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憑依

「戦うとは言っても、あなた、勝てると思っているの?」

「確かにあなたは強いわ」

「でも、私は今何億もの魂を手にしている」

「魂一つ一つに強い魔力が宿っているのはあなたも知っているでしょう」

「もちろん」

「それだけですか?」

「それだけって...どうやって私に勝つつもりなのです?」

「確かに今、あなたは歴代の神王の中でも最大の力を有しているかもしれない」

「しかし、改善を捨て、破壊に逃げた者に、僕は負けない」

僕の挑発の言葉に、テアは怒りを露にした。

「その傲慢さ、冥界で悔いるといい!」

宙に浮いたテアが、魔力を練り出した。

神聖属性の乗った魔力の塊がどんどん大きくなっていく。

まともに食らったら、僕でさえも塵一つ残らない。

同じ火力の魔法で対抗する方法もあるが、それをしてしまえばみんなが危ない。

みんなにも引いてもらった方が良かったかな。

いや、土壇場で、必ず仲間が必要になる。

だとすれば、今僕に出来ることは...

「レベリオン」

天に右腕を掲げるテアの頭上に、無数の槍が現れた。

神聖魔法で構築された槍は、白く輝き、僕の身体を射程に入れた。

テアが右腕を僕の方向に振り下ろした時、聖槍は高速で動き出した。

全身に強化魔法をかけ、走り、飛び、薙ぎ払った。

全力で避け、切り落としても、次々に聖槍が身体をかすった。

このままでは物量で抑え込まれてしまう。

「ジャッジメント、五連撃」

単体攻撃では最上級の火力であるジャッジメント。

その五連撃は全てテアに直撃した。

しかし、それはすぐに魂の力により修復され、テアは無傷のままレベリオンを展開し続けている。

宮殿が崩れる前に決着をつけなければ。

そう思った途端、避けたはずの槍が方向を変えて僕の方に突進してきた。

顔面ギリギリでそれを避けると、それ以降槍はどんなに避けても永遠に僕を追いかけた。

死との境界線で避け続けていたが、ついに限界に達した。

目の前から真っ直ぐ槍が飛んでくる。

もう避けきれない。

終わったか...

その時、僕の周りを飛び回っていた槍が吹き飛んだ。

闇属性魔法と氷属性魔法。

振り返ると、みんなが僕の背後に居た。

「まだ終わってないぞ」

「ほら、また来るわよ」

それによって、聖槍の攻撃対象は僕ら全員となった。

しかし、そのおかげで僕への槍の数は減り、動きやすくなった。

みんな、各自の方法で槍を跳ね返している。

「ヘルン!みんながもたなくなる前にテアを倒して!」

ハネストが魔法を展開しながら叫んだ。

僕もそうしたいところだが、数が減ったとはいえ、僕に一番多く槍が飛んできており、避けることは出来ても攻撃に転ずる程の余裕はなかった。

一瞬の隙さえあれば...

そう考えたところで、もう形勢を変えるものは無い。

急がないと、みんなの魔力が尽きてしまう。

その時、槍の飛んでくる場所に次々と謎の物質が形成され、槍を跳ね返しだした。

それは一撃で破壊されてしまうものの、何度も現れ、僕に飛んでくる槍は一気に減った。

「師匠!少ししかもちません!」

そうか、これはネロが...

ネロ、ついに創造魔法を完全に習得したんだな。

「後は、任せて」

全力でテアとの距離をつめる。

それは、時が止まったようにすら見えた。

テアが反応する前に、僕の右手がテアに触れた。

今、周りには無限に思えるほどの魔力が漂っている。

「ディバインプロビデンス」

一瞬のみのディバインプロビデンス。

これ以上長くすれば、テアもみんなも死んでしまう。

この極限の瀬戸際の中で、僕はテアの持つ魂をテア自身の持つものを除いて全て破壊した。

レベリオンは崩れ、テアは地面に倒れた。

身体が修復されると、テアは体を起こし、周りを見回した。

「何故、私は生きているのですか」

「だから、言ったじゃないですか」

「あなたが必要だと」

「ですが、私は...」

「もういいですから、やめましょう」

「あなたの過去の経験、現在の神界の状況はよく分かりました」

「私は、それを許すつもりはありません」

「生命の誕生、私との神界の改革」

「やることは沢山ありますよ」

「世界を壊すのは、それが終わった後でも遅くないのでは?」

そう言うと、テアは笑いだした。

「そうですか、確かにそうかもしれませんね」

「破壊に逃げた、その通りです」

「まだ、この世界を変えられる、のですかね」

「はい、きっと、変えられますよ」

「その前に、罰を受けなければなりませんね」

テアは微笑みながら言った。

「あなたに罰を与える人など居ません」

「僕も、恐らくハデス様も、あなたに罰を下そうだなんて考えませんよ」

「ありがとう、でもそれじゃ、私はこの責任を負いきれないわ」

「なら、一つだけ」

「これからはもう、僕達は友達です」

「何かあれば、何でも話してください」

「それ、罰なの?」

「はい、僕が言うんだから、きっとそうです」

「ふふ、傲慢ね」

「でもまあ、そう信じてみようかしら」

「はい」

そうして大戦が終焉を迎えようとしていた時、どこからか声が聞こえだした。

「テアよ、止まるな、全てを破壊せよ」

なんだ、この声は...

その時、テアが再び飛び上がり、レベリオンを放ち始めた。

その目には、赤い涙が垂れていた。

もう余分な魂は残っていない。

つまり、テア自身の魂を消費している。

長時間続けば、テアは全ての魂を消費して消えてしまう。

しかし、命を引き換えに出したことで、先程とは比べ物にならない程の量と力。

みんなもとっくに魔力を使い切っている。

次々に僕の体に槍が刺さる。

みんなを守るために、倒れる訳にもいかない。

意識が朦朧としてきた。

その中で見えた、新たな力の断片。

「支配領域・神の御前」

僕の視界にあるものは、攻撃を一切許されず、僕の攻撃は大幅に力を増す。

恐らく今、テアは何者かに体を乗っ取られている。

しかし、肉体に攻撃を与えては、テアが死んでしまう。

どうしたものか。

そういえば、前にフィリアにもこんなことがあったな。

あの時は、フィリアが自ら出てこれたけど。

今のテアにその力は無い。

今テアがテアでないのは、精神だけ。

あぁ、そうだ。

「オディーニ」

精神攻撃魔法の最上級。

これなら、犯人に直接攻撃をねじ込める。

数秒も経たず、黒い人影がテアから出てきた。

「ちょ、ちょっと待ってくれ、敵対する気は無いんだ」

その謎の人影が怯えながら言った。

「ほう、喋れるのか」

「あぁ、これからお前の元につくから、見逃してくれないか」

「ほら、な?」

「ネロ、こいつの魔法は興味深い」

「好きに研究するといい」

「いいんですか!」

「うん、ネロならきっと、悪用しないからね」

「ありがとうございます!」

「ど、どういうことだ!」

ネロがその人影に近づく。

「僕がいっぱい調べてあげるからねー」

「た、助けてくれ!」

その声に答えたのは、ネロの笑い声だけだった。

テアの近くに行くと、意識は無いものの、生きているようだった。

「良かった」

テアを担ぎ上げ、宮殿の出口の方を向いた。

「さぁみんな、帰ろう」

ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

次話は、2026年2月5日に投稿します!

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