師弟対決
「さて!では最後に、魔導国カリタス国王、ヘルフェン・カリタス対、その師匠、シュッツカリタスによる、パフォーマンス試合です!」
「お二人共、ご入場ください!!!」
なんでこうなったんだ...
フィリアとカルディア選手による圧巻の打撃戦を終えて、式に幕を下ろそうと思っていたのに、なぜこうなった...
師匠の方を見ると、師匠は既に消えていた。
そして、会場中に歓声が広がる。
もう、師匠は試合場の定位置に立っていた。
この潔さを見るに、師匠も共犯だな。
もう、全く、仕方ないなぁ。
渋々試合場に向かって歩いていく。
足が重い。
師匠と戦うなんて、勝っても負けても良い事が無い。
はぁ、気乗りしないなぁ。
そうこう考えているうちに、試合場に出た。
会場は再び盛り上がり、僕も笑顔で手を振りざるを得なかった。
「さぁ、私の可愛い弟子よ」
「私に力を見せてみるといい!」
「言われなくても、全力で行きますよ」
「デスサイズ」「デスサイズ」
双方が種族武器を出す、つまり、完全な本気モード。
師匠は三大偉神の中でも戦闘に長け、死神の統帥を任されている。
師匠が神王になっていないのは、恐らくアイシーからの恩を感じていたからだろう。
師匠は、問題を起こした悪魔以外基本狩らないから、条件を達成していないのかもしれない。
実力は神王相当かそれ以上。
師匠だから手を抜くとかそんなぬるい戦いじゃない。
これまで最強という称号をしたいがままにしてきた死神との戦いだ。
気を抜けなウグ!
その時、僕は試合場の壁まで蹴り飛ばされていた。
「もたもたと何を考えている」
「私はそんな戦い方を教えた記憶はない」
「全力で、死ぬ気で来い」
「どうせ死なん」
久々に感じた、今僕は下に見られている。
最近もてはやされて、調子に乗っていた。
僕は、あくまでシュッツ・カリタスの弟子、ただの拾われた子供だ。
だから、だからこそ。
絶対に師匠に勝ってやる!
「師匠、構えてください」
「デスボルト」
それを見た師匠は、ニヤッと笑った。
僕が本気になったのが分かったのだろう。
そこからは、ほとんど意識がなかった。
生存本能に身を委ね、全力で攻撃をする。
次々に最上級魔法が放たれ、肉体のすれすれを通り過ぎていく。
基本的に傷つかない死神の肉体でも、デスサイズなんかで放たれた魔法なら、淡々と僕の体を切り裂くだろう。
もはや思考がおぼつかない。
脊髄反射で体が動いていると言っても過言ではない。
ふと見た師匠は、笑いながらも冷静だった。
冷静に、僕を殺しに来ている。
意識が飛びかける。
その時見えたのは、人間時代に嫌という程見た、病室の天井。
白くて、少し汚れていて、暗くて、寂しくて、冷たい。
そんなのは、もう嫌だ。
僕は師匠に勝って、僕が必要だと認めさせるんだ!
「本気で行きます、耐えてくださいよ、師匠」
「来い、ヘルン」
息を思いっきり吸う。
感情を乗せた魔法は、普段よりも良い結果をもたらす。
少なくとも、僕はそう信じている。
「メネシス」
「メネシス」
魔力の爆発。
その凄まじい衝撃波が師匠を覆った。
会場に張った魔法障壁もブルブルと震え、ヘルンファミリーのみんなが必死に障壁を維持しようと魔力を流している。
師匠も強固な魔法障壁を張り、メネシスに耐えている。
メネシスの衝撃波が収まると、師匠は魔法障壁を解いた。
笑っている。
「良い魔法だ、私には出来ないかもしれない」
「だが、私を倒せるほどの魔法ではないな」
「恐らくこれが本気ではないはずだ」
「だが、これ以上をしてしまえばこの世界が滅んでしまう」
「今日はこの辺しておこう」
「はい...」
これでも、師匠は倒せないのか...
「しかし、強くなったな、ヘルン」
その言葉は、僕の涙腺を刺激した。
試合場から出て、控え室に入ると、我慢していた涙が溢れた。
僕の目から流れる涙は、止まることを知らないようだった。
負けたから泣いているのではない。
師匠に認めてもらえた、それが最高に嬉しかった。
すると、師匠が控え室に入ってきた。
「大丈夫か?」
「選手同士が控え室で会うことは禁止ですよ」
僕は泣きながら言った。
「お前、負けたら見捨てられるとでも考えていただろう」
「これを言うのは最後だ、よく覚えておけ」
「お前は私の弟子であり、息子であり、愛する家族だ」
「たとえお前が魔力を失い、戦闘力が無くなったとしても、それは決して変わらない」
「分かったら、今夜の私とのデートの準備でもしておけ」
「そんな約束してないですよ」
「なんだ?嫌なのか?」
「いえ、行きましょう」
涙の親子劇は、そうして幕を閉じようとした。
しかしその瞬間、会場が揺れだした。
もう試合は終わったはず。
つまり、何かが起きている。
はぁ、こんなに揺らされたら、この会場壊れちゃうよぉ...
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
次話は、1月1日付近に投稿します!
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