亡者の声
ん...ここは...
周りには暗闇が広がり、もはや何も無かった。
そうか、私は死神さんに天界へ送られたのか。
それにしても、死神さんの最後の魔法は凄かったなー。
そうして記憶にふけって居た時、突然三匹の小鳥が現れ、私の周りを飛び回った。
一匹の小鳥が私に目配せしてからある方向を向き、可愛く泣いた。
その方向を見ると、その先から一気に光が広がり、私は暖かい光に包まれた。
そして、道を示した小鳥とは別の二匹が私の両腕を引っ張り、私を歩かせた。
私にはどの方向も同じに見えるが、何か違うのかもしれない。
小鳥たちの案内で少し歩くと、またもや急に新しい世界が広がった。
「これは...」
そこには宮殿の大広間のような空間が広がり、正面の大きな玉座には綺麗な顔立ちであるのに威厳のある男が座っていた。
その前に多くの人が並び、左右の扉に進路を分けられている。
所謂天国と地獄の選別と言った所だろう。
しばらく待っていると、私の番が来た。
私は生前大罪を起こした。
言うまでもない、私は地獄だ。
いや、地獄でも甘いかもしれないな。
「次は...あぁ、君か」
その若々しい男は少し面倒そうに膝に肘を付け頬杖をついた。
「ほら、早く右の扉に進みたまえ」
「分かった」
そう言い右を向くと、若干距離のある扉の上部に《天国》と書いてある。
私は驚き、振り向いた。
「これは...なぜ私が天国なのだ」
「ん?聞いてないのか?」
「神王ヘルフェン・カリタス様に頼まれたのだ」
「君を天国に案内するようにと」
「まあ、あれは頼むと言うより脅しと言うべきだと我は思うがな」
「ヘルフェン、そうか」
「すまない、地上界に用ができた」
「ん?何を言って」
男が言い切るのを待たずに、私は来た道を戻り始めた。
「無駄だ、一度来てしまえばもう戻ることは出来ない」
そのような言葉は、私に響くことなく通り過ぎて行った。
「デーモンブロー」
右手から放たれる斬撃が空間を切り裂く。
「おい!待て!そんなことが許されるわけ」
背後から男が叫んでいたが、私が足を止めることはなかった。
「必ず戻ってくる」
「この罪はヘルフェンにつけておいてくれ」
そうか、ここがバシレイア、ヘルフェンが統治する世界か。
ゲヘナと違い、資源が豊富で自然豊か、人間の住みやすそうな世界だな。
すると、前から人間の親子連れが歩いてきた。
声でもかけてみるか。
「そこのお二人、失礼だが、ヘルフェン・カリタスの居場所は分かるかな?」
すると、父親らしき男が答えた。
「街の中心部にある宮殿が、ヘルフェン様の基本的な拠点だよ」
娘と思われる少女が笑顔で話す。
「ヘルフェン様は凄んだよー!街中をキラキラにしたり、悪いやつから守ってくれたり」
「そうかそうか」
やはり、奴は良い奴だな。
「教えてくれてありがとう」
「礼にこれをあげよう」
私は少女の手に三つの飴を落とした。
「わ!ありがとうお姉ちゃん!」
奴の国の国民は暖かいな。
羨ましいものだ。
まあ、私の配下にも幾人か優しい奴も居たがな。
ヘルフェンの国の街はどんなものかと歩いていると、いつの間にか時間は過ぎた。
見るもの聞くもの全てが新鮮で、楽しい。
その時、急に立ちくらみを起こし、頭に手を当てた。
魔力がどんどん吸われている。
死後地上界で肉体を維持するのにとてつもない魔力を要しているのか。
まあ、仕方の無いことだ。
早く用事を終わらせるとしよう。
そうして私は、ヘルフェン宮殿へと向かった。
ヘルフェン宮殿らしき大きな建物の前へ来ると、そこは人で賑わっていた。
宮殿は程よく解放されている。
まあ、国民が入ってきたところで奴に危険も何もないだろうからな。
宮殿へ入ると、突如として強大な魔力がとてつもない速さで近づいてきた。
「魔神様、何故ここへ」
その声は、生前よく聞いていた、悪魔王達の声だった。
「おお、お前達か」
「安心しろ、私はもう死んでいる」
「ヘルフェンに借りがあるもんでな」
「それを返しに来ただけだ」
「よければ、ヘルフェンを呼んでくれないか」
「分かりました」
その声は、少し戸惑っているようだった。
「何もしない、話したいことがあるんだ」
間もなくして、見覚えのある、元は宿敵だった少年が現れた。
「久しぶりですね、エル」
「久しいな、ヘルフェン」
「早速で悪いが、時間が無い」
「簡潔に話そう」
私は、悪魔と死神、そして天使の由来を教えた。
「これは魔神に受け継がれていた情報だ」
「初めて知ることも多いはずだ」
「なるほど...」
ヘルフェンは深く考え込むように顎に手を当てた。
「では、用も終わった、私は帰る」
「天界の神も待っている事だしな」
「あ、彼を振り払って来たんですね」
「ああ、罪はヘルフェンにつけておいた」
「何やってるんですか...」
「ではな」
「はい、貴重な情報、ありがとうございました」
「いいんだ、借りを返しただけだからな」
「お前たちも、私のことは忘れてこの世界を楽しむんだぞ」
「魔神様...」
私のことを忘れて...
「いや、やはりちょっと位は覚えておいてくれ」
私は基本感情を大きく動かさない。
だが、何故か瞳から寂しさが零れ落ちた。
もう、魔力が尽きる。
肉体が滅んでゆく感覚を覚え始めた。
肉体が消えると同時に、私は魂のみの状態でこの世界に残っていた。
誰にも認知されることは無いが、面白いものだ。
天界の神には、もう少し待ってもらおう。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
次話は2026年1月22日に投稿します!
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