決戦前夜
神王テアの戦争を目前に控える中、僕はヘルフェンファミリーのみんなを集めた。
いつもよりも迅速に集まったみんなの表情には、恐怖と覚悟が宿っているようだった。
「みんな集まってくれてありがとう、次集まるのは恐らく出動の時になると思う」
「最後に色々確認しようと思ったんだけど、その前に一つ」
「僕が魔力を塗り替えた、フィリア、フィオナ、ヤブラン、アイシーは、天使の魂を攻撃出来るかもしれない」
「なんて言ったって君達には今死神の魔力が流れているからね」
「なるほどな」
フィリアが顎に手を当てて頷く。
「まあ、どちらにしろやることは変わらないということで良いのか?」
「うんでも、多分魔法一撃じゃ魂を完全には破壊出来ない」
「僕でも出来なかったからね」
「魂が破壊された後に肉体を破壊すれば、天使は完全に消滅するはずだよ」
「分かった、頭に入れておこう」
「うん、じゃあ後は作戦行動の大体の流れを確認して、みんな各自の準備に戻ってもらう」
「そのことなんですけど!」
ネロが緊張を振り切るように言った。
「僕から提案があって」
「いいよ、言ってみて」
「今の作戦では、第一軍団が天使の世界と言われているナシタへ先制攻撃を仕掛けるというものだと思うんですけど」
「恐らく、神王テアも近々大戦が起きることを予想して自分の身を隠していると思うんです」
「なので、いきなり攻撃したとしても、天使は奇襲できても本命の神王テアにたどり着けない可能性があると思います」
確かに、一理ある。
神王テアの撃破を目的とするこの大戦で、神王テアの居場所を特定出来ないのは致命的だ。
「なので、最上級の隠密魔法で第一軍団全員を隠し、天使との戦闘は他の軍団に任せて、第一軍団は神王テアの捜索にあたるのがいいと思うんです」
「ふむ、なるほど...」
「あ、いや、経験の少ない僕が口を挟める話では無いですよね、ごめんなさい」
「ううん、いいんだ、それで行こう」
「え?良いんですか?」
「うん、もちろん」
「ネロの言う通りだ」
「相手は神王だからね、奇襲であっても辿り着く前に姿を隠されてしまう」
「それなら、うちが大戦より早く潜入して、神王テアを捜し出すのがいいだろう」
「ネロの言う別行動作戦だと、どちらにしろ神王テアは隠れてしまう」
「第一軍団の時間差行動の方が成功率が高くなるだろうね」
「でも、本当に良い案だよ」
「ネロが提案してくれなければ、神王テアに隠れられていたかもしれない」
「い、いえ、そんなことは」
「自信を持つといい、ネロはきっと良い宰相になれる」
「フィリア、危機感を持たないといけないね」
「燃やすぞ」
「だがまあ確かに、これではいつネロに立場を退かされるか分からないな」
「いえ、いや、やめてくださいよぉ...」
家族に一笑いが生まれたところで、僕は作戦をまとめた。
「じゃあまとめるよ」
「まず、第一軍団は大戦が始まる前にナシタへ潜入して、神王テアを捜索する」
「見つけられて撃破出来たら大戦も起こらずこの件は終わり」
「撃破出来なくても、神王テアに逃げられることは無くなる」
「見つけられなかった場合は、最初の作戦のまま!とりあえず天使を倒すことで神王テアの戦力を削ぐ」
「何か分からないことは?」
「無い」「無いよ!」「無いです」
「よし、じゃあちょっとハデス様達に伝えてくるから、みんなは各自潜入の準備に入るように!」
「了解」
ー神王特権・契約者の声ー
はぁ、また使うことになるとは...
「緊急会議を開きます、公爵位以上の者は必ず出席して下さい」
「場所は、ヘルフェン宮殿会議室です」
しばらくすると、空間に裂け目ができ、四人の死神が中から出てきた。
「どうしました?ヘルフェン君」
「作戦はもう決まりましたが」
「作戦なのですが、うちの者から新たな案が出まして、それを考慮した新しい案を作成しましたので、耳を貸して頂きたいと思いまして」
「皆さんの行動にはそこまで影響はしませんが、第一軍団の動きが大きく変わることになりますので、相談したく」
「なるほど、聞かせて貰えますか?」
「はい、全軍がナシタに奇襲攻撃をした場合、天使を撲滅することは可能かもしれませんが、神王テアに逃げられてしまう可能性があります」
「ですので、作戦開始の前に第一軍団が最上級隠密魔法を使いナシタへ潜入し、神王テアの捜索及び撃破を目指したいと思います」
「全軍が一度に消えれば相手に悟られてしまうかもしれませんので、この作戦が良いかと」
「ふむ、良い作戦ですが第一軍団の負担が大きすぎますね」
「私も同行しましょうか?」
「いえ、ハデス様は天使との戦闘での重要な戦力、こちらは私と私の仲間で何とかしてみせます」
「それもそうですね、了解しました」
「では、作戦開始時に最初に突撃するのは私の第二軍団に変更しましょう」
「テアを撃破出来ればそれで良いですし、出来なければ第一軍団も戦闘に加わってください」
「はい、分かりました」
「では、作戦変更ということで、解散で良いですかね?」
「はい、僕からはもう何もありません」
「では、持ち場に戻り、作戦の準備を終わらせましょう」
「死神として、世界の秩序を取り戻すために」
「はい」「ああ」
全員がハデス様の言葉に応え、会議は解散した。
後日、ハデス様から第一軍団の作戦開始の合図が来た。
もうすぐ、神界でも歴史上滅多に無い天使と死神の戦争が始まる。
ヘルフェン宮殿には普通の人々の目につかないように結界が張られ、第一軍団が整列している。
「いよいよ、始まるんだね」
ハネストは緊張を隠せない声で言った。
だが、そこには力強さもあった。
「うん、失敗すれば世界が滅ぶ」
「もう!そんなこと言わないでよ!緊張するじゃん!」
「大丈夫だよ」
「勝てるさ、僕達なら」
「分かってるもん!」
「はは、じゃあ、行こう」
「うん」「ああ」「はい」
「第一軍、作戦開始!」
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
昨日の投稿を本日に振り替えてしまい、申し訳ありませんでした!
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