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天使

『早く帰ってきて!みんなが死んじゃう!』

意識会話でフィオナから聞かされたその言葉は、僕の足を無理やり動かした。

簡易的な家の自室を飛び出し、ハネストの部屋に急ぐ。

「ハネスト!宮殿で何かあったみたいで、みんなが危ない!」

「僕は今すぐ帰るから、ここで待っててくれ!」

何も考えずに導き出した答えは、僕の無意識の空間を表していた。

「ヘルンは優しいから、またすぐそうやって自分だけを危険に晒そうとする」

「私は逃げない」

「死ぬのなんて怖くない」

「どうせ一度死んでいるの」

「仲間を失って苦痛に耐えながら生きるより、百倍マシだよ」

「僕はただ、」

仲間に死んで欲しくない。

自分だけが死んだ方が気が楽だ。

でも、それは僕だけじゃない。

ハネストも、フィリアも、師匠だってそうに違いない。

互いに存在を守りあっている。

なら、危険だって共に味わうのが、互いの幸せに繋がる。

「ごめん、ビビっちゃった」

「ハネストまで失ったらどうしようって」

「でも、もう迷わない」

「行くよ、ハネスト」

「二人で、みんなを救うんだ」

「はい!ヘルン様!」

転移魔法の眩い光は、僕らに勇気と覚悟を与えた。

励ますように僕の手を握ったハネストの手はその瞬間、少しだけ震えたように感じた。


「これは...」

宮殿に転移したはず、つまり、ここは、宮殿...

そこには白色の瓦礫が散らばり、もはや宮殿の原型すら留めていなかった。

所々にうちの宮殿を思わせる家具や模様が見つかり、ひしひしと状況を理解させようとしてくる。

犯人は、もう分かっていた。

地上に陰が差すほどの数の天使が、宮殿の残骸の上を悠々と舞っている。

皆、女神のような優しい顔をして、黒い翼を輝かせる。

「あれは、何?...」

ハネストが問う。

「天使、のはず」

「分からない、様々な特徴が天使と酷似しているけど、翼の色だけが違う」

「天使の翼は死神と同様白いはずだ」

「じゃあ、あれは一体...」

「種族なんて関係ない、奴らが僕らの敵であることに違いはないんだから」

視界が狭まっていく。

頭に血が上り、思考が難しい。

体内の魔力が今にも暴れ出しそうで、それを抑えるために肉体は発熱した。

その時、何かが、僕の頬に触れた。

知らず知らずのうちに閉じていた目を開くと、僕ははネストの手中に居た。

僕の顔を手で包みながら、ハネストは言った。

「落ち着いて、ヘルン」

「気持ちは凄くわかる、でも今は冷静になるべき時だよ」

「安心して、私達の仲間はそう簡単に死んだりしない」

「それに、うちのヘルンが絶対に死なせない」

「でしょ?」

「だから、今は目の前の敵にどう対処するか、考えよう」

ハネストに諭され、精神は大分落ち着いた。

「そうだね、今は奴らをどう倒すか冷静に考えるべきだ」

「そもそも、天使の戦闘力は普通の人間とは比べ物にならないものの、死神には遠く及ばない」

「ハネストでも比較的楽に倒せるはず」

「なのに、フィリア達が居てここまで負けるのはおかしい」

「なにかタネがあるに違いない」

「それを暴かないと、奴らを倒すことは出来ても、首謀者を倒すことは出来ないと思う」

「まあとりあえず、自分の力量を勘違いした奴らに、神王の鉄槌を下す」

「デスサイズ」

天使の方に向き直す。

デスサイズに魔力を流していくと、空を漂っていた天使達がこちらに気づき、一斉に向かって来た。

「神王に礼儀も無く、傲慢に戦いを挑むとは」

「地獄に行って再び生まれ直すと良い」

デスサイズの先を向ける。

「メネシス」

一瞬の間に空間がえぐれ、天使は跡形もなく消え去った。

周りの視界が良くなったことで、自分の宮殿の残骸がより鮮明に目に飛び込んだ。

「終わったの?」

「分からない、でも、とりあえずみんなを探そう」

ー魔力探知ー

瓦礫の奥の方に小さいけど確かに魔力を感じる。

「あそこだ!」

魔力を感じる場所を指差し、走り出した。

瓦礫をかき分けると、ヤブランが気を失いながらみんなを覆っていた。

腕を立て、瓦礫でみんなが怪我をしないように守っている。

みんな、傷だらけで気を失っているが、魂の魔力は感じる。

死んでは無いようだ。

「みんな、生きてる」

「良かった...」

「アナスタシス」

みんなの傷がどんどん消えていく。

ヤブランが最初に目を覚まし、みんなも少しずつ起き始めた。

「ヘルン、来てくれたのか」

まだ完全に回復出来てないヤブランが、咳をしながら言った。

「うん、フィオナが教えてくれたから」

フィオナは少し嬉しそうな顔をした。

「そうか、よくやったな、フィオナ」

「君もだよ、ヤブラン」

「よくみんなを守ってくれた」

「軍団長を君にして本当に良かったよ」

「いや、俺は何も出来なかった」

「それこそ、みんなを瓦礫から守ることくらいしかな」

「やつら、何者かは知らんが、魔法とも思えない、魔力の塊みたいなものをぶつけてきた」

「おかげで、抵抗もできず全滅だ」

「なるほど...」

やっぱり、何かタネがあったのか。

「全く、面目ない」

フィリアが頭に手を当てながら言った。

「仕方ない、天使との戦闘経験なんてほとんど無かっただろうし」

「この問題は、僕が対処する」

「これまでの異常な襲撃も恐らく天使によるものだと思う」

「戦闘力の低い天使を対象から除外してた」

「みんな、本当にごめん」

「後は任せて欲しい」

「もう、天使に誰も傷つけさせない」

「ああ、手伝いたいところだが、その方がいいだろう」

「俺たちの仇を取ってきてくれ」

「任せて、僕は神王だ」

「はは、そうだったな、俺たちの仲間は神王だったな」

「ヘルン、いつもは呑気にしてるから、忘れちゃうわよね」

「そうだな」

なんか、みんなに笑われてる...

「まあ、だからみんなついて行くんだけどな」

「お前の幸せを守ってやりたくなる」

「お前の方が全然強いのにな」

ヤブランが笑いながら言った。

みんなも頷いている。

「僕の幸せは、みんながそばで笑ってくれてる事だよ」

「だから、死なないで」

「分かった分かった」

「とりあえず休ませてくれ」

「お前の魔法で体力も回復したが、やはり疲れた」

「そうだね、みんな、ゆっくり休んで」

「でも、どこで休もうかしら」

「もう忘れたの?僕は神王だよ」

宮殿に手をかざす。

「アポカタスタシス」

瓦礫が宙を舞い、割れ目同士が次々に繋がっていく。

数秒後、宮殿は完全に元に戻った。

「はぁ、お前と居るともはや驚きという感情を忘れそうになる」

「ほら、早く休んで」

「あぁ、そうさせてもらう」

みんなが宮殿に入ったのを確認すると、僕は正面を向いて話かけた。

「ピスティー、居るかい?」

「はい、なんでしょうか」

「神王テアを調べてくれ」

「了解しました」

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

次話は、2026年1月11日に投稿します!

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