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隠密行動

第一軍団はナシタ到達後最上級隠密魔法を纏い、潜入を開始した。

しかし、行動を開始する前に一つ懸念点があった。

「隠密だから目には見えないんだけど、魔力は比較的隠しにくいから、天使の近くにずっと居るとばれちゃうんだよね」

「じゃあどうするの?」

「もちろん、魔力を感知できない速さで宮殿まで通り抜ければいいんだよ」

「え」


「左前方十一体、右前方十三体!」

冷たい空気が頬を擦る。

大戦用に新しく仕立てた服は、音を立てずに激しく靡いた。

テア宮殿まで数千体の天使が巡回している。

隠密魔法がかかっていると言っても、ぶつかれば流石にばれる。

敵の居場所と人数を都度報告しながら高速飛行を行う。

危機感と爽快感が入り交じり、どちらにしろ心は高揚した。

しばらくすると、いかにも天使らしい、神々しく輝く純白の宮殿が見えた。

門には他の天使とは異なる、重装備をした騎士のような天使が二人、門番として立っていた。

恐らく、場内にも相当な数の騎士が居るだろう。

隠密魔法で切り抜けたいところだけど、死神の僕たちは置いておいて、ヘルフェンファミリーのみんなは門を開けずに通り抜けるなんてことは出来ない。

はぁ、強行突破しかないか。

「隠密魔法は解かないけど、どちらにしろここからは敵を掃討しなきゃならない」

「みんな、戦闘準備をして!」

死神はデスサイズを構え、悪魔組は槍、ハネストは剣を手に取った。

門番を瞬殺し、僕らは宮殿の大広間、神王テアの玉座へ向かった。

道中で約百体の天使を倒し、僕らは大広間の目前に着いた。

大広間へ繋がる最後の扉を守る天使の首が床に落ちた。

重苦しい扉を守る者は、もう誰もいなかった。

「さぁ、行こう」


扉を開くと、寂しいほどに大きい広間の奥に、白い翼の装飾が輝く玉座があった。

そこには、神族の裏切り者が座っていた。

「ほう、精鋭達を集めて守らせていたのにどんどん連絡が取れなくなったと思えば」

「あなたの仕業ですか」

「あなたならば、確かにあの程度の兵では敵ではありませんね」

「何故、神族を裏切ったのですか」

「何故も何も、天使は神族ではありませんからね」

「やはり、そうでしたか」

エルが教えてくれた、天使、死神、そして悪魔の始まりについて。

初め、死神と対になる、天使ではない種族が居た。

生神、人々の生命を司り、誕生させた。

天使は元々、生神の使いで、各地に赴き生命を守る任を担っていた。

天使と対となっていた悪魔を倒すのも、その任の一つだった。

だがある日、生神との上下関係に不満を持った天使は、総力をあげて生神に挑んだ。

その頃は死神と生神は対立しており、生神は死神と天使の二勢力から攻められたことにより、滅んだ。

天使は生神を倒したことで生命を誕生させる力を得て、死神と協力を誓った。

だが、死神の配下だった悪魔は今まで敵だった天使と仲間になることを受け入れられず、悪魔と現在の神族で争うようになったそうだ。

天使の戦闘力が低いのは生を司っているからでは無い。

単純に、死神とは種族も、格も、元より全く違うものなのだ。

「それは知っていました」

「ですが、それがなんだと言うのですか」

「生神を殺したのはあなたではない」

「あなたはもう生と誕生司る神族の一員です」

「なぜ今更、死神を裏切ったのですか」

「さあ、何故でしょうね」

「まだ、間に合います」

「ハデス様も、あなたが必要だと言っている」

「死神には出来ないことが、あなたには出来ます」

「もう、やめませんか」

「新参の死神さんには分からないでしょうね」

「死神として生まれた者、天使として生まれた者、そこには大きな差がある」

「生まれた時からある圧倒的な格差」

「きっと、生神を倒した先祖も同じことを考えたのでしょうね」

「何を言っているのですか?」

「私がずっと目を閉じている理由が分かりますか?」

確かに、テア様はいつも目を閉じていた。

「いえ、分かりません」

「小さき頃、同世代の死神に切られ、もはや何も見ることは出来なくなりました」

「えっ」

「わかりますか?」

「同じ神族と言いつつも、死神の中には確実に天使を軽蔑する意識が根を張っている」

「だから、生神と同様、死神を滅ぼそうと考えたのです」

自分が知らないところで起こっていたことに驚き、僕は言葉を発せられなかった。

「はぁ、もう話は終わりにしましょう」

「神王ヘルフェン・カリタス」

「あなたに決戦を挑みます」

結局、こうなるのか。

「嫌だと言ったら?」

「なら抵抗せずに死ぬといい」

「あなた、本当に天使ですか?」

「さあ、もう自分が何かなんて私にすら、分からないわ」

そう言うと、テアは一気に魔力を解放した。

無数の魂を魔力に変換したことで、その魔力量は死神すら恐怖させた。

第一軍団には死神の中でも特に優れるものが配置されているのにも関わらず、床に膝をついてしまっているものも居る。

僕でも、ちゃんと立っているだけで精一杯だ。

これが、絶対的力への恐怖...

仕方がない、このままでは仲間が滅入ってしまう。

日頃から行っている魔力制限を全段階解放した。

これはこれで、解放感がある。

僕の魔力とテアの魔力がぶつかり合い、その衝撃波で髪が靡く。

死神達は少し圧力がマシになったのか、みんな立ち上がり始めた。

ハネストが心配だったが、人間であるのに一度も姿勢を崩すことはなかった。

流石だね。

「死神の皆さん、ここまでついてきてくれてありがとうございました」

「もうテアは見つけました、皆さんはハデス様達の援護に行ってください」

「後は、僕と家族にお任せ下さい」

この魔力の押し合いで認めてくれたのか、一刻も早くここを離れたかったのか、死神達は命令に従いすぐにその場を離れた。

「さあ、これで邪魔は無い」

「神王テア、心ゆくまで戦いに付き合いましょう」

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

次話は、2026年2月1日に投稿します!(ズレる可能性あり)

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