(番外)最強の死神に命を拾われたけど、最近あまり構ってくれないので無理やりデートに行こうと思います!
私はハネスト・アレキサンダー、イレーネ出身の元騎士団長、今は守護神親衛隊(一名)として働いて?いる。
今、私は重大な問題を抱えている。
武闘大会の応募者が足りない?
秘書としてやらなければならない事が多すぎる?
いや、そんなことではない!
最近ヘルンと遊んでない!
国の運営で色々しなきゃいけないのは分かるけど!
前はアイシーとお祭り回ってたし...
フィリアは見識が広いからヘルンとよく話してるし...
このままじゃヘルンが取られちゃう!!
何とかしなければ...でも、私に出来ることも少ないし...
うーん...
そうだ!ヘルンを無理やり引っ張って、デートに行こう!
どこに行こうかな〜、その時決めればいっか!
私はとりあえず、秘書室からヘルンの事務室まで駆け抜けた。
ヘレナはキョトンとした顔で見ていたけど、もしこの作戦がバレたらヘレナも来たがってしまう!
この作戦は誰にもバレちゃダメ!
スパイハネスト、いざ行かん!
ヘルンの事務室に着くと、私はすぐにドアを叩いた。
「どうぞ〜」
ヘルンがいつも通り返事すると、私は今までにない速さでヘルンの机に走った。
そのせいで膝を机にぶつけたけど、今の私にはそんなことは気にならない。
一刻も早く、デートに行きたい!
「ヘルン!一緒にどこか行こう!」
「え、いやでも武闘大会の準備があ」
「いいから!行くよ!」
ヘルンの言葉を遮って、私はヘルンの手を引いた。
ヘルンは驚きながらも、笑ってくれた。
私は、そういう優しいヘルンが、大好きだ。
「でも、どこかってどこに行くのー?」
後ろを走るヘルンは、まだ動揺が抜けきらない声で聞いた。
「どこでもいいよ〜!」
私達はしばらく走り、宮殿を出たところで立ち止まった。
「んー、じゃあ、イレーネに帰ってみようか」
ヘルンは閃いたと言わんばかりに人差し指を立てて言った。
多分、私をイレーネに連れて行ってあげたいのだと思う。
どこまでも優しいヘルンなら多分そうだ。
「いいね!行こ行こ!」
みんなにバレる可能性を考慮して、私はヘルンを急かした。
久しぶりに味わう転移魔法は、やっぱり少し不思議な感覚だった。
少し怖くて目を瞑ってしまう。
目を開けると、眼前に懐かしいイレーネの街が広がっていた。
「おぉ!ハネストちゃんじゃねぇか!みんな!ハネストちゃんが帰ってきたぞ!」
焼き鳥屋さんのおじちゃんが私に気づき、みんなを呼んでくれた。
すると、街の色んなところから沢山の人が集まって、私を歓迎してくれた。
「やだぁハネストちゃん、見ない間に大人っぽくなって、体は大丈夫かい?」
「テラおばさん!久しぶり!私は元気だよ!」
一回死んじゃったけど...
「そう、ならよかった!」
「隣の青年は恋人か?」
野菜屋のおじちゃんが笑いながらからかってきた。
「秘密〜」
そうだと言ってはいけないのは分かっていたけど、否定もしたくなかった。
隣を見ると、ヘルンはこの状況に驚いているのかぽかんとしている。
「ヘルン、大丈夫?」
「うん、ハネストが人気なのは知ってたけど、ここまでとはぁ」
「ふふ〜私は奇跡の天才騎士だからねぇ」
「そうだね」
ヘルンは微笑んだ。
この優しい笑顔も好きだ。
「イレーネに来たはいいけど、ハネストは何がしたい?」
「うーん、そうだ、“パトロール”しよ」
その言葉の意味が伝わったのか、ヘルンはまた微笑んだ。
それから一日中、私達はイレーネのパトロールを楽しんだ。
多分、少しくらい平和にもなったと思う。
ヘルンが何人かの引ったくりの輩を締め上げてたから。
怒ってるヘルンもかっこよかったなぁ...
気づけば空は暗闇を迎え始め、街のみんなも気分を入れ替え始めた。
ヘルンと一緒に街の奥にある高台から乗り出して街を眺めると、口が勝手に動き始めた。
「ヘルン、今日は無理やり連れてきてごめんね」
「いいよ、最近働き詰めだったしね」
「私ね、みんなに嫉妬しちゃったんだ」
「みんな色んな能力があって、ヘルンから必要とされてる」
「でも、私は所詮人間だから、出来ることにも限界がある」
「それは違うよ、ハネスト」
ヘルンはこちらに向き直して、話し始めた。
「僕は、家族に仕事を求めてない」
「しようと思えば、僕ば全員分の仕事を出来る」
「もちろん、多少時間がかかるだろうけどね」
「確かに、家族は助け合うものだ」
「でも、僕は仕事を助けられたいんじゃない」
「僕は、ハネスト達が傍に居てくれるだけで、心が助かってる」
「それに、ハネストにしか任せられない仕事も沢山あるしね」
「今はそんなことを言っているけど、もう少し経ったら、きっと僕に仕事を減らしてくれと言いに来るよ」
ヘルンは笑いながら言う。
軽く冗談を入れるヘルンの話し方は、優しさから来るものに違いない。
「ヘルン、ありがとう」
「ふふ、どういたしまして」
「ヘルン、」
「ん?どうしたの?」
「私は、ヘルンが大好きだよ」
それは、何の偽りも無い、本心だった。
「あぁ、僕もハネストが大好きだよ」
照れもせずに言うヘルンに、私の頬は少し熱くなった。
多分、これは家族として大好きという意味なんだろう。
でも、今はそれでいい。
いつかちゃんと、私を人生を共にする人として見てもらうんだから!
「じゃあ、そろそろ帰ろうか」
ヘルンにそう促されて、私達は宮殿に帰った。
宮殿に入ると、みんなが私達を待ち構えていた。
「随分と遅かったじゃないか〜二人とも〜」
フィリアの不穏な目つきが、私とヘルンに向けられる。
ヘルンはめちゃくちゃ焦っているのか、オドオドしていた。
「ふふ〜今日はヘルンを独り占めしちゃった〜」
「ほお、覚悟は出来ているのだろうな、武闘大会が楽しみだ」
いや、怖ぁ〜...
みんな殺意高そうな顔してるぅ...
「う、受けて立つ!」
ヘルンは動揺しすぎたのか、魂が抜けたように天を仰いでいた。
なんか、ごめん。
そうして、私のヘルン独り占め作戦は、無事?終了したのだった。
「またやっちゃおっかな〜、ふふ」
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
次話は、2025年12月11日に投稿します!
ご意見、ご感想、お待ちしております!
下の評価の星5、ブックマークもよろしくお願いします!
(作者がただただ喜びます)




