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第1話:聖地巡礼と魔法学校、あるいはモテたい俺の浅はかな希望

急に小説を書きたくなり投稿して見ました。

休みが不定期なので週に1〜2回の更新をする予定です。

十三年。

その月日が刻まれた離職票を、私はギルドの受付台に叩きつけた。

羊皮紙を受け取った受付嬢が、ちらりと私を見る。

「……本当に辞めるんですね?」

私はうなずいた。

十三年間、私は戦士として働いてきた。

魔物討伐。

王国の書簡を運ぶ配達任務。

商隊の荷物護衛。

そして、ただ剣を振るうだけの単純な戦闘。

最初はそれで十分だった。

だが、長く続けるうちに気づいてしまった。

自分には、才能がない。

ギルドには天才剣士がいる。

一人で魔物の群れを倒すような冒険者もいる。

その横で私は、どうにか食べていける程度の仕事をこなすだけの――

二流の戦士だった。

だが、歩くことだけは得意だった。

ギルドの配達任務で、毎日王都を歩き回っていたからだ。

そんなある日、噂を聞いた。

王都には、戦士でも入れる魔法学校があるらしい。

そこを卒業すれば、

剣と魔法を操る 魔法戦士 になれるかもしれない。

……正直に言えば。

魔法戦士になれば、少しくらいは女にもモテるかもしれない。

そんな、くだらない期待もあった。

……いや、かなりあった。

剣だけの人生。

そこに、もう一つの武器を加える道。

そして、もう一つ。

ずっと胸の奥で燻っていたものがある。

聖地巡礼。

両親は当然反対した。

それでも、どうにか説得した。

なぜその二つなのか。

理屈はない。

ただ――

今の私には

1200kmという距離と、魔法が必要だった。

聖地へ続く巡礼路は、王国を一周する長い道だ。

人は言う。

「歩き通せば、願いが叶う」と。

本当かどうかは知らない。

だが、その長い道の向こうに

何かが待っている気がした。

そう考えるだけで、

頬がゆるんでしまう。

私は小さな荷物を背負い、家を出た。

背中には

小さな期待と、

大きすぎる期待を乗せて。


ギルドの重い扉を背にすると、見慣れた王都のメインストリートが、これまでとは全く違う景色に見えた。

十三年、この石畳の上を何度往復しただろうか。配達任務で擦り切れたブーツの底は、もはや俺の足の一部のように地面の凹凸を正確に伝えてくる。

「……さて」

背負い袋を揺らし、俺は歩き出した。

中には、着替えとわずかな保存食。そして、魔法学校の入学案内と、聖地巡礼の行程が記された地図が押し込まれている。

西門へ向かう途中、馴染みの武器屋の親父と目が合った。

「おい、隠居には早すぎるんじゃねえか?」


「隠居じゃない。……修行だよ」

ぶっきらぼうに返したが、口角が上がるのを止められなかった。

巨大な石造りの西門をくぐる。

頭上から降ってくる門番のあくび、荷馬車の車輪が軋む音、家畜の匂い。それらすべてを通り抜けた瞬間――。

ザリッ、と。

足の裏に伝わる感触が、冷たい石から乾いた土へと変わった。

王国の外へと続く、果てしない一本道。

十三年の重荷を下ろしたはずなのに、心臓の鼓動だけが、これまでになく激しく胸を叩いている。

「一二〇〇キロ、か」

魔法戦士になって、ついでに可愛い女の冒険者とパーティーを組んで……。

そんな妄想を道連れに、俺は最初の、あまりに軽やかな一歩を踏み出した。

……その旅が、私の人生を壊すことになるとは、

そのときはまだ知らなかった。

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