戦場に咲く純白の薔薇【始】〜天才騎士〜
前話(エピソード8)について
投稿後一時間、タイトルを間違えて投稿していました。
純白の戦姫→冒険者協会
誤解をしてしまわれた方、本当に申し訳ございませんでした。
今僕は、イレーネの門から少し先の、森の近くの草原に居る。
ハネストに依頼任務の受け方を聞くと、試しに一つ受けようと言われ、その任務でこの草原に来た。
「スライムの群れの討伐ですよね?」
「そうだよ」
「ヘルンには簡単すぎるだろうけど、色々説明したいしね」
「なるほど、ありがとうございます」
「あ、あそこにいるよ!スライム!」
「ほんとですね!」
まあ気配で気づいてはいたが...
「目標を見つけたら、まずはそれが依頼のものと同じかどうか確かめるの」
「今回は大丈夫そうだね」
「次に、依頼をこなす」
「じゃあ、あれ倒してくれる?」
「はい」
草原に影響を与えないように、斬撃魔法をスライムに放った。倒された魔物は、空気に溶ける。
「よし、じゃあ魔石を回収しよう」
「魔石については知ってる?」
「はい、鉱山や、地中の奥深く、後は魔物の中にある、魔力の籠った石ですよね」
「そうそう、それを冒険者協会に持っていくと、依頼達成確認と、魔石買い取りをしてくれるから、取り忘れちゃダメだよ」
「分かりました」
魔石を取り、冒険者協会に戻ると、初任務達成を受付嬢の人とハネストから祝われた。
簡単だったから達成感はあまりないけど、嬉しかった。
宿は、冒険者協会が運営する場所に泊めてもらった。
ずっと森に篭っていてお金を持っていなかったから、アンドレイアさんが手配してくれたのだ。
ハネストとアンドレイアさんには感謝しかない。
次の日、朝起きると、外が騒がしかった。
一階に降り、宿の受付の人に聞いた。
「この騒ぎはどうしたんですか?」
「あぁ、この世界の守護神様が決まったらしいよ」
「ヘルフェン・カリタス様というらしい」
「最近は国の間も良い雰囲気ではないからねぇ」
「いい人だといいねぇ」
少し歳を召した女の人は、懇願するようにそう言った。
頑張らなくては。
「守護神降臨祝祭は、三日後に帝国で開催されるらしいよ」
「え?」
三日後?聞いてないけど。そんなに早いの!?
死神は時空を行き来するから、たまに時間感覚が狂うんだよな...師匠...三日でどこを回れと...
「そうなんですね、ありがとうございました」
宿を出ると、目の前にハネストが居た。
「おはよう!ヘルン!」
「待っててくれてたんですか?」
「ちょっとだけね」
「それより、守護神様の話聞いた?」
「さっき受付の人に聞きました」
「そっか...」
彼女はまた、少し悲しそうな顔をした。
ごめん...
「どんな人なんだろうね、ヘルフェン様って」
あぁ、なんだろう、すごく気まずい。
穴があったら入りたい。
「さぁ...どうなんでしょう」
「ん?体調悪そうだけど、大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
「それより、守護神降臨祝祭ってどんなことするんですか?」
「基本的にメガロス帝国が開催するんだ」
「大きくて豪華な降臨台を国の中央に造って、みんなでそこに向かって祈ると、そこに守護神様が降臨するみたいな」
「伝統では、祈りの間に守護神様が降臨するって決まっているから、実際は守護神様って話したりできるらしいんだけど、あえてそれまでは守護神様に挨拶も何もしないんだってさ」
「なるほど...」
「挨拶もなしに急にここに降りてきてくださいなんて、失礼だよね」
本当にそうだよ!!!
「まあまあ...」
「実は私もね、帝国に呼ばれてるの」
え...え?
「私、イレーネ王国の軍隊長だからさ、守護神降臨祝祭の、軍団祈祷に並ぶの」
「え、ハネストって軍隊長だったんですか!?」
「そうだよ、あれ?言ってなかったっけ」
この世界の人はみんなこんなに忘れっぽいのだろうか。いや、師匠はこの世界の人とは言えないのかな。
まあいいや。
「その歳でそこまで登り詰めるなんて、流石だね」
「はは!そうでしょうそうでしょう」
「ってうそうそ、こんなこと言ってたら師匠に怒られちゃう」
「師匠?」
「うん、帝国の軍隊長の、凄い人なんだよ!」
「そうなんだ...」
師匠...会いたいな...
その時、国中に野太い笛の音が三回鳴り響いた。
「ヘルン!今すぐ国の中心部に逃げて!」
「この笛は、石壁の外に、国に甚大な被害を及ぼす可能性があるものが現れた時の合図なの!」
「私は軍に戻らなきゃ行けないから、急いで逃げて!」
「ハネストは大丈夫なんですか?」
「大丈夫じゃなくても、国のための命を張るのが騎士よ」
「じゃあね、早く逃げるんだよ!」
そう言うと、彼女は白い隊服をなびかせながら、逃げゆく人混みの中に入って行った。
威勢を張った彼女の顔には、大きな勇気と少しの恐怖が感じられた。
僕はまだ降臨していない、か。
降臨してないとしても、これは放ってはおけない。
だけど、無理に出ていって、僕がやられてはこの先この世界がどうなるか分からない。
とりあえず、情報を集めなければ。
人混みから少し離れた路地裏に行くと、誰も僕を気に止めることはなかった。
そこで、地面を思い切り蹴り、国全体を見渡せる高さまで飛んだ。国の門付近には、軍隊の人達が整列し、出撃の合図を待っていた。先頭には、馬に乗った白い隊服の騎士が、剣を片手に門を見つめていた。
ハネスト、緊張してるんだな。いくら僕より年上でも、こんなのは怖いよな...
僕は基本的に死なないからそこまで怖くは無いけど、
悪魔との戦いを思い出すと、今でも体が震える。
彼女の恐怖心は、理解に易かった。
人々が混乱しながら国の中央に走る中、僕が来た森の方から、空気をもゆらす振動が、徐々に聞こえてきた。
視力を強化してそちらを見ると、魔物の大群が、イレーネに向かって突進してきていた。
その数は、十万を下らないようだ。
「なるほどな...」
この大群をこの国の軍隊だけで対応するのは不可能に思えた。
この旅が終わるかもしれないけど、助けるしか無いか。
そう思った瞬間、門の付近から巨大な魔力を感じた。
「なにこれ!?」
驚いてそちらを見ると、ハネストが氷属性魔法の最上級魔法、アイスブリザードを展開していた。
アイスブリザードは、効果範囲に魔法を作用させる領域魔法の一種で、効果範囲に鋭い氷が吹き荒れる、氷属性最大火力の魔法だ。
しかし、アイスブリザードは、その火力の代償に、とてつもない魔力を消費する。範囲が広がれば、それにより魔力も増大する。
人間である彼女に、そのような事が出来るのだろうか。
そんなことを考えている間に、彼女が石壁の前に魔法の範囲を決めだした。
魔法陣が、森の近くの草原にどんどん広がっていく。
それは、もはや人間業ではなかった。
「ハネスト...あなたは何者なんですか」
死神である僕からしても、それは素晴らしいものだった。
魔法を発動している間、彼女は純白に光っていた。
その姿に、出撃を待つ兵士達も見入っていた。
魔物たちが、次々にその魔法の効果範囲に入って行く。
その魔法の威力は、これだけの範囲に拡張しても、魔物を屠るのに十分だった。
魔物の大群は、彼女の魔法により、この国の軍隊でも対応可能な数にまで減った。
「これは、僕の出番は無さそうだな」
「後で怒られるのもあれだし、僕も逃げるか」
その時、またしても門の方向から膨大な魔力を感じた。
しかし、それはハネストのものではないようだ。
アイスブリザードを放った彼女は、体力が尽き、倒れていた。
「彼女のものじゃないなら、この魔力はなんだ!?」
すると、またも森付近から大きな振動が伝わってきた。
それは、地上の王、ミスリルゴーレムだった。
近くに居る者の空を覆い隠すかのようなその巨大な体は、この世界で最も硬いとされているミスリルで出来ている。
兵士達が放つ魔法や弓は、ミスリルゴーレムの動きを一瞬たりとも止めることは出来なかった。
魔物の大群は、これによるものだったのか...
あれは僕でも骨が折れるよ...
これが、異常ってやつなのかな。
異常に対応するのは守護神の仕事ねえ...
悪魔に続いてミスリルゴーレムって、ついてないなぁ。
「さ、被害者が出る前に」
「一仕事しますか」
次話は、2025年8月23日12時に投稿します!
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