武闘大会、準決勝!
フィリア対アイシー、火力最強の二人が一つの会場で渡り合う。
会場を揺らすようなエネルギーの爆発に、皆がヘルフェンファミリーの強力さを思い知った。
アイシーは笑いながら地面に倒れていた。
最後まで立っていたフィリアも見た目から疲れが分かる。
アイシーの強さの再確認が必要だな。
準々決勝から準決勝までには二日間開けられ、三日後が準決勝だ。
ヘルフェン宮殿では、試合を終えて帰ってきたみんなが、ぐったりとしながら話していた。
「あー!なんで負けちゃうかなー」
少し酒気を帯びたアイシーが、珍しく悔しそうにしている。
普段クールな女性というイメージだけど、子供っぽいところもあるんだな。
「あれは、どちらが勝ってもおかしくなかった」
「それに、アイシーはあの魔法は初めてだろ、それで互角にやり合ったんだ」
「私達の間に大した差はないぞ」
フィリアが冷静に分析する。
「それでも負けは負けよ!」
「ヘルンといっちょにあそびにぃいきてゃかったのにぃ」
最後らへんはほぼ聞き取れない言葉を発して、アイシーはソファに倒れ込んだ。
反応する間もなく、スースーと寝息が聞こえ、みんな音を出さないように笑った。
アイシー、お酒弱いんだ...
そういえばいつも飲まないもんな。
「いやそれにしても、元とはいえ悪魔王だった俺に勝つとはな、ハネスト、お前凄いな」
ヤブランは、悔しさと言うよりはハネストへの感心という感じだった。
さすが戦士!
「ふふ、ありがとう」
「でも、あれはほぼ運というかなんというか」
「ヤブランに勝てるなんて全く思ってなかったから自分でもびっくりしてるよ」
「あれは実力勝負と言って良いだろう」
「気を使う必要は無い」
「ハネストは人間の中で最強だ」
「ふふ、やったー!」
「みんな、本当にお疲れ様」
「フィリアとハネストはゆっくり休んで、準決勝に備えてね」
「はーい」「あぁ、わかった」
「あとヘレナ、本当にお疲れ様」
「ヘレナのテキパキとした進行と解説が武闘大会準々決勝の成功に繋がったと言える」
「ここからもよろしく頼むよ」
「うん!任せて!疲れたけど、楽しかった!」
「良かった良かった、フィオナも迅速な医療活動、凄かったよ」
「ふふ、やったー!」
「偉いよー」
フィオナの頭を撫でると、フィオナはキャッキャと喜んだ。
可愛い...
「私も話に入って良いのかな?」
「私も入りたいものだね」
ドアの方から声が聞こえ目線を向けると、師匠とハデス様が立っていた。
「師匠!お疲れ様です!」
「皆、ヘルンの仲間なだけあってさすがの実力だな」
「いえいえそんな、シュッツ様に褒めて貰えるなんて...ふふ」
ハネストは恥ずかしがりながらも喜んでいた。
ハネスト、師匠のこと結構好きだよな。
「本当に!私は戦闘に自信が無いので、憧れてしまいますよ!」
ハデス様のテンションが明らかに上がっている。
まあ、あの試合を見れば無理もないけど。
「さぁ、もう時間も遅いし、みんな疲れてるだろうから今日は早く寝よう」
「ヘ・ル・ン」
「お前は死神だから寝る必要ないよな〜」
師匠とハデス様がにやにやしながらこちらを見ている。
これは、逃げ切れそうにないな...
その日は一睡もすることなく三人で朝まで飲み明かした。
はぁ...まあ楽しかったけどね...
準々決勝から3日後...
「さぁ、やって参りました!武闘大会準決勝!」
「厳正なる抽選の結果、初戦は、フィリア選手対アタラクシア選手です!」
「準々決勝で圧倒的な火力を見せたフィリア選手と、俊敏な動きで相手を惑わす、魔法の極致を見せたアタラクシア選手による、魔法戦最高峰の試合となるでしょう!」
「それでは入場してください!」
フィリアは相変わらず強者の余裕が垣間見える堂々とした態度だった。
一方アタラクシア選手はかなり緊張しているようで、準々決勝の時のような冷静さは見受けられなかった。
まあそりゃそうだよね、元悪魔王が相手で、3日前にあんな試合を見せられたら、常人じゃまず試合を放棄する。
試合場に来ただけでも賞賛に値するだろう。
「それでは、試合、始め!」
「アタラクシア殿、防御魔法を張れ」
試合開始早々、フィリアは下を向いたまま言った。
その言葉自体にも重みが感じられ、アタラクシア選手は従わずに居られなかった。
アタラクシア選手が急いで防御魔法を張ると、フィリアは一瞬そちらを見て、再び口を開いた。
「違う、前に張るんじゃない」
「上だ」
「え?」
アタラクシア選手から動揺の声が漏れる。
しかし、フィリアがその動揺に応えることはなかった。
アタラクシア選手が防御魔法を張ったのを確認すると、フィリアは右手を突き出し、一言唱えた。
「シャドーストライク」
詠唱とほぼ同時にアタラクシア選手の頭上に巨大な腕が現れた。
闇属性魔力で形成された腕は、禍々しい空気を醸し出し、会場中が静寂に包まれた。
これは、フィリアが僕に最初に見せてくれた魔法か。
懐かしいな。
フィリアが手の平を下に向けると、その魔力で出来た腕が高速でアタラクシア選手に向かって落ちた。
土埃で周囲が覆われ、それが消えると失神したアタラクシア選手が地面に倒れていた。
お労しや...
サスティナ王国の国民と見られる人達が心配そうな声を上げる。
スピリトー王も悲しそうだ。
「しょ、勝者、フィリア選手!!」
「非常に早い試合でした!」
「圧倒的な火力に負けてしまったようですが、命があるだけでも素晴らしい防御魔法だったことが分かります!」
フィオナ率いる医療班がアタラクシア選手を運んで行く。
ゆっくり休んでください...
「いや、こんなの反則だろ...」
ヤブランが半笑いで言う。
「たしかに...強すぎる...」
「さ、さて!衝撃の一戦目でしたが、二戦目に参ります!」
「ハネスト選手対カルディア選手です!」
ハネストが手を振りながら入場してくる。
イレーネの熱狂的なファンが応援を叫んでいて、ハネストも楽しそうだ。
一方カルディア選手は、鍛えられた肉体に見合う落ち着いた態度で入場してきた。
この試合、どうなるだろうか。
ガイア選手が異質過ぎて、カルディア選手の実力がまだあまり分かっていない。
ハネスト、怪我しないといいけど。
「それでは、準決勝最終試合!始め!」
「じゃあ、最初から本気で行かせてもらうよ!」
「アイスナイト!」
「アイスホーク!」
召喚魔法攻めか。
三体の氷騎士と十羽の氷鳥、それに対して肉体だけの男一人...
この絶望的な状況に彼はどう対処するのだろうか。
考える暇もなく、氷騎士が男に向かって走り始め、氷鳥が男の上を旋回した。
「行けー!!」
ハネストのやや雑に見える指示とは裏腹に、氷騎士と氷鳥は確実にカルディア選手を覆うように突撃した。
その時カルディア選手が少し踏み込んだかと思うと、一飛びで氷騎士の頭上まで飛び跳ね、思いっきり氷騎士の頭を蹴り飛ばした。
氷騎士の巨大な頭だけが地面に転がり、その騎士は膝をついて倒れた後に、冷気となって消えた。
会場に驚きが響き渡った。
もはやフィジカルという魔法...
固有魔法と大差ないではないか...
賞賛する間もなく次々とハネストの出した氷兵が倒され、ハネストも補充に徹したが、ついに最後のアイスホークが倒された。
ハネストの魔力も後一発魔法を打てる程度だろう。
「アイスブリザード!!!」
ハネストからカルディア選手までの空間に、鋭い氷が吹き荒れる。
カルディア選手はゆっくりとハネストの元へ歩いて行く。
全てを貫けそうな鋭い氷も、カルディア選手の強靭な肉体の前には砕け散ることしか出来なかった。
カルディア選手がハネストの目の前まで来た時、ハネストの魔力が切れ、その場に倒れた。
意識が無くなったら負け、それがこの試合のルールだ。
ハネストは、カルディア選手により、準決勝敗退となった。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
次話は、2025年12月21日に投稿します!
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