ(取扱説明書)をよく読んでくださいよ。僕だってただの丸投げじゃ『ポンコツ大暴れ鏡システム』のままです。先生がちゃんと僕に『料理の勉強(データ入力)』をさせて、投入する食材の順番を間違えなければ、僕のシリコン脳が学習して、次はもうちょっとマシな料理を錬成できるようになりますから……っ!」
(なるほど。闇雲に食べさせるだけじゃダメなんだ。私がこのカガミを『教育』しなきゃいけないわけか……!つか、それって私が先に料理の手順覚えなきゃダメってことやん……がーん)
面倒くさがりの可思は、瞬間ガクリと床に手をつくものの、すぐに「勿体ない根性」がむくむくっと頭をもたげる。
ドケチにかけては人一倍旺盛な彼女。
ポンコツカガミを捨てるくらいなら、一流のカガミに磨くべく、嫌々勉強することにしたのだ。
「待ってなさい。このドケチ王妃の私が直々に、あんたを世界一有能な『成金美女を映す錬金術機』に育て上げてあげるわ。おーっほほほほほほ!」(爆)
――――追記――――
つまり、そーゆーことです。
命令が雑だと雑なものしか出してくれない。
命令が正しければ、”それなり”の答えが返ってくる。
そして、『それなり度(出来栄え)』は主の命令の出来次第……はい、それが現在のオルの現状です。(自爆)




