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悪魔戦【終】〜死神の覚醒〜

周りは悪魔の領域に囲まれ、現在進行形で悪魔が攻撃魔法の詠唱をしている。

正直もう諦めたいけど、僕が死ねば、師匠の情報が盗まれる。

僕は、まだ、死ねない!

今残っている全ての魔力を注いで、一発のヘルフレイムを放つ。それで終わらせる!

両手をかざし、ヘルフレイムを詠唱しようとした、その時、目の前が、急に明るくなった。

そこには、今まで見えなかった、周りにある無限の魔力が漂っていた。

これが、自然の魔力...これだけの魔力、使えるか使えないかで格が変わるわけだ。

時間の流れが遅く感じる。

─魔力吸収

一瞬にして、膨大な魔力が体に流れてきた。

力がみなぎる。

いける!

来るんだ、僕の種族武器!

「デスサイズ」

そう唱えると、僕の手元には、黒い魔力を漂わせる、鋭く冷たい大鎌が現れた。

これが、僕の種族武器、死神の大鎌...

それを持つと、体中に衝撃が走り、恐怖心や雑念が全て消えた。

強ばっていた体の力が抜け、険しくなっていた顔は、いつの間にか微笑んでいた。

なんだろう、今はとても、気持ちがいい。

何故か、大鎌の使い方は分かっていた。

大鎌で一振、空を切る。領域に裂け目が出来る。

それはまるで、師匠と初めて出会った時のように。

領域は裂け目から崩れだし、悪魔の攻撃魔法によりこちらに向かって伸びていた無数の魔力の槍も分解された。

そして、その辺り一帯には、漆黒の領域が広がった。

「お前、種族武器を使えたのか」

「・・・」

悪魔の顔には、明らかな焦りが見えた。

死神は、特に種族武器を使うのが難しいと言われている。逆に、それを使う死神に勝てる者は少ない。

この悪魔も、例外ではない。

「と、とりあえず、今回は許してやろう」

「いずれ殺すとあいつに伝えておけ」

「では、さらばだ」

何逃げようとしているんだ。こいつ。

悪魔の速度が遅い。いや、僕が速いのか。

悪魔の首に、そっと大鎌を当てる。

「いつの間に!」

「なに、逃げようとしてるの?」

悪魔は反射的にその場から逃げる。それに合わせて、僕はまた、悪魔の後ろにつく。それはいたちごっこのように、何度も、何度も。

「な!どういうことだ、悪魔にも見えない速度で移動しているとでも言うのか!」

「そうだったらどうする?ふふ」

「何がおかしい、いい加減にしろ!」

「わかったよ、なら、もう終わらせよう」

「なに?どういうこ」

悪魔の頭に優しく触れ、静かに耳元で微笑み囁く。

「バァン」

悪魔は、断末魔を叫ぶ間もなく、黒い魔力と共に爆発した。

大鎌を消すと、漆黒の領域も、黒い魔力も、先程までの記憶さえ消え、美しい草原には、僕と半壊の家以外、何も見当たらなかった。

その景色を見ながら、気づいた時には僕は倒れていた。

肉体的ダメージを受けにくい死神でも、流石にもうきつかった。

なんだか、悪い夢を見ていた気がする。

「あれ、悪魔はどこに行ったんだ」

「師匠の情報は守れたのかな」

「僕は、師匠の役に、立てたのかな」

その時、目の前に見た事のある靴が見えた。

ヒールの高い、真っ黒のブーツ。

師匠が今朝履いていた靴だ。

「よく頑張ったな、ヘルン」

「師匠、疲れました」

「あぁ、早く家に帰ろう」

「言っただろ?お前が何度倒れても、私が担いで帰ってやる」

「そうでしたね、だから僕は、頑張れました」

「本当に、よくやった」

師匠はそう言いながら、肩を担いでくれた。

初めてちゃんと師匠に触れたのは、初めてだった。

師匠は、死神のくせに、とても暖かかった。

本当に、師匠はずるいな...


翌朝、僕は昼間まで寝ていたようだ。ベッドの上に起き上がり、ボヤつく視界の中周りを見渡すと、ベッドの中に、師匠が居た。

え...どいうこと...

「お、起きたか」

「昨日はお疲れ様だったな」

「いや、それより、なんで師匠がベッドに居るんですか!」

「いや〜ぶっ倒れたお前をベッドまで運んだら疲れてしまってな」

「そういえば、お前、まだ幼かったし、一緒に寝てやってもいいかな〜なんて」

「死神はそんなことで疲れないでしょ!」

「あれ?バレた?ちゃんと勉強してるじゃないか〜」

「まあでも、疲れてたって言うのは本当だ」

「神王様の命令で、魔力を大量に使ってしまったからな」

「そうなんですか〜?ならいいですけど...」

「はは、悪かった悪かった」

「ところでだが」

「なんです?」

「実はな、お前が悪魔と戦ってるところ、見てたんだ」

「・・・え」

「なんで、助けてくれなかったんですか?」

「いや、何かあれば助けようとは思ってたんだが、戦いの中で何か気づくこともあるだろうと思ってだな」

「いや僕、普通に死にかけてたんですけど」

「魔力吸収が出来るようになった後、何故か気づいた時には悪魔は消えていましたが、それが無ければ普通に死んでましたよ」

「あ、そういえば、その時、なにが起きてたんですか?」

「あぁ、それについて話したかったんだ」

「あの時お前は、魔力吸収を習得した後、種族武器を召喚したんだ」

「あ、なんかした覚えあります」

「そして、大鎌に思考を支配された」

「え?」

「お前は元人間だからな、大鎌の莫大な魔力についていけなかったのだろう」

「なに、慣れればそれもいずれなくなる」

「僕、支配されてたんですね」

「僕はまだまだってことですね」

「確かにそうかもしれんが、悪魔を倒すのは、一人前の死神でも手を焼くことだ」

「それに、お前が倒したのは、悪魔王の側近だ」

「戦闘員では無いものの、上級悪魔程度の実力がある」

そんなのに、僕が、勝った?

「信じられないというような顔だな」

「当たり前です、僕がそんなのを倒しただなんて」

「だが、それが事実だ」

「慢心はしてはいけないが、自信は持て」

「お前は、もう立派な死神だ」

「師匠...」

「褒めとけば、許すとでも思ってますか?僕本当に死にかけたんですけど!」

「だから、それは悪かったって」

「お前なら行けるかなってさ」

「次は絶対助けてくださいよ?」

「あ〜、分かったよぉ」

立派な死神、か。どんな形であれ、人に認められるのは嬉しいな。これからも頑張ろう!

「あ、後、昨晩、神王様から言伝が来てな」

「3日後に、ハデス宮殿に来いとのことだ」

「ハデス宮殿?」

「あれ、説明していなかったか?」

「たぶん...」

「神王様は、二人いるんだ」

「そうなんですか!?」

「一人は、死神の王、ハデス様」

「もう一人は、天使の王、テア様だ」

この人、本当に忘れっぽいな。

「死神が仕えているのは、基本的にハデス様だな」

「え、ていうことは、僕は3日後に新王様の宮殿に行くんですか!?」

「そういう事だ」

えぇぇぇぇえ

次話は、8月19日12時に投稿します!

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