死神の統率者
神王テアとの全面戦争...
こちらの軍勢は死神とヘルフェンファミリーのみんな、あちらは天使、か。
この前対峙した時、天使からは自我を感じなかった。
まるで誰かに操られているかのような、ただの人形に見えた。
今の状態の天使は魂を破壊しない限り再生し続ける。
倒す方法として考えられるのは二つ。
一つは、魂に直接攻撃できる死神が全ての天使及び神王テアを掃討する。
そしてもう一つは、死神が魂を攻撃しつつ、みんなで天使の肉体を壊していくことにより天使側が溜め込んだ魂の力を使い切らせる。
そうすれば、肉体への致命的な攻撃で天使は死滅する。
まあ、倒し方が違うだけでどちらもやることに変わりはないんだよね。
とにかく、狩って、狩って、狩りまくる!
みんな大戦に向けて武器や魔法の練習をしてる。
本当は僕も混じりたいところだけど、生憎僕にはやることがある。
直近の死神集合会議とは別の、ハデス様や師匠と言った死神の侯爵位以上に値する者だけの会議があるのだ。
死神の位には低い順から、初級位、中級位、上級位、男爵位、子爵位、伯爵位、侯爵位、公爵位、神王位となっており、三大偉神は公爵位のトップ層だ。
まあ、層と言っても五人しか居らず、五大偉神と名称する事も最近増えている。
神王位は僕とハデス様の二人、公爵位五人、侯爵位七人、伯爵位十人、子爵位三十人、男爵位四十六人で貴族位は総勢百人となるようになっており、今回集められるのは重要任務を請け負っている三大偉神の二人を除いて十二人だ。
はぁ、公爵位や侯爵位にはいきなり昇進した僕をよく思わない人も居るからなぁ...
ハデス様がフォローしてくれるだろうけど、気が重い...
ハデス宮殿会議室。
「さぁ、全員集まりましたね」
「では早速始めましょう」
会議の進行は基本的にハデス様か師匠が行う。
絶対的な信頼を得ている二人が進行を行うことでより円滑に事が進むのだ。
「言うまでもなく、天使との大戦の話です」
「我々は神族、全ての生命の守護者何して公正公平であるべき存在です」
「神族同士の戦いなど、許されるはずがない」
「しかし、この状況でそんなことは言っていられません」
「天使は生命を生み出せても回収することは出来ません」
「我々は生命を回収出来ても生み出すことが出来ません」
「双方が互いに手を取り合わなければ、全世界が滅んでしまう」
「そんな繊細な均衡を崩そうとする神王テアに鉄槌を下し、再び協力出来るよう改心させるのがこの戦いの目的です」
「ヘルフェン君やシュッツ君はもう感じているでしょうが、神王テアの配下である天使はもはや生きていない」
「元同僚を殺してしまうのは心が痛むかもしれませんが、仕方の無いことです」
「必ず神王テアを討ち、元の世界を取り戻しましょう」
皆、何も言わずに頷いた。
「そのために、私からいくつか提案があります」
「一つ目は、公爵位以上の五人を団長とした軍団分けです」
「一軍団に一人公爵・神王級の者を置くことで、全体の生存率の向上を図ります」
最高戦力が分散する事による最高火力の低下はあるけど、耐久戦になりそうなこの戦いではその方がいいだろうな。
「二つ目は、先制攻撃です」
「敵地での戦いという弱みを持つことになりますが、戦いをこちらの調子に持っていきやすく、軍団がばらけずに戦えるので私は良策だと考えています」
先制攻撃か、タイミングが肝心になる難しい戦い方だけど、急に攻めてこられるよりはマシかもしれない。
「そして三つ目、第一軍団長をヘルフェン君に任せることです」
「まあつまり、この戦いの指揮はヘルフェン君に任せたいと思います」
え、
ん?
え、なんで。
僕をよく思わない貴族達の顔が少し歪んだ。
「ふむ、私は全てに賛成だな」
師匠が潔く言ったことで、反対派の貴族達は吐き出そうとした言葉を飲み込むような表情をした。
「ヘルフェン君はどう考えますか?」
「え、えーっと、二つ目までは賛成なのですが、三つ目は再考の余地ありかと」
「そうですかね、その案が一番自信があったのですがね」
「いや、僕に死神の指揮なんて...」
「ヘルフェン君、君はもう神王です」
「領地も持ち、国民を抱えています」
「自分に自信を持ちなさい」
「恐怖心を捨てろとは言いません」
「ですが、恐怖心に囚われていては大切なものを守れません」
「恐怖心を操りなさい」
恐怖心を、操る...
確かに、僕は何を怖がっているんだ。
悪魔を倒して、魔神に単騎で突っ込んで、襲撃してきた天使を追い払って、今まで散々命を危険に晒してきた。
今更味方の指揮を取ることの何が怖いんだ。
人の命を預かったなら、自分の命をかけて守ればいい。
自信を持て、僕は神王だ。
「分かり、ました」
「私が第一軍を引き受けます」
「はい、よろしくお願いしますね」
ハデス様はニコニコして、師匠は誇らしそうににやけている。
反対派の貴族達は唇を噛んで嫌そうな顔をしていたが、僕にはもう気にならなかった。
死神は、僕が引っ張る。
ヘルフェン宮殿大広間、僕の軍団に配属された死神が集まっていた。
「あなた達は、私が率いる第一軍団に配属されました」
「第一軍団は最前線で天使と戦闘を行います」
「戦闘開始まで、各々準備に最善を尽くして下さい」
いつでも出動出来るように、第一軍団全員が僕の宮殿に留まることになった。
「ヘルン、ちょっといい?」
事務室で大戦に関する情報の確認をしていると、ハネストが突然言った。
「天使にはどんな魔法が一番よく効くかな」
「うーん、そうだなぁ...」
「一撃で天使の肉体を破壊できるような高火力の魔法が良いかなぁ」
「魔力ぶつけるみたいな...」
「魔力...」
「あ、そういえば、ハネストとヘレナとネロ以外は僕が魔力を与えてるよね」
「うん、そうだね」
「じゃあ、その四人の攻撃は魂にも届くかもしれない!」
「あ!確かに!」
「え、というかネロには魔力をあげてないのになんで魔法が使えたんだ...」
「今度聞いとくか」
「とにかく、早くみんなを集めよう!」
「わかった!」
ここまで読んで下さり、ありがとうございました!
次話は、2026年1月25日に投稿します!
ご意見、ご感想、お待ちしております!
下の評価の星5、ブックマークなどして頂けると、作品制作の励みになります!




